X伝説に彩られた日本プロレス界 来年元日「NOAH日本武道館大会」に登場するXは誰?
ノア2023年“闘い初め”元日の東京・日本武道館決戦に「X」がエントリーされている。Xは藤田和之、ケンドー・カシンと組み、船木誠勝、中嶋勝彦、征矢学組と対戦するが、誰が登場するのか期待が高まる。
柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.125】
ノア2023年“闘い初め”元日の東京・日本武道館決戦に「X」がエントリーされている。Xは藤田和之、ケンドー・カシンと組み、船木誠勝、中嶋勝彦、征矢学組と対戦するが、誰が登場するのか期待が高まる。
とはいえ、昔から一部で「Xに大物無し」と語られているのも確か。花道に登場しても「誰?」ととまどいが広がることも多かった。なかなか参戦選手が決まらず、やむを得ずXと発表される場合もあっただろう。大物選手との交渉がまとまらず、Bプランが採用されたかも知れないが、Xがくせ者なのは間違いない。
SNSが発達していない時代は、情報不足によりファンの期待や妄想がふくらみ、かえってXへの期待が大きくなっていた。期待が大き過ぎた結果「何だ、エックスじゃなくてバツじゃないか!」などと落胆の声もしばしば聞かれた。
「史上最大のX」とあおられ、先のノア4・30東京・両国国技館決戦に現れたのは、小島聡。新日本プロレス、全日本プロレスの両団体で一時代を築き上げたスター選手だが、事前の盛り上げ方が半端なかっただけに「え、え?」という戸惑いのタメ息が漏れたのも事実だった。
周囲の反響を真正面から受け止めた小島は、持ち前の前向き志向で発奮材料として大暴れ。GHCヘビー級王座を獲得し、IWGP、3冠のヘビー級シングル王座のグランドスラムを実現、IWGP、世界、GHCのタッグ王座完全制覇も成し遂げ「史上最大のX」を見事に実証してみせた。来年元日決戦では杉浦貴との「タカ&サトシ」でGHCタッグ王座防衛戦に臨む。ただ小島と並ぶXというと、いまひとつピンとこない。日本プロレス史をさかのぼってみても、なかなか見当たらない。
さまざまな「X」たち
Xといえば、アニメのタイガーマスクに登場したミスターXが頭に浮かぶ人もいるだろう。「虎の穴」極東地区を統括するマネージャーだった。
アントニオ猪木と異種格闘技戦で対戦したミスターXもいた。いささか期待外れに終わったが、その正体はいまだに諸説あり、はっきりとしていない。
ミスターXなるマスクマンもいた。1960年代に日本でも活躍した。ミスターXのマスクを着用しながら、ビル・ミラーとして参戦もしいている。素顔となって国際プロレスに乗り込んだこともあった。2メートル近い長身を利したネックハンギング・ツリーが代名詞だった。外国人は悪党のイメージが強かった時代の選手だが、獣医師でもあった知性派で、一目置かれるところもあったという。正体を隠そうが明かそうが、実力が本物ならば、ファンを魅了できるということだろう。
全日本の12・25後楽園ホール大会での大森隆男の対戦相手は当初「X」だったが、征矢学だと発表された。この時は歓迎の声が多く聞かれた。
2人はGET WILDとしてタッグを組んで人気を博し、9・18日本武道館大会で電撃再結成。世界タッグに挑戦した。惜しくもベルトは逃したが登場時の会場のボルテージは一気に上がり、ファンの期待の大きさを示した。
大森デビュー30周年記念イヤーの最後を飾るにふさわしい12・25決戦の魅力的なシングル対決。征矢は「大森さんにクリスマスプレゼントをかましに行きます!」と熱い。来年以降は未定だが「肌を合わせてわかることもある。お互いの理解を深めて次へつなげたい」と意欲的だ。「対決の次は、やっぱりGET WILDを組んでほしい」という声が広がっている。Xの成功例だ。
となるとますます楽しみが増すのが1・1日本武道館大会に現れるXである。ノアは小島でX伝説に成功しているだけに「新年を飾るX」への幻想はふくらむ一方だ。あおり方が地味なのも、逆に妄想を呼んでいる。「あの人か? あるいはこの人か? まさかのあの人か?」……X候補は何人もいる。お正月にふさわしいお年玉プレゼントになることを願っている。プロレスの魅力のひとつであるX。清宮海斗VS拳王のGHCヘビー級戦、グレート・ムタVS中邑真輔など豪華カードが並ぶ元日決戦が、いよいよ待ちきれない。(文中敬称略)