「若者の車離れ」は本当? 意外なデータ…中古車市場の“エース”は20代・30代 背景とは

新型コロナウイルスの感染拡大が始まって3年目となる2022年、中古車市場に変化が訪れた。半導体不足による新車の納期遅れや技術革新による新車価格上昇などの影響で高騰化が続いていたマーケットは“踊り場”の様相に。一方で、中古車市場の買い手として「エース」と位置付けられる20代、30代の購買意欲増大の兆候も。よく言われる“若者の車離れ”の指摘とは少し異なる、若者と中古車に関する新しい視点があるという。専門家に聞いた。

コロナ禍3年目で中古車市場にまた新たな変化が訪れたという(写真はイメージ)【写真:写真AC】
コロナ禍3年目で中古車市場にまた新たな変化が訪れたという(写真はイメージ)【写真:写真AC】

中古車購入単価の最新は「156.6万円」、過去7年間で39.3万円増加

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まって3年目となる2022年、中古車市場に変化が訪れた。半導体不足による新車の納期遅れや技術革新による新車価格上昇などの影響で高騰化が続いていたマーケットは“踊り場”の様相に。一方で、中古車市場の買い手として「エース」と位置付けられる20代、30代の購買意欲増大の兆候も。よく言われる“若者の車離れ”の指摘とは少し異なる、若者と中古車に関する新しい視点があるという。専門家に聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 リクルート自動車総研の「中古車購入実態調査2022」によると、中古車市場規模は「前年21年から縮小、中古車購入単価は引き続き上昇」の全体像が浮かび上がった。22年の市場規模は3兆5578億円と推計。15年の調査開始以降は拡大傾向にあり、21年は過去最大となったが、22年は6121億円縮小に転じた。日本最大級の中古車情報メディア「カーセンサー」統括編集長で、同総研所長を務める西村泰宏氏は「コロナ禍1年目の20年に購買行動そのものが停止、その反動で21年は市場が膨らみましたが、いったん落ち着きを見せたと考えています」と分析する。

 西村氏が着目するのは、「購入単価」だ。最新は「156.6万円」。年々増加傾向にあり、過去7年間で39.3万円増加している。一方で、21年から22年の増加分は1.6万円。高騰化には変わりないが、「上がり幅にも落ち着きが見受けられます。これまで毎年5~10万円の幅で『こんなに上がるの』となっていたのですが、この150万円台が踊り場になっているのかもしれません。今後の傾向については、新車マーケットの価格上昇に中古車市場がつられていくため、以前のように120万円台に戻ることは考えづらいです。かと言って数年後すぐに180~200万円までいくこともないのかな、という見立てです」と話す。

 また、中古車の支払い総額は、「50~100万円未満」が20.9%で最も高い。150万円未満の割合がおおむね年々減少傾向にある一方で、「200~250万円未満」は増加傾向だ。西村氏は「現状を大まかに言うと、年配の方は『中古車は100万円以内で買いたい』という一定層がいます。その一方で、近年は200~400万円のシェアが固定化されつつあり、高い買い物をする人たちが平均価格を押し上げる構造があります。ただ、最新のデータでは、この高く買う人たちが少しおさまってきたのかなと見ています」。

 西村氏は、若者の購入意欲に大きく注目している。購入単価の年齢層の観点が興味深い。年齢別平均では30代が「174.2万円」で最高、次いで20代が「165.0万円」となっている。50代は「140.1万円」、60代は「140.0万円」。30数万円以上の開きがある。

「私たちは、20代、30代を『エース』と位置付けています。この年代の人たちが、高い中古車を買って平均価格を引き上げている層のメインなのです。よく街の販売店さんにお伝えするのが、『20代、30代の若い方が来店されたらなるべく安価な物件から紹介する、と決めつける必要はない』ということなんです。調査結果からも分かる通り、若い世代の方が平均的に高い中古車を買っているという事実もあります。必要なものには価値を見出してお金をかける方もいますので、世代で決めつけない方がいいかと思います」。先入観を捨てることを業界内でメッセージ発信しているというのだ。

「カーセンサー」統括編集長でリクルート自動車総研所長を務める西村泰宏氏【写真:カーセンサー提供】
「カーセンサー」統括編集長でリクルート自動車総研所長を務める西村泰宏氏【写真:カーセンサー提供】

20代、30代は「新車至上主義でもなく、乗れるものをうまく乗り継ごうと考える人が多い」

 西村氏は、中古車に対する世代間の捉え方の大きな変化についても言及する。

「ひと昔前、具体的には2000年ぐらいまでに中古車を買った経験のある方は、『中古車は安かろう悪かろう』というイメージが少なからずあると思います。修復歴や走行距離などが不明瞭であったり、購入後にすぐ故障したり、買ったあとに成功・失敗が分かれるような買い物という側面もあったと思います。しかし、今この2022年にアップデートされた時代では、『中古車 対 新車』の対立構造はもうありません。新車が発売されるとまもなく、1、2年落ちの高年式な中古車も当たり前のように買われています。自動車メーカーの技術改良によって2010年代以降は、車も大きな故障は格段に減り耐久性も増しています。ほとんどのモデルにおいて、『中古車に出回っている車を購入するのは目利きが非常に難しい』というイメージはもう消し去った方がいいでしょう」と強調する。

「次回の中古車購入意向」の項目では、20代は48.0%、30代は48.9%と約半数が「次も中古車を買おうと思う」と回答している。中古車に足踏みしない、積極的な買い替え意欲が見て取れる。

 西村氏は「世代間の捉え方にまだ違いが残されているような気がします。20代、30代は、ポジティブに消費する志向が強いです。新車至上主義でもなく、乗れるものをうまく乗り継ごうと考える人が多いです。それに、車好きの間では『自分の年齢より古い車に乗る』ことがステータスの1つとして考えられています。個性的な古い車は他のユーザーと違いを見せることもできますし、昔の車を楽しく乗る若者も一定数います。『中古車は怪しい』から『中古車はスマートに乗れる』といったように概念が変わってきていることは確かです。ただ、50代、60代の方々の視点から見れば、事故リスクを減少させる先進安全装備を求めて新しい車を求める傾向もあり、求める価値も選ぶ理由もそれぞれ」と分析する。ある意味意外とも言える若者の動向が、今後のカギを握りそうだ。

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