新日本プロレスではなくノアを選んだ「孤高の戦士」ジェイク・リー 元3冠王の野望とは?
昨年暮れに全日本プロレスを退団した「孤高の戦士」ジェイク・リー。2023年になって、その勇姿を現したのは、新日本プロレス1・4東京ドーム大会ではなく、プロレスリング・ノアの1・1日本武道館大会だった。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.127】
昨年暮れに全日本プロレスを退団した「孤高の戦士」ジェイク・リー。2023年になって、その勇姿を現したのは、新日本プロレス1・4東京ドーム大会ではなく、プロレスリング・ノアの1・1日本武道館大会だった。
プロレス界23年の闘いの幕開けを告げるノア・元日決戦に入場テーマ曲「戴冠の定義」が鳴り響いた。登場したジェイクは、黒づくめのコスチュームに身を固めている。
ティモシー・サッチャーを下したジャック・モリスとともに、天を指差す得意のポーズを披露。臨戦態勢だったが、ファイトを披露することはなかった。
「俺はいろんなヤツと闘いたい。試合をしたい。だから、このリングに来た」とインタビュールームで宣戦布告をぶち上げた。
すると、黙っていられない男がやって来た。ノアではもちろん、他団体のリングでも活躍する稲村愛輝である。外敵との激突に燃える「強男」は「正月からノアのリングに土足で上がりやがって。俺がやってやる」と胸を突き出し引き揚げていった。
無論、ジェイクに異存はない。「ヤツは正しい選択をした。今の俺はおいしいぞ。俺と闘うことでもっと注目を浴びられるぞ」と、ふてぶてしく言い放った。
早速、1・8東京・後楽園ホール大会(正午開始)での一騎打ちが決まった。ジェイクにしてみれば、ありがたいノア侵攻第一戦と思っているはず。
稲村はノアで1、2を争う巨体。タイヤ特訓などで磨き上げたパワーを持ち味としている。一直線に攻め込んでくるファイトスタイルもジェイクにしてみれば御しやすい。
190センチを超える高身長を誇るジェイクの持ち味を存分にアピールすることができる。「ノア勢にはもちろん、ノアのファンの度肝を抜いてやる」とでも言いたいところだろう。
しかも「俺はいつまでも、ここにいるわけじゃない」と豪語。ノアマットにいつまでも居座る気はない。大暴れしたら、次の戦場に移っていく。日本はもちろん世界のマットを視野に入れているのだ。
取りようによっては、大口に聞こえるのは百も承知。反発されるのも覚悟の上だ。野望を発信することで、自らを鼓舞し追い込み、実現させる。ジェイクの生き方なのだ。
リングを下りればきれい好き、お気に入りの洗剤は「アリエール」
リングを下りればきれい好きで掃除・洗濯など完璧にこなす。お気に入りの洗濯洗剤は「アリエール」と、こだわりも持つ。「周りを整えられない人間に、自身の心身を整えられる訳がない」と断言する清潔感あふれる好青年である。
だがリングに上がれば、天を指さすポーズのようにテッペンを目指す、氷のような非情さ・冷たさを発揮する。
「人間、どんな状況でも、それは『気づき』を与えられているのだと思う。試練と言ってもいいかも知れない。その時、ただぼんやり過ごし、悲しんだり嘆いたりするだけではなく、何かを感じる、気づけるかでその後が変わって来る。一度しかない人生。俺は後悔したくないから行動する」と、強い意志を持った上での全日本退団、そしてノアマット登場だった。
12・25全日本ラストマッチを終えた直後に、祖母が亡くなったという。「このタイミングで? 俺に気を遣ったとしか思えなかった。そういう人だった。強くて優しい人だった。俺は俺らしく生きて行く、だから安心して眠ってほしい」と悲しみをこらえた。
3冠ベルトも腰に巻いた。チャンピオン・カーニバルも制した。全日本での実績は申し分ない。稲村を上から目線でとらえるのも当然かもしれない。
とはいえ、甘く見るには稲村は危険な存在だ。他団体の選手と対峙すると、いつも以上の力を発揮してきた。ZERO1の火祭りで準優勝。新日本プロレスのKENTA、石井智宏、真壁刀義から「あいつ、いいじゃないか」「ノアの未来はあいつか」などと、高評価を得ている。
元より、ジェイクのノア参戦が噂されるや否や、手ぐすねを引いていた稲村である。大どんでん返しを狙っているのは明白。なかなか崩せないノアでの序列を、外敵を蹴散らすことで外堀から埋めていく目算かも知れない。
ノアを踏み台にするつもりのジェイクのプランを、のっけから稲村がぶち壊す。1・8後楽園決戦で大どんでん返しになるか…熱戦間違いなし。さあ、見逃せない。