映画『翔んで埼玉』の監督、テレビを見ないで入ったフジテレビを退社していた「感謝しかないです」
映画『翔んで埼玉Ⅱ(仮題)』(年内公開予定)を手掛けている映画監督の武内英樹氏(56)が、このほど俳優の森田健作がパーソナリティーを務めるラジオ2番組の収録に参加した。FM NACK5『森田健作 青春もぎたて、朝一番!』(5日、12日午前6時30分)とニッポン放送『森田健作 青春の勲章はくじけない心』(6日午後6時20分)で、前千葉県知事の森田と初対面した。(ENCOUNT編集部ディレクター 柳田通斉)
GACKT体調不良で制作延期の続編も撮了「代役は考えなかった」
映画『翔んで埼玉Ⅱ(仮題)』(年内公開予定)を手掛けている映画監督の武内英樹氏(56)が、このほど俳優の森田健作がパーソナリティーを務めるラジオ2番組の収録に参加した。FM NACK5『森田健作 青春もぎたて、朝一番!』(5日、12日午前6時30分)とニッポン放送『森田健作 青春の勲章はくじけない心』(6日午後6時20分)で、前千葉県知事の森田と初対面した。(ENCOUNT編集部ディレクター 柳田通斉)
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2019年公開の『翔んで埼玉』は、魔夜峰央氏による同名漫画が原作で、フジテレビ社員だった武内氏が映画化の企画を提出して制作された。埼玉県をディスりつつ、郷土愛を伝える作品。原作にはなかった千葉県との抗争も話題になったが、千葉県知事だった森田にも俳優の京本政樹を通じ、出演オファーしていたという。だが、森田はこれを拒否。理由は「京本の言っている説明がよく分からなかったから」だという。
結局、出演は実現しなかったが、武内氏は「ここでお会いできて感慨深いです。埼玉県の上田(清司)知事(当時)には、(主演の)二階堂ふみさんと一緒に訪問し、『このようなディスする作品にしてしまい誠に申し訳ございませんでした』と謝罪しましたが、私も千葉県出身なので、この作品にどうにか千葉を入れ込みたかったんです」などと説明。森田も「そうだったんですね。うれしいです。でも、埼玉はいろんな意味で余裕がありますから、寛容なんですよ」と持論を語った。
同作のヒットで数々の映画賞に輝いた武内氏は、1990年4月にフジテレビへ入社した。中学時代に自宅のテレビが壊れてから、早稲田大社会科学部を卒業するまでは「ほとんどテレビを見ていなかった」という。それでも、「クリエーティブな仕事に就きたい」と思い、マスコミ塾で知り合った仲間たちと「ダメもと」でフジテレビの採用試験を受験。東京ディズニーランドのアルバイトで経験した「ジャングル・クルーズ」の船長役を演じるなどし、面接を乗り切ったという。いわゆる「バブル世代」の勢いだった。
『ひとつ屋根の下』でみそ汁を拭く裏方 26年の時を経て、酒井法子との再会に感激
「運良く入社はできましたが、テレビを見ていないので何をしていいのか分かりませんでした。ただ、当時はフジテレビのドラマが人気だった時代。同期60人中15人がドラマ部志望で、同期にくっついてプロデューサーの山田良明さんと大多亮さんとの飲み会に行ったら、そこで気に入られてドラマ部に配属されました」
演出家の道が始まった。だが、AD時代は海辺のロケでひたすら打ちあがったワカメを取り除く作業などに費やしたという。
「辛かったですね~。報道部に配属された同期がハイヤーの乗っているのに、『俺は何でワカメを取って、フナ虫だらけになっているんだ』と思いました」
その後、名作の『ひとつ屋根の下』(93年4~6月)ではチーフAD、『ひとつ屋根の下2』(97年4~6月)ではセカンドディレクターを担当しており、同作のキャストでこの日、『森田健作 青春もぎたて朝一番!』でアシスタントを務めた酒井とも約26年ぶりの再会を果たした。
同作を振り返り、酒井は「今があるのは、あの作品があったからこそ。重圧もすごくて、(制作発表)記者会見の日から3日間寝込んだほどでした」と言うと、武内氏は「ちゃぶ台をひっくり返すシーンが多くて、私はこぼれたみそ汁を拭くのが私の役目でした(笑)」。そして、収録後は「こうして酒井さんと再会できて感激でした。(主題歌の)『サボテンの花』も流してもらって、当時のことを思い出しながらグッときました」としみじみと話した。
『翔んで埼玉Ⅱ』制作延期で地方取材「作品につながる情報を集められました」
『翔んで埼玉Ⅱ』については、既に撮影を終えて現在は編集作業中という。21年夏に制作が発表されたものの、二階堂とダブル主演のGACKTが体調不良で撮影が昨秋まで延期になった経緯もある。だが、武内氏は「GACKTさんの代役は考えられなかった」とし、この期間で精力的に地方取材をしていたという。
「作品につながる多くの情報を集めることができました。今回は、埼玉と対立する県が千葉以外にも出てきます。楽しみにしてください」
フジテレビは3月31日をもって退職。同局では、連続ドラマ『神様、もう少しだけ』や『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』の連続ドラマ、映画を演出してきた。
「いろいろとやらせていただいた上に早期退職の制度に組み込んでいただき、感謝しかありません」
文字通り、映像の知見ゼロから名監督になった56歳。古巣から信頼されたまま、フリーの立場で注目作『翔んで埼玉Ⅱ』を作り上げていく。
○…19年に公開された『翔んで埼玉』は、約37.6億円の大ヒット作となり、武内氏のもとには思わぬ反応もあったという。「昨年、宮崎県に家族で行ったら、洋食店でたまたま宮崎県知事に会って話すことになって、『何とか“翔んで宮崎”を作っていただけませんか』と言われたんです。『こういう映画を作ってもらった方が、県の宣伝になるんです』と……」。このエピソードに驚いた『森田健作 青春の勲章はくじけない心』のアシスタントで山口県出身の西村知美は「もし、『翔んで埼玉Ⅲ』を作られることになり、山口県民が出ることになったら、私もぜひ」と売り込み。武内氏は戸惑いつつ、笑顔でうなずいていた。