【猪木祭り】“場外転落”の投げ技が物議 “蒼い目のケンシロウ”がひと言「あれはムカついた」

昨年10月1日に心不全のため亡くなったアントニオ猪木さんの“遺言”として開催された「INOKI BOM-BA-YE×巌流島(猪木祭り)」(2022年12月28日、両国国技館)からひと月が経過した。

20年以上、日米マット界の栄枯盛衰を体感してきたジョシュ
20年以上、日米マット界の栄枯盛衰を体感してきたジョシュ

初の巌流島ルールへの挑戦はジョシュの希望だった

 昨年10月1日に心不全のため亡くなったアントニオ猪木さんの“遺言”として開催された「INOKI BOM-BA-YE×巌流島(猪木祭り)」(2022年12月28日、両国国技館)からひと月が経過した。

 同大会では、異種格闘技戦をテーマに全10試合が行われたが、その中に元UFCヘビー級王者のジョシュ・バーネットが、シビサイ頌真と巌流島ルールで闘った一戦があった。結果はキャリアで勝るジョシュがシビサイを完封し、その強さを見せつけたが、そのジョシュによるインタビュー動画が「巌流島」の公式YouTubeチャンネルで公開された。

 それによると、シビサイ戦には二つの重要なポイントがあったという。「ひとつは猪木さんのために闘うということ。二つ目はシンプルにピュアにファイターとしてシビサイとリングの上で向き合うことだった」と話した。

 今回、ジョシュは巌流島ルールを闘ったが、それはジョシュの希望だった。「MMAか巌流島ルールのどちらでも構わないというオファーだったから、巌流島ルールを選びました。理由はそのほうが猪木さんが経験した異種格闘技戦に近いから。ぜひ、今までとは違ったコンセプトのリングに挑戦したかった。たしかにMMAではシビサイよりもわたしのほうがキャリアはあるが、巌流島ルールでは彼のほうが経験値は上になる」とコメントし、「やってよかった」と笑顔を見せた。

「MMAだとパターンが決まってきてしまう。まったく同じとはいわないけど、寝たままの攻防か立ち上がってまた闘ったり、テイクダウンを取り合ったり……。その点、巌流島ルールだと倒しても30秒や15秒でスタンドに戻るから、別の展開になるときもある」

 また、ジョシュはMMAと巌流島ルールの最大の違いとして、「場外への『転落』というオプションルールがある」と口にした。

「今回だと貴賢神VSジミー・アンブリッツ戦では相撲のスキルを生かした貴賢神が場外にぶっ飛ばした。一発で場外にぶっ飛ばされたアンブリッツはその後、なにもできなくなってしまった」

 要は、それだけ相撲取りのぶちかましは強烈であり、とくに巌流島ルールでは有効打となり得る。これがMMAであれば金網やロープで囲まれているため、場外に「転落」することはない。

 実際、ジョシュは今回の試合に向け、米国でルール対策のための練習を行ったが、「今までの練習の仕方だと、自分の足がいつのまにか場外に出ていることがあった。その時点で負けてしまう。だから常に自分がどの位置にいるか、それを把握しながら闘うことになる」とコメント。つまり、自分の位置を常に頭に置きながら闘うには最適のルールが巌流島ルールになる、ということだろう。

 なお、今回の試合でジュシュに敗れたシビサイがどうすれば強くなれるのか。この問いに対して、ジョシュは次のように提案した。

「それは簡単です。ぜひロスにある私の道場に来てほしい。ヘビー級の選手も数多くいます。そういう選手と一緒に練習すれば、すぐに強くなります。そしてシビサイはもっと強くなって、日本のヘビー級選手の見本になってほしい。そして今後の巌流島やMMAにも出場できる選手を増やしてほしいです」

物議を醸した「雲海」へのノーザンライトボム
物議を醸した「雲海」へのノーザンライトボム

物議を醸した「雲海」へのノーザンライトボム

 そう言ってシビサイにエールを送ったジュシュ。

「その前に(ジョシュ戦前にシビサイが公開練習を行った)藤原喜明組長からもっと教えを受けてほしい。いま彼は中井祐樹先生に師事していますね。中井先生は柔術とキャッチレスリングもできる素晴らしい先生です。だから藤原組長、中井先生、そして私の3人から学んで、さらに強くなってほしいです」

 そして自身の試合を振り返ったジョシュは、他の試合の感想も述べる。実は今回、最も物議を醸した場面が、カポエイラ出身のマーカス・アウレリオが、テコンドー出身の江畑秀範を抱えたまま、場外への「転落」を選び、雲海へと両者が落ちていった場面だった。

「あれはすごかったね。(プロレス技の)ノーザンライトボムのようだった。あれが大会のハイライトになった。あれでアウレリオに一気に持って行かれた。ムカついたよ(笑)」

 さらに今回の「猪木祭り」には、新日本プロレスの柴田勝頼が参戦し、トム・ローラーとのUWFルールマッチを闘ったが、柴田は参戦会見の際、「猪木さんに呼ばれてきました」と口にした。動画内でもこのことに触れて、ジョシュは「私も猪木さんに呼ばれている感じがしました。私は気持ちの中には常に猪木さんがいて、猪木さんのために、猪木さんに触れるために試合をしました」と語っている。

 そうなると注目されるのは今後だが、それに関してはジョシュはこう答えている。

「また巌流島ルールをやってみたい。対戦相手? それは分からないけど、関根シュレック秀樹とは闘ってみたいし、(元大相撲の)鈴川真一にも興味があります。彼は巌流島では無敗だし、シビサイにも勝っている。面白い試合になるんじゃないかな」

 興味深いのは、ジョシュが「巌流島」を米国で開催したい意向があるという話だった。

「そのためにやらなければならないことは、まず米国で巌流島の映像配信をすること。まずはそこからです。その上でもしアメリカでの放送に手伝えることがあれば、私も試合をするし、大会の開催も面白いと思います。巌流島の強みは日本古来の武道ですし、アメリカにも“和”に興味がある人は数多くいますから」

 ちなみに動画内では、今春からオンラインで公開される「レスリング・ウィズ・シャドウズ」の件にも触れている。同作品は1998年に製作された、WWEのプロモーター、ビンス・マクマホンと当時の所属レスラー、ブレット・ハートの舞台裏の関係性をドキュメンタリータッチで描いた問題作だが、「完全復活版」としてオンライン配信が決まったという。

「WWEのプロレスのあり方を描いた作品で、公開された時は興味深く見た記憶がある。プロレスの表側だけではなく、裏側の選手や関係者の動向が見たい方にはオススメだし、プロレスのあり方を考える上で問題的になった作品なので、その点でもオススメです」

 そう話したジョシュに対し、「MMA ウィズ・シャドウズは?」と問うと、ニヤリと笑って「そのうちね」とつぶやいたが、その言葉には、これまで20年以上の長きにわたり、日米のマット界のさまざまな場面を体感してきたジョシュならではの存在感のぶ厚さを感じた。

 そう考えると、“蒼い目のケンシロウ”の次なる一手にあらためて注視せざるを得ない。

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