「お恥ずかしい話ながらネットでの古書購入で詐欺にあってしまい先程、警察署へ被害届を提出」――。今月15日にあるミュージシャンがツイッターに投稿した内容が話題になっている。昨年デビュー20周年を迎えた音楽家でプロデューサーの高田漣さんだ。2017年「第59回 日本レコード大賞 優秀アルバム賞」を受賞し、今年1月に亡くなった高橋幸宏さんらと組んだバンド「pupa」でも活躍。父親は日本を代表するフォークシンガー・高田渡さんだ。今回、高田さんに詐欺被害の詳細を聞いた。

　被害に遭ったのは今月5日のこと。読書好きとして知られる高田さんは、いつものようにネット検索でお目当ての古書を探していたところ、手ごろな値段で売られている古書専門のネットショップにたどり着いた。

「とくに大きな違和感もない普通の古書サイトだと思いました。全部で十数巻の全集が数万円で売られていて高くもなく安くもなく、相応の価格だったので信じてしまい購入ボタンを押すとほかのネットショップとなんら変わらない流れで購入案内のメールが届きました」

　メールの文面にも会社名や連絡先、代表者名が記されており、不安要素はなかったという。1つだけ気になったのは支払い方法が振り込み1択で振込先が個人名だったこと。

「『個人で経営しているならば現金の方がありがたいだろうな』という親切心が働いてしまい、さらに24時間以内に振り込むと送料無料と書いてあり、数百円の違いでしたがお得だと思ってすぐに振り込んでしまいました」

　それから1週間が経過したが一向に商品が届かず、配送を知らせるメールさえもない。高田さんは記載されている会社に電話してみた。すると電話の相手はたしかにメールに書かれていた代表者だった。

「ところが話してみると古書とはまったく関係のない商品を扱う会社で『実は2、3日前にも頼んだ電化製品が届かないというという方から電話がかかってきた』と教えてくれました。結局、その会社も勝手に会社情報を使われていたそうです」

　翌日、高田さんは警察に被害届を提出した。

「クレジットカードであれば止めたり追跡したりも出来たようですが、一度振り込んでしまうと追跡が難しくなるみたいで。振り込んでしまった数万円は、余程のことがない限りは戻ってこないみたいです」

　高田さんは、あらためて今回の手順を振り返ってみた。

「思い当たる節があるとすれば支払方法が振り込みだけだったことと振込先の相手とメール送信者、サイト運営会社の代表名がそれぞれ別の人物だったことくらいで、サイトのデザインもクリスマスのバナーをいつまで貼っているんだっていう気になるポイントはあったにせよ、URLも鍵付きのSSLでしたし、勝手に使われていた会社も大手ネット通販で高評価を得ている企業でしたし、通常のネットショップの購入手順だったこともあり、素人では簡単に見抜けない巧妙な手口でした」

　今回の件を投稿した理由について高田さんは「騙されるということは、自分のせい、わきが甘い、恥ずかしいという騙された私たちが悪いという心理が働くんです。さらにその金額が少額になればなるほど被害届を出さなくなる。そんな人の心を巧妙に利用した詐欺だと思いました。だからといって簡単には見抜けないので、そういった事実を伝えることが注意喚起につながってほしいと思い投稿しました」と話した。

　最後に「当たり前ですが、たとえ少額の買い物だとしても少しでも違和感があったら立ち止まることが大切でしたね。疑問に感じたらオーダーする前に連絡先に問い合わせしてみる。支払い方法が振り込みだけの店だったら、まずは確認すべきでした。それでも100パーセント防ぐことはできないけれど、今回の件に関しては未然に防げたかもしれない。この記事を読んでくださった読者のみなさんは、どのような対策を講じているのか知りたいですね」と話した。