滝藤賢一がブレークのきっかけをつかんだ人間ドラマ「あんな芝居はもう二度とできない」

映画『ひみつのなっちゃん。』(監督・脚本、田中和次朗、公開中)の中年ドラァグクイーン役で映画初主演を果たした滝藤賢一(46)。俳優の中には、自作は見ない人もいるが、滝藤は、好きな作品は繰り返し見ているのだという。ズバリ、ベストアクトを聞くと……。

滝藤賢一に愛妻がアドバイスした言葉とは【写真:ENCOUNT編集部】
滝藤賢一に愛妻がアドバイスした言葉とは【写真:ENCOUNT編集部】

映画『ひみつのなっちゃん』で映画初主演

 映画『ひみつのなっちゃん。』(監督・脚本、田中和次朗、公開中)の中年ドラァグクイーン役で映画初主演を果たした滝藤賢一(46)。俳優の中には、自作は見ない人もいるが、滝藤は、好きな作品は繰り返し見ているのだという。ズバリ、ベストアクトを聞くと……。(取材・文=平辻哲也)

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 滝藤の代表作と言えば、日本航空123便墜落事故をモチーフに地方新聞記者の人間ドラマを描いた『クライマーズ・ハイ』(08年、原田眞人監督)が真っ先に浮かぶ。事故の惨状に衝撃を受けて、精神不安定になってしまう記者役だ。当時、無名ながらオーディションに呼ばれて、原田監督に大抜てきされ、ブレークのきっかけをつかんだ。

「あの作品は僕にとって、大事な作品で、今でもよく見ます。あんな芝居もう二度とできないだろうなと思います。大好きな作品ですね。あれがなければ、今の僕はない。大抜てきしてくださった原田監督には感謝しかありません。好きな作品はいっぱいありますけど、原点だと思います」

 同じ原田監督作品の『関ヶ原』(17年)ではメインキャストの豊臣秀吉を演じた。

「時代劇は昔よりも見るようになりましたね。『関ヶ原』、『麒麟がくる』(20年)、ファンタジーではありますけど、『家電侍』(22年)も。熊井啓監督や深作欣二監督の作品などを見て、面白いな、と。時代劇は本当に準備が大変なんです。かつらを1時間かけてつけ、着物を着ると、寝転がることもできない。『関ヶ原』のときは特殊メイクもあったので、4時間かかりました。ただ時間がかかる分、その気にさせてくれる。スイッチが入りますね」

 デビュー当時はアルバイトとの掛け持ちだったが、今や絶頂期を迎えている。どんな心情で仕事を続けているのか。最近、現場で感じるのは、思いやりの心の大切さだという。

「スタッフ同士で罵声が飛び交う現場を見て悲しくなるんですが、スタッフもキャストも寝る時間もなく余裕がないので、気持ちは分かります。ただお互いが思いやりを持った喋り方をすれば、ギスギスしたきつい言葉にならないと思うんですよね。現場は楽しい方が良いに決まってますから」と苦笑い。

 俳優は、待つのも仕事のうちだ。準備、心持ちで演技の質は必ず変わってくる。

「時には我慢することも大事ですし、何よりも謙虚でいるということじゃないですかね。アンテナを張り巡らしておいて、チャンスを逃がさないようにする。虎視眈々(たんたん)と待って、与えられた仕事を一つ一つ丁寧にやっていく。僕の奥さんは『必要以上に謙虚でいなさい』といつもアドバイスしてくれています」。私生活では三男一女のよき父親。家族の愛、サポートにも感謝しつつ、滝藤は現場に立ち続けている。

□滝藤賢一(たきとう・けんいち)1976年11月2日、愛知県出身。高校卒業後にオーディションに合格し、映画『バレット・バレエ』に出演した後、仲代達也主宰の無名塾に参加。数多くの舞台で活動する一方、映画『クライマーズ・ハイ』やドラマ『半沢直樹』などに出演し人気を集める。近作に『探偵が早すぎる』『家電侍』など。NHKプレミアムドラマ『グレースの履歴』(3月19日22時~全8回)が控えている。

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