前例ない有名女優の1級建築士試験合格…田中道子の素顔と突破力【記者コラム】

女優の田中道子が、33歳にして1級建築士の資格試験に合格した。27日夜、所属事務所の公式サイトで発表した。現役の有名女優が同試験に合格した前例はなく、突破力のある田中だから「なせる技」だった。2級建築士の取得は大学卒業の翌年。その後、建設会社への就職活動中、現在の所属事務所に“条件付き”でスカウトされ、家出同然で実家を飛び出していた。彼女の持つ「ド根性」を紹介する。

田中道子【写真:ENCOUNT編集部】
田中道子【写真:ENCOUNT編集部】

二刀流はあるのか…今後は「事務所と相談しながら」

 女優の田中道子が、33歳にして1級建築士の資格試験に合格した。27日夜、所属事務所の公式サイトで発表した。現役の有名女優が同試験に合格した前例はなく、突破力のある田中だから「なせる技」だった。2級建築士の取得は大学卒業の翌年。その後、建設会社への就職活動中、現在の所属事務所に“条件付き”でスカウトされ、家出同然で実家を飛び出していた。彼女の持つ「ド根性」を紹介する。(取材・文=ENCOUNT編集部ディレクター・柳田通斉)

 芸の道を歩みながら、難関突破。並大抵のことではなかったと思う。だが、このニュースを聞いて「彼女ならでは」と思えた。以前、本人から女優になるまでの過程を聞いていたからだ。

 田中は浜松市で生まれ、両親、6歳上の兄、5歳上の姉がいる温かい家族で育った。中学まではテニス部で活発だったが、進学した浜松市立高が強豪校だったため、吹奏楽部へ。そこからインドア派になり、静岡文化芸術大では都市デザインを学んだ。卒業後に2級建築士の試験に合格。地元が好きで、静岡県内で建築士として働くことを第1志望にしつつ、都内にある建設会社の就職説明会に参加していた。その後、大学在学中に出場したミス・ユニバース・ジャパンで知り合ったオスカープロモーション社員にあいさつへ同社を訪れた際、廊下で社長(当時)とすれ違ったことで、進路が急転した。

「君、女優になる気があるなら、来週から上京してレッスンを受けなさい」

 憧れはあったが、「無理」と決めつけていた世界。就職内定を目前にしながら、田中は直感で「はい。必ず静岡から出てきます」と返答していた。

 しかし、教師で真面目に生きてきた父親からは「芸能界に入ると地獄に落とされるぞ」と大反対された。連日、朝まで話し合ったが、首を縦に振ってもらえないままタイムリミット。父が仕事へ向かった後、田中は涙する母を振り切り、スーツケース1つを持って家を出ていったという。

 上京後は、線路沿いのシェアハウスでタイ人女性と生活。始発電車の音で目が覚め、モデルの仕事をしながら、演技レッスンを受け続けた。実家に電話をしても、父親は出てくれなかった。だが、家出から6か月後、ミスワールド日本代表に選出されて状況が一変。父親は誰よりも喜び、世界大会にも駆け付けたという。

 それから約3年後、田中は約50人がエントリーする事務所内の「女優審査会」で認められ、正式に女優活動をスタート。16年10月期のテレビ朝日系「ドクターX~外科医・大門未知子~」では、大門未知子(米倉涼子)の天敵である蛭間病院長(西田敏行)の秘書役を好演し、今に至っている。

 当時のマネジャーによると、その後も田中は「何かで役に立つかも」とデザイン、絵画を継続。絵筆を持つと、すさまじいほどの集中力を発揮していたという。約3年前からは「いつか一級建築士になりたい」と言い、徐々に教材を集めていた。

 今回、所属事務所の公式サイトで田中は「二級取得から約 8年ぶりの猛勉強」とコメントしており、約2年前から本格的な試験勉強に入ったようだ。チャレンジの背景には、2020年から建築士試験の受験要件が変更。必要だった実務経験が、「試験合格後も含め、免許登録までに積んでいれば良い」とされたことがあったと思われる。だが、ブランクは大きく、田中は「理解が追いつかず悔し涙を流す事も多くありました」と振り返ってもいる。

 田中は20年以降も、ほぼ毎クールで連続ドラマに出演し、バラエティー番組にも出演してきた。そして、1次試験をクリアし、2次試験が近づいていた今年9月には、ドラマ、バラエティーに加えて初主演舞台「赤羽焼肉劇場」を完走。田中は当時の多忙さをインスタグラムで、「本当に目の回る日々…スパルタな学校の先生の指導のもと、泣きながら授業を受ける事も多く…何度も心が折れました」と表現している。

 そんな苦難も乗り越え、合格率9.9%の試験を突破。どのように時間をやりくりしていたかは興味深く、あらためて本人を取材したい。そして、もう一つ気になる「今後」については、「事務所と相談しながらゆっくり考えたいと思います」「建築の知識を広げていき、いつかは建築界に携わったり」などとコメントしている。確かに、これだけの能力を生かさないともったいない。先日、片瀬那奈が会社員を兼ねることで話題になったが、田中にも女優を続けながら、建設会社で活躍する姿を期待してしまう。「そんなの無理」の声も上がるだろうが、持ち前のド根性で、田中ならではの「二刀流」を築いてほしい。

□田中道子(たなか・みちこ)1989年(平元)8月24日、浜松市生まれ。静岡文化芸術大卒業。在学中、09年ミス浜松グランプリ、11年ミス・ユニバース・ジャパン3位、13年ミス・ワールド日本代表。16年10月期のテレビ朝日系「ドクターX~外科医・大門未知子~」を皮切りに多数の連続ドラマに起用。今年は、テレビ朝日系「六本木クラス」、日本テレビ系「霊媒探偵・城塚翡翠」に出演している。172センチ、血液型O。顔の小ささと高身長で「9頭身美女」と称されてきた。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください