【映画とプロレス #11】「ファイティング・ファミリー」が生まれた街、英国ノリッジを探訪
「ファイティング・ファミリー」(19年)は、英国からWWEに入団した女子レスラー、ペイジとその家族を描いた実話である。物語の舞台は英国東部の地方都市ノリッジ。映画では実際にこの街でロケをおこない、それはまたペイジ一家、ナイト・ファミリーゆかりの場所にもなっている。筆者は今年1月、ノリッジへ行き、ペイジの家族を訪ねてみた。なぜなら筆者は彼女の両親リッキー・ナイト&サラヤ・ナイトと20年以上前から親交があり、彼らのプロレスを取材もした。しかも映画は想像を遥かに超えるプロレス映画の新たなる傑作になっていた。“ザ・ロック"ドウェイン・ジョンソンが惚れ込んで自らプロデュースした作品だ。彼らのようなローカルどインディーの物語がハリウッドで映画化され、しかも最高におもしろい。こんな奇跡が世の中にあるなんて! 奇跡の連続を確認するためにも、これはもう現場へ行くしかない!
英国ノリッジに向かい「ファイティング・ファミリー」の舞台となったスポットを探訪
「ファイティング・ファミリー」(19年)は、英国からWWEに入団した女子レスラー、ペイジとその家族を描いた実話である。物語の舞台は英国東部の地方都市ノリッジ。映画では実際にこの街でロケをおこない、それはまたペイジ一家、ナイト・ファミリーゆかりの場所にもなっている。筆者は今年1月、ノリッジへ行き、ペイジの家族を訪ねてみた。なぜなら筆者は彼女の両親リッキー・ナイト&サラヤ・ナイトと20年以上前から親交があり、彼らのプロレスを取材もした。しかも映画は想像を遥かに超えるプロレス映画の新たなる傑作になっていた。“ザ・ロック”ドウェイン・ジョンソンが惚れ込んで自らプロデュースした作品だ。彼らのようなローカルどインディーの物語がハリウッドで映画化され、しかも最高におもしろい。こんな奇跡が世の中にあるなんて! 奇跡の連続を確認するためにも、これはもう現場へ行くしかない!
ノリッジへはロンドンのリバプール・ストリート駅から電車で2時間。そのつもりで出かけたのだが、掲示板を見てもノリッジ行きの表示はどこにも出ていない。聞いてみたところ、「〇番線に行け」という。そこはマークス・テイ行きのプラットホームで、途中停車駅にもノリッジは表示されていなかった。再び聞いてみると、「マークス・テイで乗り換えろ」とのこと。終点に着くと、駅員が乗客に指示を出している。「バスに乗れ」というのだ。「ノリッジへは?」「イプスウィッチで乗り換えて」。行き先別にバス(すべて2階建てのダブルデッカー)が出ており、乗客全員を乗せたことが確認されると次々とマークス・テイをあとにした。イプスウィッチに到着し、すぐにノリッジ行きの時間を確認。ところが数分前に出てしまったようで、次発までは1時間待たなければならない。周囲にはなにもなく、ただひたすら待合室で時間を潰すばかりだ。
それでもなんとかノリッジに到着。2時間のつもりでいたら、結局4時間近くかかってしまった。日曜で運休、あるいは工事でもあったのか。この国にはありがちながら、表示もアナウンスもまったくなかったのは解せない。ちなみに、帰路はノリッジ・ロンドン間が普通に運行されていた。
ペイジは屋外マーケットでプロレス興行のビラ配り
ノリッジに到着し、いよいよロケ地巡りである。ファミリーに会った話は近日の「映画とプロレス」別項に譲るとして、まずは映画の序盤でペイジがビラ配りをした場所に行ってみた。
ところどころに中世の面影が残るノリッジ。日本人からすると、まるで異世界に迷い込んだような錯覚に陥る。街の中心には、ノリッジを象徴する英国最大規模の屋外マーケットがある。ここでペイジはプロレス興行のビラを配っていた。WAW(ワールド・アソシエーション・オブ・レスリング)は家族経営のプロレス団体。両親をはじめ、2人の兄もプロレスラーだ。ペイジことサラヤ・ナイトは、リング上ではブリタニー・ナイトを名乗り、団体の雑務も手伝っていた。
「今夜プロレスがあるから見に来てね!」「私も出るよ!」。ビラを受け取る人、無視する人。この光景は日本と同じだ。ペイジは同年代の女の子たちにも声をかける。すると彼女たちは「プロレスぅ~? キモい~」とかなんとか言って露骨にイヤそうな表情を浮かべるのだ。それでもペイジは「7時開場よ!」と、立ち去る彼女たちの背中に笑顔で声をかける。この場面の撮影が、まさにこの場所でおこなわれた。それはすなわち、ペイジが実際にビラ配りをしていたところでもあるのだ。ペイジの立場や、この街におけるプロレスの地位が一瞬で理解できる、素晴らしいシーンである。
場所を確認すると、マーケットの中に入ってみた。通りに面した店には活気があるのだが、屋根のある内部では空き家になっているテナントも多い。これが街の実態か。人口17万人のノリッジは決して大都市ではなく商圏も狭い。こんな静かな田舎町にプロレス団体があることじたいが奇跡的なのだ。