東京・神奈川で中学受験スタート “異次元”トップ校に保護者は不安も…自己肯定感優先なら準難関校も視野

東京都と神奈川県内の私立中学入試が1日、スタートした。コロナ禍対応によるデジタル化の推進や教育内容の充実などで年々、私立中高一貫校の人気が高まっており、今春の受験者数は過去最高となる見通しという。

23年の入試が行われた桜蔭中学校。新校舎の建築が進んでいる【写真:ENCOUNT編集部】
23年の入試が行われた桜蔭中学校。新校舎の建築が進んでいる【写真:ENCOUNT編集部】

予備校講師「学校の評価を東大合格者数で競っているのは問題」

 東京都と神奈川県内の私立中学入試が1日、スタートした。コロナ禍対応によるデジタル化の推進や教育内容の充実などで年々、私立中高一貫校の人気が高まっており、今春の受験者数は過去最高となる見通しという。

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 この日は東京の男子御三家と呼ばれる開成、麻布、武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉などの入学試験が一斉に行われた。桜蔭中学(東京・本郷)では、早朝から保護者に付き添われた受験生が続々と集まり試験会場へと向かっていった。コロナ禍前に見られた進学塾講師らの応援風景はなく、試験終了後にはアルバイトの大学受験予備校スタッフらがPR用パンフレットを近くの路上で保護者に配布していた。

 桜蔭といえば昨年、国内最難関の東京大学理IIIに13人の合格者を輩出し、関西圏の超難関私立中高一貫男子校・灘高の10人を抑えて全国トップに立った。合格者6人だった開成、筑波大学附属駒場の倍以上という結果に受験業界は衝撃を受けた。大手予備校講師は「桜蔭の生徒は基礎を徹底して苦手な科目を作らず、全教科とも丹念に勉強する朝型タイプが多い。このような勉強が習慣化していれば東大理IIIは決して遠い存在ではありません」と話す。桜蔭が今年の大学入試で何人の東大理III合格者を出すか、受験業界は固唾を飲んで見守っている。

 ところで、“東大理III合格者13人”は驚異的な数字だが、保護者からは意外な声が上がっている。「昨年春の東大合格者数は77人、うち理IIIが13人というのは立派な数字ですが、周りがみんな学業優秀だとどうしても落ちこぼれる生徒さんが出るのではと不安になりますね」(受験生の父親)。桜蔭中高から東大に進んだ大手サービス産業幹部は「私自身、桜蔭に合格して東大に進みましたが、学生時代は勉強ばかりしていた思い出があります。ですから娘が中学受験する際、桜蔭ではなく自由な学風の女子学院を勧めました」と明かした。同じく、桜蔭から東大理系出身の20代女性も「放課後はすぐに帰宅して勉強していました。今にして思えばもっと熱心に部活をしていればよかった」と語った。実際、桜蔭中1年の募集人員は例年235人だが、高校卒業者数は6、7人少ない220人台後半となっている。勉強についていけない生徒が毎年、数人かは脱落しているのだという。

 もちろんこれは桜蔭に限った話ではないが、“異次元”過ぎて二の足を踏む保護者はけっこう多いのではないか。前出の予備校講師は「桜蔭や女子学院を第1志望としていても近年医学部に大量の合格者を出している豊島岡女子学園や鴎友学園女子、吉祥女子といった新御三家、さらに第3志望まで視野に入れるべきです。トップクラスの難関校に入って下位クラスになるより、準難関校でトップクラスに入った方が自己肯定感が高まるし指定校推薦も受けやすい。有名中高一貫校はどこもキャリア教育、グローバル教育などの充実に力を入れているので教育内容にそれほど差はありません。そもそも中高一貫校の評価を東大合格者数で競っているのは問題です。桜蔭は素晴らしい学校ですが、子どもが将来したいことをかなえてくれそうな学校を選ぶことも大切です」。

 どこにいてもサクラは咲く――。中学受験はそれぐらいの余裕を持って臨んだ方が子どものためにも良さそうだ。

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