ミニバン人気復活のワケ、SUVは頭打ち 「セダンは20代」の異変…最新の中古車市場を分析

売れる車に反映される世相。新型コロナウイルスの感染拡大3年目だった2022年の中古車市場を分析すると、興味深いポイントがいくつも浮上した。一時減少していた「ミニバン」が30代、40代を中心に回復の兆しが見られ、過去に頂点にいながら今や“凋落”が指摘される「セダン」が若者の熱い視線を集めている。新たな時代の“車の楽しみ方”とともに、中古車マーケットの専門家が独自解説で教えてくれた。

中古車市場に訪れた新たな変化を専門家が徹底解説した(写真はイメージ)【写真:写真AC】
中古車市場に訪れた新たな変化を専門家が徹底解説した(写真はイメージ)【写真:写真AC】

70~80年代まではヒエラルキーの最上位にいたセダン 今はSUVの時代到来

 売れる車に反映される世相。新型コロナウイルスの感染拡大3年目だった2022年の中古車市場を分析すると、興味深いポイントがいくつも浮上した。一時減少していた「ミニバン」が30代、40代を中心に回復の兆しが見られ、過去に頂点にいながら今や“凋落”が指摘される「セダン」が若者の熱い視線を集めている。新たな時代の“車の楽しみ方”とともに、中古車マーケットの専門家が独自解説で教えてくれた。(取材・文=吉原知也)

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 リクルート自動車総研の「中古車購入実態調査2022」を基に、日本最大級の中古車情報メディア「カーセンサー」統括編集長で、同総研所長を務める西村泰宏さんが分析した。

 西村さんはまず、日本における車の車種・タイプの歴史についてまとめてくれた。

「セダンは、伝統的でオーソドックスなタイプです。1970~80年代までは『フォーマルで格式高い』車として、ヒエラルキーの最上位にいました。それが、時代とともに徐々に立ち位置や役割が変わってきました。だんだんみんなが日常シーンでも活発に車に乗るようになると、『使いやすさ』『便利さ』が求められるようになります。こうしてミニバンが台頭します。90年代半ばぐらいからはステップワゴンなどが出始めて爆発的にヒットしました。2000年代になると、プリウスが牽引(けんいん)する『燃費のよさ』の概念が浸透します。コンパクトカーが重宝されるようになり、費用が安いうえに性能を上げてきた軽自動車がそこに取って代わるようになります。12、13年頃からは徐々にSUV(スポーツ多目的車)の時代になるわけです。モダンでかっこいいデザインにそれぞれの用途を掛け合わせることができるSUVは、ニーズを飲み込みながら育っている現状だと認識しています」

 同調査で、「直近で購入した中古車のボディタイプ」を見ると、最多の「軽自動車」(36.7%)は前年より0.4ポイント減少。「クロカン/SUV」は17年以降増加傾向にあったが、22年は「10.1%」で頭打ちとなった。対照的に「ミニバン」は、22年は「19.1%」で2番手に付けている。近年の推移を見ると、19年「18.9%」、20年「15.8%」、21年「15.3%」だ。復調が見受けられる。

「家族3世代や友人家族を乗せて休日にミニバンで遊びに行く。そんな定番のスタイルがコロナ禍によって変わりました。そもそも帰省しないというケースも増え、乗車人数の多い仕様のミニバンの需要が減りました。その代わりに、少人数でのドライブやクルマいじりなど個別の活動として楽しむことができるスポーツカー(クーペ・オープン)のニーズが高まった20年、21年の2年になりました。

 22年からはコロナ禍においても人々が外に出るようになり、揺り戻しが起きていると考えています。シェアが戻った要因はもう1つあります。21年末からノア・ヴォクシー、ステップワゴン、シエンタ、セレナといった人気のミニバンが相次いでフルモデルチェンジしました。乗り換えによって旧型の中古車市場流通量が増え、価格も下落して買いやすくなったことも影響しているでしょう。子育て世代の30代、40代が再びミニバンに目を向けるようになりました。

 SUVとの違いについて少し言いますと、ミニバンは人と荷物を多く載せられる実用性がより高いです。SUVはかっこよさが魅力でしょう。ミニバンのスライドドアは子どもが小学校に入るぐらいまでの子育てにはすごく重宝されます。ただ、人それぞれの価値観・好みの違いによるでしょう」

「カーセンサー」統括編集長でリクルート自動車総研所長を務める西村泰宏さん【写真:カーセンサー提供】
「カーセンサー」統括編集長でリクルート自動車総研所長を務める西村泰宏さん【写真:カーセンサー提供】

エンジンタイプは「ガソリンエンジン」が70.5%で最も高いが年々減少傾向に

 ここで目を引くのは、年齢層別に見たセダンのデータだ。60代の「13.3%」は2番手で、50代は「10.5%」、40代は「5.0%」で最小、30代は「7.8%」。そして、最多は20代の「13.4%」だ。若い頃から親しんできた50代、60代に加えて、20代が突出している。

「全体を見ると、9.7%でついに10ポイントを切りました。ただ、20代に支持を集めているんです。落ち目ではありますが、台数が少なくなるだけに、他の人との違いを出すことができます。若者は『人と違う』こと、個性を出すことを求める傾向にあります。カクカクしたデザインのセダンは、20代には珍しい車に映っています。今やタクシーもバンタイプが主流になり始めている時代ですから。ポジティブに褒める言葉として『いなたい』という表現で形容していたりもします。言わば、“あまのじゃく消費”を取り込んでいるのでしょうね」。時代が一周も二周も回って、セダンが脚光を浴びているというから驚きだ。

「直近で購入した中古車のエンジンタイプ」は、「ガソリンエンジン」が70.5%で最も高いが、年々減少傾向にある。「ハイブリッド」が過去7年間で最高値の「19.3%」まで上昇している。ハイブリッドとひと口に言っても、駆動システムの種類がいくつもある。西村さんは「エンジンのタイプを取っても、本当に多様で、これだけ選択肢が多く、自由に車を選べる時代はこれまでになかったと思います」と、前向きに捉える。

 2023年以降の新時代の車の楽しみ方とは。「自動車の技術・文化・乗り方がどんどん新しくなっていって、専門家の私ですら、追いつくのが大変なぐらいです。もちろん、伝統的な文化の継承は大事なことです。一方で、最近新しいサービスが出てきています。例えば、『8人で1台の車のオーナーになる』というものです。3000万円のフェラーリは1人では買えないけど、“8分の1”オーナーになると、1人当たり375万円ぐらい。保管・メンテナンスは業者に任せます。実際の所有名義はローン会社で、1人当たりの利用日数は限られるかもしれませんが、“フェラーリを持っている”という前向きな気持ちになれます。一生手が届かなくて買えない、ではなく、実際に乗ることができます。

 最近だと電気自動車(EV)のサブスクリプションサービスも登場しています。サブスクを活用すれば、1年間だけ試しにEVに乗ってみよう、暖かい時期だけオープン・スポーツカーに乗ってみよう、なんて楽しみ方もできます。『車はこう楽しんで、オーナーはこうあるべき』といった概念にとらわれないで、多様化した関わり方を楽しむことも、これからの車との付き合い方なのかなと思っています」としている。

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