元俳優の林光樹、伝説のレコード会社を復活 亡き母の思いに涙、兄と交わした言葉

亡き母から託された思いと兄との絆――。伝説のレコード会社が新たな一歩を踏み出した。「X JAPAN」のYOSHIKIが設立した「エクスタシーレコード」が約20年ぶりに“復活”。社長として先頭に立つのは、YOSHIKIの弟で元俳優の林光樹(こうき)氏=52=だ。「自分たちを信じて前に進む」をモットーにする「エクスタシー魂」を原動力に、2023年春になかのZERO 大ホール(東京)で、主催フェス「EXTASY UNLIMITED2023~温故知新~」の開催が決定。過去に在籍したアーティスト音源の全世界配信、新人アーティストデビューなど、続々とファン待望のプランを打ち出す。光樹氏に熱い思いを聞いた。

亡き母の思いを胸に、YOSHIKIが設立した「エクスタシーレコード」の社長として奮闘する林光樹氏【写真:ENCOUNT編集部】
亡き母の思いを胸に、YOSHIKIが設立した「エクスタシーレコード」の社長として奮闘する林光樹氏【写真:ENCOUNT編集部】

「エクスタシーレコード」約20年ぶりに復活 林光樹氏が社長就任 音楽フェス「EXTASY UNLIMITED2023~温故知新~」決定

 亡き母から託された思いと兄との絆――。伝説のレコード会社が新たな一歩を踏み出した。「X JAPAN」のYOSHIKIが設立した「エクスタシーレコード」が約20年ぶりに“復活”。社長として先頭に立つのは、YOSHIKIの弟で元俳優の林光樹(こうき)氏=52=だ。「自分たちを信じて前に進む」をモットーにする「エクスタシー魂」を原動力に、2023年春になかのZERO 大ホール(東京)で、主催フェス「EXTASY UNLIMITED2023~温故知新~」の開催が決定。過去に在籍したアーティスト音源の全世界配信、新人アーティストデビューなど、続々とファン待望のプランを打ち出す。光樹氏に熱い思いを聞いた。(取材・文=吉原知也)

 きっかけは、最愛の母との別れだった。エクスタシーレコードの前身は、YOSHIKIの母である故・千惠子さんが1972年11月2日に立ち上げた呉服店。86年からYOSHIKIがレコード会社・インディーズレーベルとして運営を始めると、X(現・X JAPAN)、GLAY、LUNA SEAらビッグネームを含めたビジュアル系バンドが多数在籍。88~92年まで開催されたライブイベント「エクスタシー・サミット」は、ファンの間で伝説として語り継がれている。2003年以降は、会社の活動は停止していた。

 2022年5月、社長を務めていた千惠子さんが死去。亡くなるまでの半年間、住み込みで母を介護していた光樹氏は、大きなショックに見舞われた。「悲し過ぎて、どうしたらいいのか分からない。そんな状況まで落ち込みました。私自身に子どもが2人いますが、死まで考えました」と振り返る。

 役者として芸能活動をしていた時期もあり、00年のフジテレビ系ドラマ「やまとなでしこ」などに出演経験がある。03年からはYOSHIKIの強い希望でYOSHIKIの事務所スタッフに。“裏方”として兄のグローバルな活動を支えてきた。

 再び表舞台に立つつもりはなかった。だが、人生最大のショックを振り払うべく、「何かを変えないといけない」と思い立ったのが、SNSだった。周囲のスタッフにアドバイスを受けながら「【EXTASY RECORDS official】」としてツイッターを開設。自身が52歳の誕生日を迎えた昨年7月22日に、「EXTASY RECORDS official Twitter」と初投稿した。

 一部のファンの間で話題に上がり、「本物なのか?」とちょっとした騒動に。8月に入って、家族しか知り得ない思い出話を掲載したり、自身の名刺の写真を掲載。1日で約4000人フォロワーが増加するなど、光樹氏本人として認識されるようになった。次第に、ファンから「伝説のレコード会社を復活させて」「またライブをやってほしい」とリクエストの声が届くようになった。

 光樹氏は、母からの言葉をかみしめた。「介護の間、自分がどう母に思いを伝えられるかと考えて考えて、子どもからありがとうと言ってもらえたらうれしいだろうな、と。それで、母が目を開けるたびに『ありがとう』と伝えていたんです。母からはエクスタシーレコードについて、『頼むよ』という言葉をもらいました。母は託してくれたんです…」。光樹氏は目を真っ赤にして、言葉を詰まらせた。

SNS投稿からプランが具体化「思いに共感してくれる仲間が集まって伴走してくれる」

 こうして、光樹氏は走り出した。「温故知新」をテーマに、次々と事業を企画。エクスタシーレコードが保有する原盤・音源の世界配信については、音楽配信会社「TuneCore」とパートナーシップを締結。新人バンドの発掘・育成は最低2組が2023年にデビュー予定だ。「よくどんなバンドになるのかと聞かれるのですが、ジャンルやイメージで縛り付けることはしません。かつてX JAPANは、自分たちでビジュアル系を名乗っていたわけではなく、自分たちを信じて突き進んだ結果、そう呼ばれるようになりました。時代の流れもありますが、何かにカテゴライズすることはしません。『エクスタシー魂』という気持ちの部分を共有することを大事にしていきたいです」と光樹氏。ベールを脱ぐ時が楽しみだ。そして、音楽フェス「EXTASY UNLIMITED2023~温故知新~」。光樹氏は「ファンの皆さんから特に声が強かったのが、ライブです。どうなるか分かりませんが、エクスタシーレコードに在籍していたレジェンドの方々にも参加してほしいです」と期待感を口にする。

 これらの新たな企画を実現させるため、クラウドファンディングを開始した。「再始動応援プロジェクト」だ。参加者のリターンは、限定グッズをはじめ、体験型リターンとして「千葉・館山本社の見学ツアー」「光樹氏との食事会」など。2023年1月31日までの期間で、目標金額は「3000万円」に設定している。

 SNS投稿からどんどん具体化していくプラン。「思いに共感してくれる仲間が集まって伴走してくれる。そんなイメージです。パートナーシップの皆さんはエクスタシーレコードのファンでいらっしゃって。何よりSNSを始めてから、何十年ぶりに連絡をしてくれた方がいれば、声をかけてくださったレジェンドの方もいます。ファンの皆さんの言葉も温かいです」。毎朝、子どもを送った後にランニングして帰る生活のルーティン。そこで自問自答している。「これからどうするんだろう、と毎日考えています。でも、走ると決めたので、やるからにはやる。それに、仲間もいます。『自分なりにこうだ』というものもありますが、仲間やビジネスパートナーの意見をたくさん聞いて、みんなで走っていきたいです」と力を込める。

 兄と交わした言葉を胸に刻んでいる。昨年6月、母の四十九日法要の後、家族で一緒に食事をした。YOSHIKIと確かめ合ったのは、「お母さんは、俺たちが仲いいということがうれしいに決まってるよね」ということ。光樹氏は「互いに、大事なことは何かを分かっています」と語る。

“新生エクスタシーレコード”は緒に就いたばかり。将来像を少しずつ描いている。「中心に“エクスタシー魂”があって、パートナーシップの輪が広がっていく。それぞれの枠組みでビジネスを共有していく。そんな巨大なネットワークになれば、と思っているんです」。そして、「私はこれまで、誰にも負けない強さを持つスーパーな馬力を持つ人と一緒にやってきました。今ここには、スーパースターはいませんし、私自身がスペシャルなアーティストではありません。でも、小さな1馬力が1000個集まれば、大きな力になれます。これからみんなで一緒に進んでいきたいです」と前を見据えた。

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