動物園への“カエル送り付け”が物議 引き取り手の園長が考える「飼い主の最後の責任」

世話ができなくなったペットのカエルを、実在のショップ名をかたり名前を偽って送り付けてきたという動物園の投稿が、ネット上で物議を呼んでいる。投稿を行ったのは、静岡県賀茂郡にある日本初の体感型動物園「iZoo」の白輪剛史園長。ペットの遺棄による外来種問題の対策として、は虫類・両生類の引き取り活動も行っている白輪園長に、引き取りを行う上での唯一の条件と投稿に込めた意図を聞いた。

小包に入れられ送り付けられたクランウェルツノガエル【写真:本人提供】
小包に入れられ送り付けられたクランウェルツノガエル【写真:本人提供】

21年には横浜の脱走ニシキヘビを発見したは虫類・両生類飼育のエキスパート

 世話ができなくなったペットのカエルを、実在のショップ名をかたり名前を偽って送り付けてきたという動物園の投稿が、ネット上で物議を呼んでいる。投稿を行ったのは、静岡県賀茂郡にある日本初の体感型動物園「iZoo」の白輪剛史園長。ペットの遺棄による外来種問題の対策として、は虫類・両生類の引き取り活動も行っている白輪園長に、引き取りを行う上での唯一の条件と投稿に込めた意図を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「ゆうパックが届いた。差出人は九州の実在ショップ。品名はツノガエル。カエルが送られて来る心当たりがないので、先方に問い合わせ。『全く知らない』との返事。箱を開けるとクランウェルツノガエルが出てきた。何者かが勝手にショップ名をかたり、生きたカエルを送りつけて来たと判明」

 23日、白輪園長が投稿した画像には、プラスチック製の容器に梱包された状態で送られてきた生きたカエルの姿が収められている。続く投稿では「箱の中には無記名の手紙。要約すると『飼い主が病気になったので世話をお願いします。』との内容。丁寧な手紙の書き振りと、いきなり実在のショップ名をかたり、小包を送りつけるギャップにあ然。相談していただいたら普通に引き取るのに。。こういうのは本当にやめて欲しい」という、園長の切実な思いがつづられている。

 白輪園長によると、園宛てにカエルの入った小包が届いたのは23日の午後6時頃。すでに事務員が帰った後で、飼育員が発見し、園長のもとに連絡を入れたという。

「送り先は九州にある知り合いのペットショップだが、心当たりがない。間違えて送ったのかもと思い電話したところ、向こうも全然知らないと。これは憶測ですが、郵送で受け取られなかった場合、荷物が送り主の元に戻ってきてしまう。送り先も実在のショップにすることで、どちらかには引き取ってもらえるだろうと考えてのことではないでしょうか」

 白輪園長は、一般社団法人日本爬虫類両生類協会の理事長も務めるは虫類・両生類飼育のエキスパート。21年には横浜のアパートから脱走した体長3メートルを超えるアミメニシキヘビを発見、捕獲に貢献したことも記憶に新しい。「は虫類や両生類は、ただでさえ好きな人より嫌いな人の方が多い。生き物は何も悪くないのに、脱走や外来種などの問題が起こるとセンセーショナルに報じられ、余計にイメージが悪くなってしまう」と、10年ほど前から飼育できなくなったは虫類や両生類の無償引き取りを行っている。

「ほぼ毎日電話があります。園への問い合わせの3分の2は引き取り依頼ですね。自己満足ですが、処分したり逃がしたりせずにこちらで引き取れば、飼い主にとっても、生き物にとっても、自然環境にとってもいい。イメージ悪化を防ぐ、業界のためというのもあります。ただ、引き取りにあたってひとつだけ条件があり、それが飼い主の手でペットを園まで送り届けること。それが飼い主としての最後の責任であり、誠意だと思うからです。それでも、なんとか郵送で遅れないかという問い合わせや、無断で送りつけてくることはありますけどね」

 今回の投稿には「最低ですね…寒かったろうに」「命を宅配で送るとか…信じられません」「送り主は生き物飼う資格ない」といった飼い主を非難する声が相次いでいるが、白輪園長は一方的に飼い主を責める気にはなれないという。

「クランウェルツノガエルは南米原産のカエルで寒さには弱いものの、保温を含めた梱包は適切で状態は良好です。引き取り依頼する飼い主は、それだけで多少の良心はあるんです。中には平気でごみに捨てたりトイレに流したりする人もいて、それに比べたら命を助けようとしたことには違いない。手紙は無記名でしたがとても丁寧で、病気でやむにやまれぬ事情があって、園まで足を運べなかったんだろうとも推察はできます。ただ、だからと言って人の名前をかたっちゃいけない。正直に連絡するなり、飼い主としての最後の責任を果たしてほしかったですね」

 引き取った生き物のうち一部は園内で展示、残りはバックヤードで飼育することになるという。生き物を飼うときは最後まで面倒を見るという責任を持つのが大前提だが、予期せぬ事故や病気など、やむにやまれぬ事情は誰にでも起こり得る。いざというとき、ペットの命をどこに託すのか。そこまで考え抜くことこそ、飼い主の本当の責任と言えるかもしれない。

次のページへ (2/2) 【写真】「ツノガエル1匹」「取扱注意」と書かれた送り状
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