【RISE】引退マッチ終えた山田洸誓、50秒の沈黙と涙で振り返った父との“25年”「響きました」

立ち技格闘技イベント「Cygames presents RISE WORLD SERIES / SHOOTBOXING-KINGS 2022」が25日、東京・両国国技館で行われた。第15試合には山田洸誓(正道会館KCIEL)が引退試合としてペットパノムルン・キャットムーカオ(タイ)とスーパーライト級(65キロ)で対戦。0対3で敗れた。試合後、会見で格闘家として最後の1日を振り返った。

最後の試合後会見で涙する山田洸誓【写真:ENCOUNT編集部】
最後の試合後会見で涙する山田洸誓【写真:ENCOUNT編集部】

「自分は世界一じゃなかった(笑)」

 立ち技格闘技イベント「Cygames presents RISE WORLD SERIES / SHOOTBOXING-KINGS 2022」が25日、東京・両国国技館で行われた。第15試合には山田洸誓(正道会館KCIEL)が引退試合としてペットパノムルン・キャットムーカオ(タイ)とスーパーライト級(65キロ)で対戦。0対3で敗れた。試合後、会見で格闘家として最後の1日を振り返った。

 格闘家として最後の1日。パンチやキックよりも“言葉”が効いたという山田の心に残ったものは仲間の応援やファンの歓声ではない。「親父」のひとことだった。

 引退試合の試合後会見にも関わらず「死人に口なしと思っているので、こうインタビューしてもらえてることに感謝です」と当たり前のように語る姿は何とも山田らしかった。

 相手は初代RISE世界スーパーライト級王者、GLORY世界フェザー級王者という肩書きを持つ過去最強で最高の相手であるペット。山田はファイターとして極上の9分間を笑顔で振り返る。

「1R目は正直いけるかなと思いました。でも、2R目からガラッと変わって圧も強くなったし、ミドルキックの頻度も多くなった。あと、プッシュが半端なかったですね。体の強さ、そしてラウンドが変わると違うことをしてくるうまさとずるさは感じました」

 試合前はこの試合を「引退試合というよりも対抗戦という意識の方が強い」と話していたが、いざ目の前にした“引退試合”に気持ちは隠せなかったと苦笑いを浮かべる。それでも相手は最強のままだった。

「押し殺そうって思ってたんですけど……。最後の3ラウンド目、自分がノーガードでちょっと行こうかなって(誘った)。本当に自分の全部を出したいなと思ったんですけど、そこはなかなかペットも乗ってくれず。世界一の人間やなっていうのは感じましたね」

 この試合で感じた自身の現在地。山田は「自分は世界一じゃなかった(笑)。でも手が届かんかったかと言えば可能性は0じゃない。そこは良かったかな。楽しかったですね。今後の指導していく上でも自分の財産になった」と9分間に何度も見せていた笑顔のワケを口にした。

 笑顔を貫いていた山田だが、1番響いた言葉を聞かれると言葉が詰まる。かっちりと決められた七三分けも崩れ、山田は絶対に涙を流すまいと視線を遠くに外す。50秒間の沈黙ののち、目からは大粒の涙をこぼしながら口を開いた。

「親父ですね。ずっと25年間……(涙)。試合前に『やるぞ』という言葉をかけてくれた。シンプルな言葉ですけれどね。それが1番響きましたね」

 クリスマスに格闘家生活に終止符を打った山田。試合前にかけられた父の言葉は人生の大きな贈り物になっているようだった。

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