車盗難、犯罪繰り返しても減刑、「支払い能力崩壊」で賠償請求は困難…被害オーナーの無念
一向になくならない自動車盗難。突然愛車を失い、途方に暮れるオーナーの悲鳴は聞こえてくるものの、盗んだ犯人についての情報は驚くほど少ない。いったい、どのような人物が盗難に関与しているのだろうか。
犯罪繰り返す窃盗犯 それでも減刑「納得はいかない」
一向になくならない自動車盗難。突然愛車を失い、途方に暮れるオーナーの悲鳴は聞こえてくるものの、盗んだ犯人についての情報は驚くほど少ない。いったい、どのような人物が盗難に関与しているのだろうか。
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5月にマツダRX-7を盗難された46歳男性は、茨城県内のヤードで愛車を発見し、無事に取り戻した。組織的な犯罪を疑ったものの、犯人の現行犯逮捕はなし。夏の終わりに別件で逮捕されたことから、犯罪への関与を知ったという。
男性は車両盗難の罰則の強化を求め、今月19日、「車両盗難厳罰化推進の会」と6省庁を回り、刑罰の厳罰化や捜査人員の拡充など、さまざまな問題点の改善を訴えた。現行で自動車窃盗は窃盗罪にあたり、「10年以下の懲役又は50万以下の罰金」が科せられるが、それでは甘いとの認識を示している。
愛車は自宅近くの平置きの駐車場で盗まれた。ハンドルロック、後輪にタイヤロックをつけていたが、ともに破壊された。修理代は「ざっくり100万程度」。車両保険をかけていたため、全額支払いはまぬがれたが、持ち出しも数十万に上った。犯人に賠償請求したいが、困難との見方を示す。
「公判の内容を聞いていると、支払い能力は崩壊。2人とも生活保護受給者でした。犯罪の末端にはそういう人もいる。2人は過去に何回も犯罪歴があって、うち1人は今回も私の車を含めて3件5台を盗んでいる。それも出所してわずか半年です。にもかかわらず、満期10年ではなくて、検察は7年の求刑しかできない。納得はいかないですよね」
今月23日に判決が言い渡された。懲役5年だった。検察側の求刑を2年下回っており、被告側の情状酌量が考慮されたとみられる。
男性によると、裁判官は被告が1)反省の意志を示していること、2)被害車両のうち1台が戻ってきていること、3)犯人が被害者に対し弁済の意志を示していること、を理由に挙げたという。男性は生活保護を受ける身だが、「知人のツテを使って働いて返済したい」と主張した。
愛車の修理で半年…盗難被害者の大きすぎる代償
自動車窃盗は、とにかく犯罪が繰り返し行われている印象がある。9月に神奈川で逮捕された暴力団関係者は、スカイラインGT-Rやトヨタ・スープラなど20台近くの窃盗を供述した。現行の法制度が全く抑止力になっていないことを裏づけている。
窃盗罪は万引きにも適用されるものだ。男性は「窃盗にも種類があると思っています。単独であるとか、組織的なものであるとか、犯行が悪質であるとか。ただ量刑の少ない多いだけではなくて、別のジャンルの窃盗罪として法制化できないのかなと思いますね」と指摘する。
愛車が見つかったとき、車体は泥まみれで傷だらけ。キーシリンダーはドリルで壊され、エアロ(外装パーツ)も破損していたため、修理がすべて終わって戻って来たのは盗難から約半年後だった。
「思いも詰まった車ですし、独身のころから乗っていて、妻とも乗って、生まれた子どもとも一緒に乗ってと家族ぐるみで大切にしていた。なおさら許せなかったですね」と、やり場のない怒りは収まらない。
海外に不正に輸出されることもある自動車窃盗は、罰則強化にかかわる省庁が多い。今回、厳罰化を求める要望書を6省庁(外務省、法務省、警察庁、国土交通省、財務省、経産省)に提出したのもそのためだ。例えば、税関の管理は財務省、ふ頭の保全は国交省、GPS支援や各自動車メーカーへのセキュリティー対策強化は経産省といった具合だ。
「各省庁が連携をするのかどうかは、各省庁のみなさんがこのことをどう重く受け止めるか。その温度感によって全然変わってくる」と、男性は今後の進展を注意深く見守っている。