「1・1」グレート・ムタvs中邑真輔、“奇跡の対決”が持つ真の意味 ノアのトップが激白

2022年は、プロレス史上初となる元日の日本武道館大会に始まり、1・8横浜アリーナでの新日本プロレスとの全面対抗戦、下半期は武藤敬司の引退ロードが始まるなど、多くの話題を提供してきたプロレスリング・ノア。

元日に実現した奇跡の対決
元日に実現した奇跡の対決

サイバーファイト取締役の武田有弘氏に聞く、2023年の展望、課題

 2022年は、プロレス史上初となる元日の日本武道館大会に始まり、1・8横浜アリーナでの新日本プロレスとの全面対抗戦、下半期は武藤敬司の引退ロードが始まるなど、多くの話題を提供してきたプロレスリング・ノア。

 年が明けてからも1・1日本武道館、1・22横浜アリーナ、そして武藤敬司引退興行となる2・21東京ドームとビッグマッチが続いていく中、ノアを統括するサイバーファイト取締役の武田有弘氏に2022年のノアの総括と、武藤引退に向けた展望と課題を語ってもらった。(取材・文=堀江ガンツ)

 ◇ ◇ ◇

――2022年のノアはプロレス史上初となる元日の日本武道館大会で始まりましたが、この1年を振り返ってみていかがですか。

「いろいろありましたが、6・12『サイバーファイトフェスティバル2022』で武藤さんが引退を発表した後は、ノア全体の方向性が武藤さんの引退ロードにシフトチェンジした感じがあって。それは年が明けてからも1・1日本武道館、1・22横浜アリーナ、そして最後の2・21東京ドームと続くので、それが終わらないことには1年が終わる感じがしないというのが、正直なところです。そんな中でも今年を振り返ると、コロナの観客制限がなくなり、お客さんに会場へ戻ってきてもらうことに一生懸命注力しながら、市場も広げていこうとした1年でしたね」

――ノアという団体以上に武藤さんの引退に話題が集中したことについてはいかがですか。

「まだノアって、そこまで確固たるブランディングが決まっていないので、武藤さん引退の話題をうまく利用しつつ、まだまだ成長過程ということでいいんじゃないかなと。拳王選手なんかは、その辺の貪欲さや責任感が発言にも現れているし、清宮選手も武藤さんから受け継いだものを活かして、大きくなっているところなので」

――ノアとしても武藤さんの引退をひとつの大きなきっかけにしたいですよね。

「これは武藤さんとも話をしているのですが、武藤敬司引退試合を、ただ武藤さん個人の引退や、ノアの東京ドーム大会ということだけで終わらせてはいけないと思うんですよ。これをきっかけに、何かプロレス界の市場が大きくなり、発展していくものを残したい。

 今ってWWEのトップ選手が年俸10億円稼いでいたり、UFCのトップが1試合で何億円ももらっていたり、海外サッカーやプロ野球メジャーリーグも桁が違う額を稼ぎ出している時代なので、日本のプロレスも今後そういう世界にしていかないと市場が広がらない。武藤さんとも『プロレス界の10年後を見据えたような引退試合を作りたいですね』ということを話しているんです」

――日本のプロレス界全体のビジネスが飛躍していくようなきっかけを作りたい、と。

「そのためには興行収益だけでは難しいから、日本でいま一番旬なメディアであるABEMAとちゃんとお金になるようなコンテンツを作ろうと。メディアをうまく使わないと市場は大きくならないし、プロレスラーでみんながびっくりするぐらいの年俸を稼ぐ選手が出てきませんから。そのためには海外や遠方の人にもしっかりお金を払って観ていただける形を作って、新しい習慣を作りたい。そういう意味で、日本のプロレス界の未来にとっても重要な東京ドーム大会になるんじゃないかと思いますね。格闘技界に目を向けると、那須川天心vs武尊のPPVがびっくりするぐらいの売り上げがあって、そこからRIZINもPPVにより力を入れるようになったり、そういう流れというのは必ずあると思うので」

――天心vs武尊と同じように、武藤の引退試合もプロレス界全体の起爆剤になるようなものにしたい、と。

「そうですね。プロレス界はそういった進化がこれまで遅かったので。長州力vs大仁田厚の電流爆破マッチ(2000年7月30日、横浜アリーナ)をスカパー!でPPVをやった頃から、もっとしっかり市場を広げるようなビジネスの形を作れていれば良かったんですけど。ただ、当時はスカパー!に契約していなければPPVを買うことができませんでしたが、今はスマホひとつあればできますから。そういったツールの進化をちゃんと活用していきたいです」

インタビューに応じた武田有弘氏
インタビューに応じた武田有弘氏

海外へのアピールに成功した「グレート・ムタvs.SHINSUKE NAKAMURA」

――海外も含めた幅広い層へのアピールという意味では、今度の1・1日本武道館大会でグレート・ムタvs.SHINSUKE NAKAMURAというカードが組めたことは大きいんじゃないですか。

「これはかなり大きいと思いますよ。これまでノアをあまり観てなかったプロレスファンにも当然届く話題だし。あとは海外に行って『日本のプロレス』っていうと、ほとんど新日本プロレスしか知らないんです。でも、ムタvs.SHINSUKE NAKAMURAが決まってから、ノア自体の知名度もかなり上がったと思います」

――WWEのメインロースターが他団体のビッグマッチに出るなんて、これまでなかったわけですもんね。1・1日本武道館大会を無料放送するABEMAの期待も大きいんじゃないですか。

「ABEMAでは今年、天心vs武尊で大きな話題になりましたけど、プロレスもABEMAでやる時は大きな話題になるものを作っていこうという考えが根本にあるんですよ。ただ、プロレスは格闘技とはちょっと違うビジネススキームで、1発ドカーンと大きくというより、ストーリーを追っていく側面が強い。ただ、このカードに関しては、単発で大きな話題を呼んでいるので、当日の視聴者数の記録が楽しみですね」

――あとは武藤さん引退後を見据えて、元日の武道館、横浜アリーナ、東京ドームで若い選手がどれだけアピールできるかが重要になってきますよね。

「そこを問われると思います。今年の1・8横浜アリーナでやった新日本との対抗戦でも、若い選手たちは新日本との市場の差や、レスラーとしての華の差なんかをみんな思い知ったと思うんです。正直、華やかさ、オーラ、佇まいすべて完敗していたと思うので。ただ、みんな思い知ったことで、ここ1年でまた加速度的に成長していると思います。急に変わるものではないですけど、確実に未来に向かっていると思うので、これから続くビッグマッチでも自分を大いにアピールしてもらいたいですね」

――2・21東京ドームの前には、2・12エディオンアリーナ大阪第1競技場大会も組まれてます。これは武藤さんが出場しないビッグマッチということで、武藤さん引退後の試金石となる大事な大会ですよね。

「本当に重要です。武藤さんに頼らず、純血メンバーでエディオン第1をこなして、武藤さんに『僕たちがしっかりやっていくんで、安心して引退してください』って言える大会にしなきゃいけないですから」

――大阪大会の翌週が2・21東京ドームですもんね。

武田「だからエディオン第1、東京ドームとそれぞれテーマは違いますが、未来につながるものにしたいですね。とくに武藤さんは、ただ自分が引退しましたじゃ終わらない人ですから。リング上の引退試合も素晴らしいものになると思いますが、僕ら運営側もプロレスビジネスの新しい形を示して、10年後には日本国内で一桁違う市場ができて、トップレスラーはWWEや海外のトップレスラーに負けないギャラがもらえるようになる、そんなきっかけとなる大会にしたいです」

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堀江ガンツ

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