芥川賞・井戸川射子氏は現役高校教員 教え子には「候補になった段階で」作家公表
第168回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が19日発表され、芥川賞を受賞した井戸川射子氏が都内のホテルで記者会見に出席した。受賞作は『この世の喜びよ』(群像7月号)。初の候補入りで、芥川賞は佐藤厚志氏の『荒地の家族』(新潮12月号)とのダブル受賞となった。
出産・育児のつらさから「見守られたい」と二人称小説に挑戦
第168回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が19日発表され、芥川賞を受賞した井戸川射子氏が都内のホテルで記者会見に出席した。受賞作は『この世の喜びよ』(群像7月号)。初の候補入りで、芥川賞は佐藤厚志氏の『荒地の家族』(新潮12月号)とのダブル受賞となった。
井戸川氏は1987年生まれ。19年に『する、されるユートピア』で第24回中原中也賞、20年に『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞を受賞した。
現役の高校教員で国語の授業で詩を教えるために創作を始め、詩人と小説家、教員という3つの顔を持つ。受験シーズンで教え子たちへのメッセージを求められると、「作家だと最初に言っちゃうと授業がしづらいので、3年生には候補になった段階で伝えました。子どもたちには努力が報われることも報われないこともあると教えているけど、報われることの喜びを伝えられたら」と話した。
育児をテーマにした受賞作は、自身の出産・育児の経験を機に「しんどくて、子どもを見守るように誰かに見守られたい」という思いから二人称小説で執筆。「書くことで自分で自分を見守ってあげられた。エゴサとか全然しないんですが、今回はしてみて、色んな読まれ方をしているな、こんな見守られ方もあるんだなと感じた」という。
今後については「詩も小説もやりたいことをどんどんやっていきたい」と話し、受賞の喜びを語った。
正賞は時計、副賞は賞金100万円。贈呈式は2月下旬に都内で行われる。