草彅剛「僕にとって特別な作品。必死に演じた」…映画「台風家族」への熱い思い
――草彅さんは親が残した遺産を独り占めしようという役ですね。
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草彅「遺産をどう分取ってやろうかっていうことは、めちゃくちゃ汚いんだけど、一方で、人間くさかったりもします。そういうところで、観ている人の心を動かせる作品になれば、と思いますね。だから、結構必死に演じていますよ。より熱い僕が見られると思います。やっている時はもう結構マジというか……市井昌秀の演出に乗せられて、みんな楽しんでやっています」
――栃木市での撮影は泊まり込みですか?
草彅「僕は犬のクルミちゃんがいるんで、家に帰っているんですけど、みんなは毎日、泊まっているんですよ。娘のユズキ(甲田まひる)は朝の9時に撮影が終わっちゃって、『何もないから、釣りしよう』って釣り堀に行っているんですよ(笑)。で、釣りも終わって、やることもないから、現場で照明さんの手伝いをしている(笑)。そんな女優さんは初めて見ましたね(笑)。そういうことってあんまりないじゃないですか。すごく温かい現場だなと思います。僕は毎日帰らないといけないから、羨ましい(笑)。みんなは家族みたいになっているのに、僕だけ距離感がある。だから、撮影が終わったら、どうやって遺産をぶんどってやろうかとか役作りのことを考えたりする。市井監督はオリジナル脚本で監督されて、どんな感じですか?」
市井監督「ちょっと浮かんだアイデアから始まって、積み重ねながらじっくり書いてきて、ようやく具体になった作品なので、その分熱量はやっぱり違いますね」
草彅「もしかすると、もしかする作品」
――草彅さんとの初仕事はいかがでしょうか?
市井監督「本当にやりやすいです。小鉄役を、草彅さんに想定したところからより一層脚本が膨らみました」
草彅「じゃあ、私を当て書きした感じになっていますか?」
市井監督「なっています。本当に」
草彅「僕の色を書き足しているわけか、素晴らしいね。こうして市井監督の本になっていくわけですね。ほかの役者さんはどうですか?(尾野)真千子ちゃんとかは?」
市井監督「尾野さんとは(WOWOWドラマ『十月十日の進化論』で)一度、ご一緒させていただきましたが、草彅さんも(オムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』の一遍で)夫婦役で共演していますから、すごくいい感じです」
草彅「(市井監督に)少し撮影が進んできて、罵倒し合うシーンでは結構長回ししていますね。役者にとってはドキドキする時もあって、撮り方が面白いなって思っていました。まさか、時間がなくなると、プロデューサーに怒られるから、ワンカットで回せ! みたいなことではないですよね?」
市井監督「そうじゃないです(笑)。ちゃんと狙いがあって、長回しにしています」
草彅「あー狙いなんだ。了解了解(笑)。それがちょっと心配だった。2分半くらいカメラを回した時は、どんな表情をしていいか迷ったりするんですよ。監督は結構、思い入れが強いので、(出演者を)追い詰めてくるんです。とにかく、本がすごい。読んだ時よりか、実際に演じてみると、すごく愛着あるセリフだというのが分かる。それは監督が昔、演じ手(漫才グループ『髭男爵』の元メンバー)だった経験があるせいか、演じ手のことをよく考えてくれている。セリフを噛み締めてやってみると、本で読んでいた時より面白くなってくるところがたくさんあるんです。これは、もしかすると、もしかする作品かもしれません。そう思ってきています」
□草彅剛(くさなぎ・つよし)1974年7月9日、愛媛県生まれ。45歳。1988年、SMAPとしてデビュー。これまで、ドラマ「いいひと。」「僕と彼女と彼女の生きる道」、舞台「蒲田行進曲」、映画「黄泉がえり」など数多くの作品に出演。俳優としてだけではなく、「『ぷっ』すま」などのバラエティーでも活躍。2005年の橋田寿賀子賞を受賞。2017年に「新しい地図」を結成し活動している。
□市井昌秀(いちい・まさひで)1976年4月1日、富山県生まれ。43歳。漫才グループ「髭男爵」元メンバー。初長編作品となる自主映画「隼」(2004)が第28回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリと技術賞受賞。長編2作目「無防備」が第30回同映画祭でグランプリ、技術賞、Gyao賞、第13回釜山国際映画祭コンペティション部門ではグランプリ受賞。商業映画第1作目「箱入り息子の恋」(2013)は単館公開ながら興収1億円を超えるスマッシュヒットとなり、第54回日本映画監督協会新人賞を受賞した。
(下につづく)