【RIZIN】スダリオ剛、力士に格闘家転身を勧めないワケ「プライドが高すぎてなじめない」
格闘技イベント「湘南美容クリニック presents RIZIN.40」(ABEMA PPVで全試合を完全生中継)は大みそかにさいたまスーパーアリーナで開催される。「Bellator」との対抗戦など格闘技ファン垂涎のカードがそろった今大会。ENCOUNTでは注目への出場選手へのインタビューを実施した。今回はジュニア・タファ(オーストラリア)と対戦するスダリオ剛(HI ROLLERS ENTERTAINMENT/ PUREBRED)に大みそかに選ばれた意味や相撲から格闘家への転身について語ってもらった。
“相撲出身”ではなく“スダリオ剛”として臨む2度目の大みそか
格闘技イベント「湘南美容クリニック presents RIZIN.40」(ABEMA PPVで全試合を完全生中継)は大みそかにさいたまスーパーアリーナで開催される。「Bellator」との対抗戦など格闘技ファン垂涎のカードがそろった今大会。ENCOUNTでは注目への出場選手へのインタビューを実施した。今回はジュニア・タファ(オーストラリア)と対戦するスダリオ剛(HI ROLLERS ENTERTAINMENT/ PUREBRED)に大みそかに選ばれた意味や相撲から格闘家への転身について語ってもらった。(取材・文=島田将斗)
――2戦連続で外国人選手というのはどのような心境なのでしょうか。
「こうじゃなくちゃなという気持ちですね。少しずつ実力のある選手とやらせてもらえているので本当にうれしいです」
――公開練習では「自分は“まだ”経験を積んでいかないといけない」という話もありました。なぜそう思うのでしょうか。
「冷静に考えたら僕、デビューしてまだ丸2年なんですよ。デビュー戦が2020年の9月27日に決まって、3週間くらいしかその時は練習していなかったんです。だから本当に丸2年しかまだやっていないんですよ。そう考えるともう少し温めたい。
しっかりトレーニングを積んで、海外にも練習に行って試合に出てレベルアップしてからがいいのかなと思いますね。まだ7戦だし、(Bellatorとの対抗戦に)選ばれなくても当然。次、そういう大会があったときには間違いなく自分は選ばれる自信があります」
――今年はさまざまな選手が世界と戦いたいと口にしました。どう思いましたか。
「日本国内でやってる選手はそうでしたよね。井の中の蛙じゃないですけれど、正直小さい世界で抜けていたとしても、外に出ればまた違う。海外で練習をして、揉まれて自信があるなら口にしても良いと思うんです。ただ言っているだけというのはファンに変な期待を持たせてしまう発言だし、自分には嘘をつけない。
それが結果として、行動として出てると思います。行けるチャンスはあっても、ものにしないというのは、自信がないからだと思います」
―― 海外の練習はいかがでしたか。
「やれる気しかないです。海外の人たちに驚かれる部分もあります。対等に戦える部分もあるし、足りない部分もありました。足りない部分は時間をかけて身につける部分ではある。ストライキング以外の部分でも、テイクダウンディフェンスの部分も自信になっていますね。シビサイ戦なんてディフェンスの仕方なんて全く知らなかったのでね(笑)。打撃を生かすために寝技も組みもやっています。
めちゃくちゃ勉強になるんですよ。いろんな人種の人と練習をして、こういう特性があるんだとか、考えながら練習をしていますね。来年も年明けから行きます。国内でもやれることをやりつつ、海外でも練習。インプットとアウトプットを繰り返しているイメージです」
――休みはしっかりと取っているのでしょうか。
「試合後の1~2週間ですね。体を動さないと不安なんですよね。今年の3月にハネムーンでハワイに10日間行ったんです。その最中にもUFCジムに行って練習。妻には怒られましたけどね(笑)。トレーニングをやらないと気持ち悪いというか、また逆戻りしてしまいそうで、コンディションを落とさずにずっとやっていますね。
やらないとストレスが溜まって、結婚生活でもケンカが増えてしまうんです。気持ちよくしていないと何も楽しめない。自分のやりたいことを済ませてから、観光を楽しんでいました。空いてる期間があったらパワーアップしたいと常に思っています」
“美人妻”へも感謝「良い方向に自分を導いてくれる唯一無二の存在」
――試合をしているスダリオ選手の“冷静さ”もここ最近目立ってきました。自覚はしていますか。
「正直、テンションが上がりすぎてしまうことはないですね。リングに上がったら2人だけの空間。相手しか見ない。目的があって、それを遂行するという気持ちが強いので、冷静と言われればそうなのかもしれないですね」
――“乱闘騒ぎ”もあった宮本和志戦のイメージも世間では強いと思います。なぜメンタルの部分は変化していったのでしょうか。
「ダメなことはダメだし。そこは成長しないで何度も同じことをしたら救いようがないバカで終わってしまう。後は自分1人でやっているわけじゃない。妻、応援してくれるファンの気持ちを考えたら、そこは変える努力をしましたね」
――そういった部分は試合の中でも変わってきているのでしょうか。
「状況把握はできないとダメ。攻めるべきとそうでないときの見極めも意識していました。そうしたら自然と変わってきたのかなと思います。相手が緊張していたら分かるんですよ。昨年のSAINTも仕草とか表情とか読み取りやすかった。ポーカーフェイスにしてる外国人選手もいますけれど、緊張しているかは分かりますね」
――相撲ファンへの思いを公開練習では口にもしていました。どんな部分を力士時代からのファン。そして力士に見てもらいたいですか。
「力士には力士の格闘家には格闘家のプライドがあります。力士出身だったとしてもなじむことができれば(MMAでも)通用するというのは自分を見てくれればお相撲さんも分かると思います。ファンは相撲時代の良いときも悪いときも見ていましたし、今の姿も知ってくれていると思う。ただリングの上で戦っている姿を見てもらいたいですね」
――「なじむ」という言葉がありました。力士から格闘家に転身してほしい気持ちはありますか。
「全く思わないです(笑)。正直、運動神経が良くて番付も上の方にいる力士は逆にプライドが高すぎてしまうんです。そういう人はなじめないんですよね。かと言って(番付が)下の人がなじめるかといったらそうでもない。僕は辞め方は悪かったですけれど、本当に良い時期に、絶好なタイミングだったと思うんです。変なプライドもなかったですから。
大関とか横綱出身者は今までいましたけれど、格闘技の世界に来たらゼロからのスタート。でもそれを認めたくないから『ゼロからではない』『分かってるよ』という気持ちが前に出てしまうので、たぶん新しい技とかを覚えられない。身につけることはできないと思います。難しいところですけれどね」
――今年は“喧嘩自慢”がはやりました。どのように見ていましたか。
「あれが格闘技と思われてしまうのはちょっと嫌。良い意味でそれを利用して格闘ブームが起きれば良いと思います。ただ出ている人たちには勘違いしてほしくない。今、プロでやっている人たちの中には更生して、格闘技に真摯(しんし)に向き合っている人もいる。
でも“喧嘩自慢”の団体のオーディションを見ていると、そのままの自分。むしろそれを大きく見せて、エスカレートしている。より悪い方向にいきやすいというのは思いますね。椅子で殴ってしまったり……。エンターテインメントとしてだったらすごく良い。今はSNSが普及して、良くも悪くもという時代。最初にツイッターとかインスタグラムが出てきたときは良い方向に働いていたと思う。でも今は“数字”が見られすぎて悪い方向に向かっていますよね。ああいうものが流行ったということは『格闘技はどうなんだろう?』と思ってみる人も少なからずいると思うので、そういう意味では2割は良かったと思います」
――格闘技の世界へ後押ししてくれた“美人”と話題の奥様はどういう存在なのでしょうか。
「当たり前、いなくてはいけない存在です。今もありますけれど、良くない部分がたくさんあって、そこをけんかしながらでも軌道修正してくれる。その部分が表に出てしまう前に妻が言ってくれて冷静になる。良い方向に自分を導いてくれる唯一無二の存在ですね」
――2度目の大みそかです。2020年と選ばれた“意味”が違うと思いますがどう考えていますか。
「一昨年は“相撲出身”がどういう戦い方をするという意味で求められたと思います。今は『スダリオ』という目で見られる。ストライカーの外国人ファイターとどう戦うのかとみんなが見てくれる。そこは見せていかないといけないなと思います」