日本発のダンスのプロリーグ・第一生命 D.LEAGUE 22-23。全12チームが凌ぎを削る今 シーズンのなかでも優勝候補として呼び声高いクランプアーティスト集団FULLCAST RAISERZ。そのチームを引っ張るディレクターのTWIGGZ “JUN”は日本にクランプダンスを持ち込み、日本のクランプシーンの礎を築いたレジェンド的存在。鍛え抜いた筋肉を武器にエナジー溢れるダンスで観る者の心を揺さぶり、多くのトップアーティストを育成・輩出してきた。「クランプはマイノリティなダンス」と語るJUN氏だが、だからこそ国境や環境を超えて結ばれるクルー同士の絆が見えてきた。（取材・文＝近藤加奈子）

　昨今では日本人でありながらも海外デビューを目指す例も珍しくなく、ダンサーを取り巻く環境も大きく変化しつつあるが、そのなかでも思うことがあるという。

「学校教育にもオリンピックの種目にもダンスが取り入れられて昔より理解は得られていると思うけど、本来ダンスはもっと自由にやって良いものだと思うんです。ダンスは音楽と自分の肉体さえあればどこでもできるし、自分が怪我をすることはあっても相手に怪我をさせることはないはずなんです。スケボー然り、今でも外で練習していたら怒られたりすることもあるので、“この時間からこの時間はこの場所で音楽をかけても良いよ”みたいな環境を増やしていけたらなと思います。Dリーガーになってもスタジオを使えるのが当たり前と思わないし、今でも外で練習している人もたくさんいます」

　JUN氏はクランプを通し、岩田剛典（EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS）など数々の著名人を育て上げてきた。当時のエピソードを楽しそうに振り返る。

「GUN（岩田）に関してはここまで人気者になるなんて思ってなかったです。今はあんな王子様みたいなキャラですけど僕はオラオラした匂いのするGUNしか知らないです（笑）。そんな悪い感じの匂いがあったのに今はずいぶん優しい雰囲気になったなというか。佐野玲於(GENERATIONS)は昔も今も変わらないところはすごいなと思います。良いところも悪いところも知っていますけど、クランプに愛がありますし、こだわりもめちゃくちゃある。伝わりづらいかもしれないけど『お前、クランプ分かってるね！』って感じです（笑）。それってもうダンスの技術とかじゃなくてマインドなんですよね」

　貧困や過酷な環境下を生き抜くための手段として生まれたクランプは他のダンスジャンルに比べてメンバー同士の絆も強い。だからこそ今でも交流が続いているという。

「クランプは銃を持たないギャング、“戦うための踊り”というバックグラウンドがあります。そのため彼らとは血を分けた兄弟という感覚がずっとあります。それにクランプってまだまだマイノリティな部分があるし、自分が日本にクランプを持ち込んだのもあって、彼らも僕らのことを蔑ろにはしないんです。『今、こういう活動をしています』っていう連絡が常にあるのはありがたいです」

「クランプはマイノリティなダンス」と語るJUN氏。コロナ禍による行動制限等の影響で一時活動はしにくくなったものの、世界中のクルーたちがその火を絶やさなかった。

「やっぱりコロナの影響は受けていて、世界のクランプシーンを見渡しても勢いは落ちたと思います。そんななかでもこうして日本のD.LEAGUEでクランプチームとして僕らが出られているのは本当に奇跡。他にも韓国の『STREET MAN FIGHTER』に僕と仲の良いクルーが活躍していて、彼らもクランプの認知度を高めてくれています。実はアジアのクランプシーンって大きな可能性を秘めているので、僕ももっともっと多くの人にクランプの素晴らしさを伝えていきたいです」

　岩田剛典らの活躍もあり、そこからクランプを始めた者も多い。JUN氏はクランプで有名になりたいクルーには伝えていることがあるという。

「『どうなりたいのか？』と聞いて『有名になりたい』と言ったら『簡単だよ』と言います。なぜならクランプはマイノリティでそもそものやっている人口が少ないから。本気でやれば結果は出るから。でも、結果を出すまで本気で向き合える熱量があるのって才能だと思うんです。GUN（岩田）も最初、俺のところに来た時『あ、こいつはものになるな』と確信しました。彼のファーストインパクトは強烈でしたから。FULLCAST RAISERのKTRは『お前すげえ良いもんあるから東京おいで』って呼びました。もうこれは嗅覚みたいなもので佐野玲於も『こいつは持ってんな』と思いましたから。ただダンサーの素質を持っているのと芸能人になれるのかの話は別。『有名にすることはできるよ、ダンス界ではね』と言っています」

　日本のクランプシーンの先駆者であるJUN氏が、これからダンスを始める人にアドバイスを送るとしたら？

「ジャンルはクランプでも何でも良いんですが、『何かを始めるならこだわりを持ちなさい』と伝えます。こだわりさえ見つければ絶対に上に行けます。それと大事なのは準備と目標。結果っていうのは準備が全てだと思っているので、準備が120できていれば絶対に100の結果は出る。良い結果に繋がらなかったのは準備が120できていなかったから、なんて思いながら生きています」

□TWIGGZ “JUN”（ツイッグス ジュン）1977年8月11日、北海道生まれ。LA発祥のクランプダンスを日本に持ち込み、日本のクランプシーンの礎を築く。世界のクランプメンバーの中心として活躍。日本のクランプ界を代表する（R）AG POUNDやTwiggz Famを牽引しながら、名だたるトップアーティストらと共演、振り付けなども担当している。