【電波生活】「新婚さんいらっしゃい!」が求める夫婦とは 面白エピソードより優先されること
注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はABCテレビ制作のテレビ朝日系「新婚さんいらっしゃい!」(日曜午後0時55分)。明るく楽しい新婚夫婦が登場し、ユニークなエピソードなどで視聴者を楽しませてくれる人気番組。1971年1月の放送開始から半世紀以上も愛されている。毎回、楽しい新婚さんをどうやって見つけてくるのか。オーディションの様子など舞台裏を三田秀平プロデューサーに聞いた。
放送開始から愛されて半世紀以上 番組P「予選会場は数組の夫婦の社交場」
注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はABCテレビ制作のテレビ朝日系「新婚さんいらっしゃい!」(日曜午後0時55分)。明るく楽しい新婚夫婦が登場し、ユニークなエピソードなどで視聴者を楽しませてくれる人気番組。1971年1月の放送開始から半世紀以上も愛されている。毎回、楽しい新婚さんをどうやって見つけてくるのか。オーディションの様子など舞台裏を三田秀平プロデューサーに聞いた。(取材・文=中野由喜)
まずは応募者数や番組出演までの流れを聞いた。
「毎月200組くらいの応募がホームページやLINEからあり、年間2000組以上になるでしょうか。応募してくださったご夫婦には基本的に皆さんとお会いしたいと思っています。ディレクター5、6人が手分けをしながら、毎週末どこかの都市におうかがいしてオーディションをやっています。たとえば九州からの応募がたまってきたら博多で開催したり。応募された方には、ご都合が合えばご参加くださいとメールや電話などでお知らせします」
応募の条件は婚姻届提出から応募時点で3年以内。1次予選は3~5組一緒に行い、1組あたり15分ほど話を聞くという。2次予選では1組2、3時間かけて話を聞くという。
「番組に出演していただくのは2次予選を合格した方です。たとえば2次予選に参加してくださった5組中5組が通る時もあればもちろんゼロの時もあります。全国に1次予選を通過した方、2次予選を通過した方が結構いてスタンバイしています。2次予選を通過した方には番組出演に向けたスケジュール調整などをしていきます」
番組に出演できる新婚さんはどういう基準で選ばれるのか。
「番組に出演したいという熱意と明るくはきはきと話せる方。そしてご夫婦同士の愛情の大きさ。この2点を大事にしています。面白いエピソードがついてくるのはその後、と考えています。どうしても個性的な人が出ている印象があると思いますが、一風変わったご夫婦にお集まりいただくことを目的にしているわけではなく、等身大のご夫婦が2人の愛や夫婦生活についてお話していただくことを考えています。ですので、『変わったエピソードを持っていかなきゃ!』などとは思わず、『幸せ自慢をしてやるぞ!』『不満を聞いてもらうぞ!』くらいの気持ちでお越しいただけると幸いです。予選を終えたご夫婦からは『夫婦を見つめ直すいいきっかけになった』というお声もいただきます」
オーディションの様子も紹介してもらった。
「すごく楽しい雰囲気です。1次予選は多くのご夫婦が一緒になり、最初はライバル同士のように硬い感じですが、ディレクターが解きほぐし、仲間意識を持ちながらやれるようになっていきます。1組の夫婦の話を聞いているとき、他の夫婦がすごくリアクションしてくださいます。面白い話に笑ったり、ご主人への不満話では奥さん同士で共感したり。数組の夫婦のちょっとした社交場のような雰囲気です」
予選ならでの面白さはまだある。
「奥さんが番組に出たくて、無理やりご主人を連れてこられることもよくあります。嫌そうだったご主人もなれそめをお聞きしているうちに、出会った当時のキュンキュンを思い出されたのか、終わる頃には、来てよかったと言ってくれることが本当に多いです。予選に参加することで2人のヒストリー・お互いの感情などを再発見していただき、夫婦仲をより深めることにつながっているのではないかと思っております。あと興味深いのは我々の質問によって知らなかったお互いのことが明らかになったりします。『あのときそんなこと思っていたのか』みたいな。そうした気付きで夫婦の絆をより強めることにつながっている気がします」
夫婦円満の秘訣や仲良し夫婦の共通点を感じることはあるのだろうか。
「予選では、お互いの不満や困っていることを聞くことが多いんです。仲のいい夫婦は不満をすらすらしゃべります。つまり夫婦同士がちゃんと向き合って何でも言える信頼関係を築いています。他にも、夫婦独特の愛情表現や円滑な夫婦生活のためのユニークなルーティンやルールを話してくれる方も多いです」
コロナ禍で感じた変化 マッチングアプリでの出会いが「多いときは半分くらい」
過去にはフランスで収録を行い、男性カップルも出演した。
「フランスの場合、同性結婚が認められていたので。番組の試みとして、そういう愛の形もご紹介したいなということでやらせていただきました。結婚することだけが幸せの形じゃないですし、パートナーとのあり方も多様化しています。我々もいろんなことに取り組みたいと思っていますが、現状はまだ同性の日本人のカップルの方の出演はないです」
将来はどうだろう。
「MCの藤井隆さんも世の中の結婚の在り方が変わっていることを感じていらっしゃると思っています。時代に応じて変わっていく結婚観・恋愛観を映す鏡となって、時にはチャレンジングなこともやれたらというお話はしています」
コロナ禍で挙式・披露宴を断念したり、延期するケースも多い。番組でコロナ禍の影響を感じることはあるだろうか。
「コロナ禍でさらに加速したと思うのですけど、いわゆるマッチングアプリで出会われた方が、すごく増えたと感じています。今、応募してくださる方の4分の1から多いときは半分くらいいます。年齢も若い方はもちろん50代、60代ぐらいの方もいます。婚活パーティーなどリアルでの出会いの場が減ってしまった今、アプリで知り合って結婚したという話がすごく増えています」
司会の藤井隆と井上咲楽の魅力も聞いた。
「お2人のスタンスも魅力的でした。番組を始める最初の打ち合わせの時点から『主役はご夫婦』と強く認識しておられ、新婚ご夫婦にとって番組出演が人生に1度の晴れ舞台となり、ご夫婦の魅力と輝きが全国ネットを通して日本中に伝わるよう、MCとして徹することを考えてくださっています。すてきだなと思いました」
番組出演者は「スタッフさんが優しくて新婚さんファミリー最高」とSNSで紹介している。
「ご夫婦との会話がオーディションから番組出場まで続くので、本当に仲良くなります。担当したディレクターは放送後も、ご飯に行きましょうと誘われたりもします。『愛』『男と女』など不変的なテーマを扱う番組ですが、番組の最も根幹にあるテーマは、人と人のコミュニケ―ションなのかもしれません。日本全国の新婚ご夫婦の皆さん。幸せ自慢や不満解消の場として、ぜひ肩の力を抜いて、気軽に予選会に遊びに来てください。新婚さんスタッフがあなたの街にお邪魔します」