日サロ通いに1日5食…上白石萌歌が「いだてん」壮絶役作りで達した胸中とは
女優の上白石萌歌(19)がNHK大河ドラマ「いだてん」で、「前畑、がんばれ!」で有名となった日本人女性初の金メダリスト・前畑秀子を演じている。負けず嫌いの努力家だったが、性格は無邪気で天真爛漫。周囲からの大きな期待に翻弄される難しい役どころだ。日焼けサロンに通い真っ黒になり、1日5食で体重を7キロ増やすなど、並々ならぬ思いで今回の役に挑んでいる。
上白石萌歌インタビュー 日本人女性初の金メダリスト・前畑秀子役
女優の上白石萌歌(19)がNHK大河ドラマ「いだてん」で、「前畑、がんばれ!」で有名となった日本人女性初の金メダリスト・前畑秀子を演じている。負けず嫌いの努力家だったが、性格は無邪気で天真爛漫。周囲からの大きな期待に翻弄される難しい役どころだ。日焼けサロンに通い真っ黒になり、1日5食で体重を7キロ増やすなど、並々ならぬ思いで今回の役に挑んでいる。
――演じてみた感想を教えてください。
「肌の色を黒くするため、日サロにも通って、なるべく、当時水泳をされていた方の体型や肌の色に近づけるように、準備をしてきました。ロス五輪とベルリン五輪のロケで、さらに肌を焼いてしまって、途中からどうらんがいらなくなるくらいには、肌が黒くなった。ご本人に近づけた気がして、すごくうれしいです」
――前畑秀子さんは知っていましたか。
「祖母が水泳をやっていて、演じさせて頂くことになったと報告したらすごく喜んでくれた。祖母の時代に、ものすごく輝いた女性。その部分では、祖母に恩返しできたかなと思います」
――水泳の経験はありますでしょうか。
「水泳は小学3年まですごく苦手でした。始めたきっかけは、祖母があんなに泳げるのに、なんで私は泳げないんだろうと思った時に、すごく悔しくなった。それで、小学4年生になった時に、祖母に『水泳をやりたい』と言って、同じスイミングスクールに通わせてもらいました。夏の強化練習も行っていました」
――おばあさまからはどのようなアドバイスはありましたか。
「よく練習を見に来てくれたのですが、『伸びが足りない』と注意されたことがありました。厳しいな、と(笑)」
――役作り7キロ増量したということですが、どのようなところが大変でしたか。
「体から役にアプローチしたのは初めてで、今までとは違いました。水泳の練習、食生活を見直す期間として半年を頂きました。やせるのと同じくらい増量するのは大変でした。ずっと胃の中に食べ物がなければいけないというのは、思っていた以上につらかったです。時間をかければかけるほど、前畑秀子さんに自分がどんどん近づいていっているような気がした。肉体からアプローチすることによって、セリフが今まで以上に自分のものとして落とし込めた気がします」
――共感する部分はどこでしょうか。
「周りの人からは期待の星で、特別な女の子とされていたが、前畑さん自身は普通の心を持った女の子。大会直前に、『勝てへん』と控室を走り回ったりとか、『男子選手なら、この人がかっこいいよね』と女子トークを繰り広げたりとか、普通の一面を持っていることに、私はすごく共感しました。こんなにすごい選手でも、1人の人間だし、普通の心をもって、普通にプレッシャーも感じて、期待も不安も胸の中にあって戦っていたんだなと思うと、その役にかける思いも膨れ上がっていくような感じがしました。水泳への思いや飛び込む時の目つきもリンクするといいなと思い、水泳を誰よりも愛そうという気持ちで取り組んでいました」
――体型はどのように変えていったのでしょうか。
「一時期、運動もして、食べる量も増やしているつもりが、体重の増加が停滞してしまったことがありました。その時は、ひたすら脂質を取らなければいけなくなった。すごくつらかったです。ダイエットと真逆の生活をしなければいけなかったので、なるべく油の多いものを選んで、生活をしなければいけませんでした。食事も1日5回摂ったり、寝る前に食べたりしていました。夜中遅くに脂質をたくさん摂ったりすることは、気持ち的につらかったです」
ダイエットと真逆の生活…夜中にパスタ、お菓子、唐揚げ
――具体的な食事の中身を教えてください。
「肉の脂身の多い部分を食べたり、夜中にパスタを食べたり、お菓子もよく食べました。唐揚げとか、コンビニのショーケースの中のものも、よく食べるようにしていました。やせる役がきたら、それが恋しくなると思うのですが…。ないものねだりだな、と思いながら準備をしていました」
――泳いでいる時はどんな気持ちでしたでしょうか。
「本当に無我夢中で、体力が向こうまでもってくれという気持ちです。平泳ぎが思っていた以上に奥深い泳ぎで、ひとつできるとひとつできなくなったりとか、練習でできたフォームができなくなったり、技術的な面でもすごく難しかった。いかに泳ぎを見せられるのかというのと、手のかきで出る水しぶきの臨場感とか、技術的なことで頭がパンパンになっていました」
――ベルリンオリンピックの「前畑、がんばれ!」の実況は実際に聞きましたか。
「最初は動画サイトで見ましたが、この役をやることが決まった時に、前畑さんの住んでいた和歌山の橋本に行ってみたいなと思って、1日お休みをもらい、現地に行きました。その橋本市に前畑秀子資料展示館というのがあって、当時のレコードがそのまま残っていていたので、それをその場で聞かせて頂きました」
□上白石萌歌(かみしらいし・もか)2000年2月28日、鹿児島県生まれ。19歳。2011年、小学5年の時に「東宝シンデレラ」オーディションで史上最年少グランプリ。2012年、WOWOW「分身」で女優デビュー。浪漫活劇「るろうに剣心」、ドラマ「義母と娘のブルース」、アニメーション映画「未来のミライ」などに出演。映画「羊と鋼の森」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
(ENCOUNT編集部・中村智弘/Tomohiro Nakamura)