GT-Rが盗難、失意の男性に追い打ちをかけた保険会社の“裏切り”「もう信用できない」

近年、自動車盗難の被害が深刻化している。1度盗まれた愛車が戻ってくる確率は著しく低いが、仮に戻ってきたとしても、盗難過程での破壊行為の修理費用はかなりの高額に上る。そんなとき、味方であるはずの保険会社からも見放されたら……。愛車のGT-Rが盗難に遭い、奇跡的に発見された後、保険会社から一切の支払いを拒否されたと嘆く男性に話を聞いた。

盗難被害に遭った男性のR32-GT-R【写真:ENCOUNT編集部】
盗難被害に遭った男性のR32-GT-R【写真:ENCOUNT編集部】

「盗難の事実が確認できなかったので、保険金をお支払いすることはできない」

 近年、自動車盗難の被害が深刻化している。1度盗まれた愛車が戻ってくる確率は著しく低いが、仮に戻ってきたとしても、盗難過程での破壊行為の修理費用はかなりの高額に上る。そんなとき、味方であるはずの保険会社からも見放されたら……。愛車のGT-Rが盗難に遭い、奇跡的に発見された後、保険会社から一切の支払いを拒否されたと嘆く男性に話を聞いた。

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 男性の元に念願のR32-GT-Rが納車されたのは2019年のクリスマスイブ。当時は仕事の都合で愛知に転勤していたが、相次ぐ度を越した買取交渉に恐怖を感じ、わずか1年ほどで愛車を千葉の実家に預けることを決意したという。

「盗難被害が多い車なので、納車後もSNSには一切上げていなかったんですが、販売店の方が『お買い上げいただきました』とネットにアップしちゃって、納車から5日後にはワイパーに『車買います』『売ってください』というビラが挟まれるようになりました。カー用品販売店の駐車場で道をふさがれ、買取交渉をしてくる外国人グループに囲まれたことも……。あまりにしつこく身の危険を感じたので、もう割り切って実家に帰った盆と正月だけ乗る車にしようと」

 実家のガレージで保管するにあたり、保険会社に相談し、不本意ながら所有者を父親名義に変更、わざわざ愛知から千葉ナンバーに取り直した。燃料カット、ペダルロック、ハンドルを外すなどのさまざまな盗難対策を講じていたが、それもむなしく21年10月に盗難の被害に遭う。

「その日は日曜日で、愛知の自宅で朝7時、盗まれたという実家の母親からの電話で目が覚めました。パニックになってSNSで盗難被害のハッシュタグをつけて拡散したら、車両は実家からわずか600メートルほどの病院の駐車場に運ばれていたようで、たまたま日曜診療を行う病院だったので職員に発見され、違法駐車扱いですでに警察のもとにありました。エンジンがかからないようにしていたので、高額部品をはぎ取られたり、キーシリンダーをハンマーでたたき割られたり、社外コンピューターを盗まれたりという状態でした」

 実家のガレージから運び出した手口は今も不明。病院の駐車場までは「押していったのでは」というのが警察の見立てだ。犯人は今も捕まっていない。被害総額は現状復帰にかかる最低限の金額で107万円だった。

 失意の男性にさらなる追い打ちをかけたのが、高額の車両保険を支払っていた保険会社の不誠実な対応だ。事件直後から調査員や弁護士らにトータルで10時間近くも事情説明を行い、その場で保険金が支払われる旨の確約を得ていた。しかし、その後も一向に保険金は下りず、事件から1年以上たった昨年12月「盗難の事実が確認できなかったので、保険金をお支払いすることはできない」と一方的に告げられたという。

「警察には盗難被害届が受理されているのに、『我々の調査では確認できなかった』の一点張り。千葉の自宅で保管することも事前に伝えて承諾を得ていたのに、携帯のGPS機能をオフにしていたことで『事件当時の所有者の居場所が分からない』『車両が盗難される直前までガレージにあったという証拠がない』などと難癖をつけられ、不服申し立てができるのかと聞いたら『その場合はご自身で弁護士を立て我々に裁判を起こしてください』と……。結局1円も、警察署からショップまでのレッカー費用すら返ってくることはありませんでした」

 現在は事件以前から講じていた盗難対策に加え、ハード・ソフトの両面から何重もの盗難対策を追加。セキュリティー費用だけで100万円以上を投資しているという。

「持ち主の自分でさえ、ガレージから車を出すのに最短10分以上かかります。味方のはずの保険会社が敵になることもある。裏切りのような仕打ちを受け、もう信用できません。自分の身は自分で守るしかない。自腹で修理したあともずっと保険事故車両扱いだったので、まともに乗ることもできず、お金だけでなく愛車との大切な時間まで奪われたような気持ちです」

 自動車の盗難被害が深刻化するなか、被害者は泣き寝入りが前提となっているのが現状だ。取り締まりはもとより、その後の保険対応など、あらゆる面で被害者支援が求められる。

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