「浪人してでも早慶」は古い? 強まる現役志向、リクルートの専門家指摘「偏差値より学びの中身」

歯を食いしばってもう1年――。かつて早稲田大や慶応大への入学を目指す受験生はMARCHクラスに合格しても浪人して再チャレンジするケースが目立ったが、それは昔の話。医学部をのぞいて難関国立大、私立大の現役進学率はおよそ8割以上に達している。なぜ現役志向が強まっているのか。リクルート進学総研の池内摩耶さんに聞いた。

大学受験における現役志向が強まっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
大学受験における現役志向が強まっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

〈主体性〉〈実行力〉〈創造力〉を高めてくれる大学選びが肝要

 歯を食いしばってもう1年――。かつて早稲田大や慶応大への入学を目指す受験生はMARCHクラスに合格しても浪人して再チャレンジするケースが目立ったが、それは昔の話。医学部をのぞいて難関国立大、私立大の現役進学率はおよそ8割以上に達している。なぜ現役志向が強まっているのか。リクルート進学総研の池内摩耶さんに聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

――まず、リクルート進学総研が発表した高校生の進路選択に関する調査「進学センサス2022」のポイントについて教えてください。

「22年4月大学進学者の進路選択行動を見ますと、第1志望校への進学者は68.3%で、前回より14.8ポイントの大幅増加となりました。特に総合型・学校推薦型選抜合格者の第1志望率は86.6%と非常に高いです。年内入試合格での進学者は7.9ポイント増え47.0%、逆に年明け入試層は9.8ポイント減少の47.1%で、年内入試合格による進学者が大幅に増加しました。進学者が合格した入試方法は、年内入試層が47.0%、年明け入試層が47.1%とほぼ同率となりました」

――この結果から高校生の現役志向が読み取れますか?

「そうですね。総合型や学校推薦型選抜に合格したら概ねその大学に現役入学することになります。医学部をのぞき国公立、私立の現役入学者数は全体のほぼ8割と言われていますし、年内入試合格の割合が増えていることは現役志向の高まりを示していると思います。私学でみると全体の46.4%が定員割れしているので選り好みしなければ現役で合格できます。それもあって高校生の間では浪人するという選択はあまりなく、現役合格が前提となっています。さらに18歳人口の減少が進む中、難関大学と呼ばれるMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)も以前に比べて学力だけではない、多様な入試が増えています。早慶のような偏差値の高い大学に絶対に入りたいという受験生の割合は年々低下し、偏差値一辺倒ではなく自分がやりたいことができる大学を選ぶ傾向が強くなっているようです」

――受験生は大学の情報をどのように集めているのでしょうか?

「実はコロナ禍によって大学の発信力は格段に高まりました。ユニークな研究テーマや多彩な教授陣など大学の魅力についてYouTubeなどSNSを駆使して詳細にPRするなど広報スタッフは高校生の心に響くよう努力しています。ある中堅大学ではハロウィーンの魅力とその起源について分かりやすく解説して高校生の興味・関心を引き付けていました。偏差値より、将来のためには大学時代に何をするかが重要である、ということを高校生はさまざまな情報を通して知るようになっています」

――大学の入試方法の多様化も現役志向が増えている要因でしょうか?

「多様な入試や併願制度を導入し、その大学で学びたいという強い意欲のある学生を早めに獲得しようとする姿勢が目立ちます。特に、首都圏より少子化が深刻化しているエリアから入試制度改革が動く傾向はあります。例えば、これまでは専願が多かった年内入試において、首都圏でも併願可能な総合型選抜を導入する大学が増えています。自分に合った学部が見つかれば合格するまで何回でもチャレンジできるということです」

――自分のやりたいことがまだ見つからない高校生はどういう姿勢で大学受験に臨むべきでしょうか?

「リクルートの高校生価値意識調査にはこんなものがあります。『あなたが今持っている能力は』と『将来必要な能力』を質問しギャップを見ると、〈傾聴力〉〈規律性〉〈柔軟性〉はすでに持っているが、〈主体性〉〈実行力〉〈創造力〉は不足しているという答えが並びます。自身の〈主体性〉〈実行力〉〈創造力〉を高めてくれるような大学やその学部、学科、教員を調べてみることも参考になると思います」

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