ドラケン、志村けんさん演じた山田裕貴の役作り デビュー以来「演じると思わない」を意識

「『夜、鳥たちが啼く』(公開中)を代表作にしたい」と語る俳優の山田裕貴(32)。本作では、作家として売れず、私生活でも恋人や他人とうまく人間関係を築けない主人公の慎一を好演した。脇役から主演まで、明暗さまざまな役を演じてきたが、役作りの秘密とは?

役作りについて語った山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】
役作りについて語った山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】

共演5回目の松本まりかは「根本が多分似ている」

「『夜、鳥たちが啼く』(公開中)を代表作にしたい」と語る俳優の山田裕貴(32)。本作では、作家として売れず、私生活でも恋人や他人とうまく人間関係を築けない主人公の慎一を好演した。脇役から主演まで、明暗さまざまな役を演じてきたが、役作りの秘密とは?(取材・文=平辻哲也)

 山田が意識しているのは、「演じると思わないこと」だという。「演じる前はロジカルな面を考えることもありますが、今あるシーンの場所に自然にいよう、そこに映っているだけで、本当にいる人に見えるようにしようというのはデビュー以来、ずっと追い求めています。唯一あったのは、『慎一だったら、ちょっと太っていても、いいかな』という見栄え的なところくらいです」。

 最新作「夜、鳥たちが啼く」は、売れないことに苦しみ、人間関係もうまくいかない作家・慎一がふとしたことから友人の元妻(松本まりか)とその息子アキラ(森優理斗)と半同居生活を送るうちに新たな一歩を踏み出す人間ドラマ。

 子役とのシーンにはほっとさせられる。どんなベテランでも子役の演技にはかなわないと言われるが、山田は普通でいられたという。

「セリフがなんでこんなに自然と出てくるんだろうと自分でも不思議な感覚でした。志村さんのドラマ(『志村けんとドリフの大爆笑物語』)をやっていたときは長尺のコントなどセリフを覚えるのに必死で、何回も擦り合わせして、練習をしていました。何回、台本を開いたんだろうというくらいだったけども、今回は役作りみたいなものはあまりなかった」と振り返る。

 監督は長年、ピンク映画で活躍し、2020年に一般映画「アルプススタンドのはしの方」がミニシアター系で異例の大ヒットとなり、以来、「愛なのに」「女子高生に殺されたい」「ビリーバーズ」など作品が相次ぐ城定秀夫氏。

「城定さんは、ディスカッションはせず、現場の空気を、空気のまま撮ってくれる人で、やりやすかった。僕はあまりこの監督や脚本家さんと組みたいという欲はないのですが、『この方とはまたやりたい』と思いました。こんなふうに思ったのはとても珍しいです」と振り返る。

 劇中ではワンシーンワンカットのような長回しが多い。慎一が感情にまかせて、スーパーマーケットの店員を殴りに行くシーンがあるが、一発勝負のライブのような感覚で引き込まれる。

「一発OKに見えるかもしれませんが、リハを3回やって、本番でも1回目はダメだったんです。リハでは頭をつかって、流れを覚えるんですけど、本番では全部忘れて、本気でやっているから。その一方で、自分が相手の胸ぐらをつかんだら、カメラマンに向く方に持ってこなきゃ、と計算をしながらやっていました」

 次第に慎一が愛を感じていくヒロイン・裕子役の松本まりか(38)とは「ホリデイラブ」(2018年)を始め5度目の共演。息のあった演技を見せる。

「何度か共演があるのでやりやすいという言葉で言い表せない、それ以上の何かを感じます。プライベートで会ったことはないし、撮影中もそんなにしゃべっていないんです。いつも取材の場で答え合わせをする感覚ですが、『愛している』というセリフひとつでも、それをちゃんと感じられる。それは何度か共演したから作り上げられるものじゃなくて、根本が多分似ているんだろうなと思います」

 山田自身もなかなか人に認められないという葛藤を抱えていたそうだが、松本も不遇時代を経て、テレビ朝日ドラマ「ホリデイラブ」での“あざとかわいい”キャラが受け、ブレーク。その境遇には共通点がある。

「まりかさんは、ご自身は『嫌い』と言っていた声のお仕事をされたり、舞台などに出ていた。よく『ずっと映像に出たかったけど、出られなかった』というお話をされるんですけど、僕自身も、ここ数年でようやく人に知ってもらったぐらいだと思っていますから。語り尽くしたわけでもないけど、僕のことを全てひっくるめて理解しているなということを節々にすごく感じる人なんです」。松本とはNHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年1月8日スタート)でも共演。山田は徳川家康(松本潤)の家臣団の一人、本多忠勝、松本はくのいちの女大鼠(おんなおおねずみ)役で出演する。

□山田裕貴(やまだ・ゆうき)1990年9月18日、愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系)で俳優デビュー。22年エランドール賞新人賞を受賞。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ(16~19)、「あゝ、荒野 前篇・後篇」(17)、「あの頃、君を追いかけた」(18)、「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」(21)、「東京リベンジャーズ」(21)、「燃えよ剣」(21)、「余命10年」(22)、「耳をすませば」(22)。「東京リベンジャーズ2」(23)の公開が控えている。

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