【電波生活】『ビルぶら!レトロ探訪』意外な苦労 番組P「ロケハンで怪しい人物と間違われます」

注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はBSフジの『ビルぶら!レトロ探訪』(火曜、午後10時)。俳優・梶原善が、日本経済を支え、時にはおやじ達を優しく包み込んできた昭和レトロなビルを訪ね歩く番組。登場する昭和のビル内には歴史を感じさせるさまざまな店舗があり、通い続ける常連客の思いにも触れることができる。行ったことはあっても用のないフロアは未知の世界。意外なワンダーランドだったりもする。プロデューサーの上野潤也氏に番組誕生の経緯や梶原の起用理由、また制作陣の意外な苦労などを取材した。

『ビルぶら!レトロ探訪』に出演する梶原善【写真:(C)BSフジ】
『ビルぶら!レトロ探訪』に出演する梶原善【写真:(C)BSフジ】

梶原善が昭和レトロなビル内をぶらぶら、新鮮な縦移動

 注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はBSフジの『ビルぶら!レトロ探訪』(火曜、午後10時)。俳優・梶原善が、日本経済を支え、時にはおやじ達を優しく包み込んできた昭和レトロなビルを訪ね歩く番組。登場する昭和のビル内には歴史を感じさせるさまざまな店舗があり、通い続ける常連客の思いにも触れることができる。行ったことはあっても用のないフロアは未知の世界。意外なワンダーランドだったりもする。プロデューサーの上野潤也氏に番組誕生の経緯や梶原の起用理由、また制作陣の意外な苦労などを取材した。(取材・文=中野由喜)

 街の飲食店を訪ね歩く番組はよくあるが、なぜビルなのか。

「私の住む街もそうですが、昔ながらの駅前の風景がどんどん再開発されるのを目の当たりにし、ビルが無くなっていくのが惜しいと思っていました。ただ建築学的な番組を作っても興味を持つ人は少ないと思いました。そこで、中に入ってみたいけど、ちょっと怖くて入れないようなビル内の店舗やそのオーナー、あるいは常連客はどういう人かをメインにしたら面白そうと思ったのが企画の種です。企画を出してから気付いたのですが、街をぶらぶらする番組はたくさんありますが、縦にぶらぶらする番組はなかったなと。ビルぶらというジャンルは新しいと思います」

 これまでニュー新橋ビルや東京交通会館などが紹介された。1回の放送で1つのビル内のフロアを移動する。たしかに縦に移動する番組は新鮮。入ったことがあるビルでも人によっては用がなくて足を踏み入れないフロアもある。そこにカメラが入り意外な発見をするのは魅力。続いて梶原善の起用理由も聞いてみた。

「誰を起用するかを考えたとき、街歩きの番組に出ていそうな人など既定路線にはまっておらず、おやじの代表にふさわしい人と思いました。番組がその人と一緒に成長していけたらいいなと。正直に言いますと、『鎌倉殿の13人』の影響を受けました。善さんのことを詳しく知らなかったのですが、善児を演じているあの俳優は誰だ、と気になり、そんなときに事務所の方からも勧められました。『鎌倉殿の13人』が追い風になったのは間違いないです」

 梶原が大河ドラマで演じた善児は“暗殺者”として話題となり注目を集めた。タイムリーな起用。梶原の魅力を聞いてみた。

「ロケに行くと『善児』と街の人に声をかけられています。『鎌倉殿の13人』を見ていますとも。そうやって善さんが一般の人に溶け込んでいくのを目の当たりにしています。僕ら自身も『鎌倉殿の13人』には助けられています(笑)。最初は慣れていないせいか、一般の方の間に入っていくのを躊躇(ちゅうちょ)することも。それが逆に人柄を表していると感じました。意外とシャイ。一般の方が盛り上がっているところに我々スタッフが『入って行きましょう』と勧めると、『いやいや、お邪魔でしょ』と言うこともありました。でも今は、相手の思いをくみ取ろうとする熱量、熱意で人の輪に入ってくれようとしています」

 梶原の現場のエピソードはまだある。

「酔っ払いにはデリケートです。気持ちよく飲んでいる人たちがいると、そこにカメラがずけずけ入ることに引け目を感じているらしいです。善さんは『ちゃんとお断りしてからね』と言います。街の人に声掛けするにも気遣いの人。あとは文房具が大好きで、やたらと食いつきます。シャープペンシルとボールペンが交互に出る懐かしい商品を発見したときはすごく感動していました」

『ビルぶら!レトロ探訪』のロゴマーク【写真:(C)BSフジ】
『ビルぶら!レトロ探訪』のロゴマーク【写真:(C)BSフジ】

 そもそも訪ねるビルをどう選んでいるのか。尋ねるとスタッフの苦労も知ることができた。

「まず外観と竣工何年か、あと大事なのは入っている店舗です。雑居ビルは面白いオーナーが多いです。店主がどんな人で、常連がどんな人かで選んでいます。偶然、すごいバックストーリーを抱えていることもあったりします。そのためにディレクターたちはロケハンで足しげくビルに通っています。面白いオーナー、常連の情報を聞き出すことに時間をかけます。ロケは1日ですが、ビル1つのロケハンで2週間毎日通って店主を口説き、取材の協力を得たディレクターもいます。店主から面白い常連客の情報を得ると、その人と会うために2日に1回のペースで1か月店に通ったディレクターも。ロケで仕入れた情報の確認にロケ後に再び現場に行くこともあります。この番組すごく手間がかかっているんです」

 もう一つ意外な苦労も。

「ロケハンでよく怪しい人物と間違われます。もちろん入ってはいけないところに入るわけではないですが、ただ僕らがそのビルの関係者ではないということで、警備員の方に怪しい人物と思われて呼び止められます。僕もロケハンの時にうろうろしていたら監視カメラに映っていたからと呼び止められました。他のディレクターも相当、経験しています」

 昭和レトロなビルを訪ねて気付いたことがあるそう。

「最盛期はにぎわっていただろうなと思うビルが、がらんどうになっていることがあります。そこで多いのは貸し会議室になっているパターン。多いですね。広いフロアに店舗が2、3軒しかないケースもありますが、それもある種の切なさというか、昭和のビルがたどっている事実。できるだけ紹介しようと心掛けています」

 番組でこれまで紹介されたのは関東のビル中心。上野氏に今後の抱負を聞くと「関西に僕らが行きたくなる“おやじビル”がいっぱい生き残っているようです」と、関西進出願望を口にした。昭和レトロなビルは再開発でどんどん減っていくが、番組を見ていると、おやじが楽しめる時間と空間をもう少しの間、提供してほしいと願わずにはいられない。



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