「ボクシングはスポーツなんです」 亀田興毅が“格闘技エンタメ”隆盛の時代に思うこと

プロボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏がファウンダーを務める興行「3150FIGHT vol.4」(2023年1月6日、大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場=ABEMAで全試合完全生中継)ではIBF世界ミニマム級タイトルマッチ、WBO同級タイトルマッチなど2つの世界戦を含む、計11試合が行われる。2023年の世界戦第一弾を前に、流行の“格闘技エンタメ”について亀田ファウンダーに聞いた。

ボクサーの地位向上を訴える亀田興毅氏【写真:ENCOUNT編集部】
ボクサーの地位向上を訴える亀田興毅氏【写真:ENCOUNT編集部】

インタビュー後編、ボクシングの地位向上のために必要なこと

 プロボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏がファウンダーを務める興行「3150FIGHT vol.4」(2023年1月6日、大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場=ABEMAで全試合完全生中継)ではIBF世界ミニマム級タイトルマッチ、WBO同級タイトルマッチなど2つの世界戦を含む、計11試合が行われる。2023年の世界戦第一弾を前に、流行の“格闘技エンタメ”について亀田ファウンダーに聞いた。(取材・文=角野敬介)

 ◇ ◇ ◇

――2022年はBreakingDownを筆頭にアマチュアの“喧嘩自慢”コンテンツが流行しました。どう見ていましたか。

「いいんじゃないですか。見ていて確かに面白い。素晴らしいんじゃないですか。YouTubeで炎上したりもしているようですけど、あれはあれでいいと思うんですよ。1分間で勝敗を決めるというやり方はよく考えたなと。ボクシング界も多かれ少なかれ格闘技人気の恩恵を受けている部分はあると思います」

――一方で安全面や、SNSでバズることを第一に考えた過剰なパフォーマンスには一部のプロ格闘家からも異論が上がっていました。「同じ格闘技と思われたくない」という声も。

「この質問はよくされるんですが、同じ格闘技という括りで見られる方もいるかと思うんですが、ボクシングは違いますよね。やっぱり100年を超える歴史があって、オリンピック種目にもなっているわけです。コミッションの元に管理されていて、プロモーションにも制限がかかる。ボクシングは確立されたスポーツなんですよ。これは見出しにしてほしいですよ。『ボクシングは格闘技の前にスポーツです』って」

――ボクシングは格闘技ではなく、スポーツだと。

「そう思っています。学校の部活にボクシング部はあります。ただ総合格闘技部や、キックボクシング部はありませんよね。繰り返しになりますが、歴史がある。だから何も無い状態から立ち上げた競技は本当にすごい。リスペクトします。そこは素晴らしいと。RIZINなんかの盛り上げ方は、3150FIGHTでも参考にさせてもらっています」

――一方でプロボクサーがなかなか稼げなかったり、話題にならないというような現状もあります。興毅さんもボクサーの地位を向上させたいという思いが強いと思います。

「初めは正直しんどいですよ。ファイトマネーとかもなんとか上げられるように色々動いています。コストもかけていますし、他の興行と比べても全然違うと思うんです。なんとか3150FIGHTを選手が稼げるっていう舞台にして、この業界に刺激を与えていかないと、と思っています。誰かが動かないと変わりません。いくら100年の歴史があるからといっても、ずっと一緒じゃダメなんです。ボクサーはプロスポーツ選手です。プロスポーツ選手っていうのは稼がないと、憧れの対象にはならないんじゃないかなと」

――話題を作るためには選手自身もSNSでもっと発信したり、セルフプロデュースが必要ではという声もあります。

「これからの時代、必ず必要になってくると思います。ただ必ずしもそれだけやっていればいいわけでもなくて、まずは選手が強くなるために必死で練習してからかなと。本来はスポーツ選手である以上、スポーツで稼ぐのが理想。何が一番大事なのかなと。ボクシングってやっぱり、強いか弱いかです。話題性も大事ですが、まずは強くなってから。SNSはその次の段階かなと」

――興毅さんはSNS推奨派なのかと思っていました。

「確かに今の選手たちも、知識を持っておくことは必要です。今後、時代に乗り遅れる。ちょっと暇ができた時につぶやいたりするのはええと思うんですよ。ただそればっかりになったらね……。やっぱりスポーツ選手ですから。プロ野球選手やサッカー選手が練習を疎かにしてまで一生懸命SNSやっていますか? 違う競技にしても、みんながSNSをやっているわけではないですよね。世界が認める結果を出したらフォロワー数も増える。卵が先か鶏が先かの話になってしまいますが。念押ししておきますが、セルフプロデュースを軽視している訳ではありません」

――ボクサーとしての本分を忘れるなということですね。

「新しい競技ならSNSを使って新しいファンを獲得していく必要もあります。ボクシングには一定のファンがいてるわけです。まずはそこへ向けてアピールしないと」

――新規ファンを獲得するよりも、既存のボクシングファンに訴えかけることが先決だと。

「本当は同時進行でやることが理想だとは思っています。ただまずは既存のボクシングファンに見てもらいたい。ボクシングって、潜在的なファンは多いと思うんです。昔は地上波で放送があれば、すごい視聴率をたたき出していた。今でこそ地上波放送は減りましたが、放送があれば10%近い視聴率を取っている。それだけでも数百万人が見ているわけです。ボクシングを見たいけど地上波ではやってない。どこで見られるかわからないような年配のボクシングファンもいるんですよ。そういう人らにABEMAでやっているボクシングを見てほしいなと。無料で見られるわけですから」

――確かに年配のファンにはSNSでアピールしても効果は薄いかもしれません。

「そうです。まずは既存のボクシングファンに見てもらえるような面白いカードを3150FIGHTで揃えたい。盛り上がってくると、若い人もちょっと見てみようかと。それでボクシングおもろいやんと、そういう土壌を整えていきたいですね」

 ABEMAで「ボクシングチャンネル」が新設され、今回の「3150FIGIHT vol.4」が“こけら落とし”となる。5日の会見後に、「今回はボクシングファンに見てほしい。すべて無料ですからね。無料で見られるんやけど、見方がわからん人もいるわけやから、そこに伝えたい。ボクシングファンの皆様だけでいいから、ABEMAで見てくれと」と強く訴えた。ボクシング界を盛り上げたい――。2023年の“開幕戦”へかける思いは強い。

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