清塚信也、プロ野球観戦から学ぶピアノの勝負勘「一発勝負は選手と一緒」
「関ジャム 完全燃SHOW」(テレビ朝日系)や「ワイドナショー」(フジテレビ系)のコメンテーター、そして「クラシックTV」(NHK Eテレ)ではMCとしても活躍する人気ピアニスト・清塚信也がニューアルバム「Transcription」をリリースした。羽生結弦さんのショートプログラムとして知られる壮大な楽曲「ロンド・カプリチオーソ」やスリリングなバンドサウンドが心地良い「Night out」など、色彩豊かなピアノサウンドを軸に清塚が今届けたい音楽世界が広がっている。今回はテレビだけでは伝わらない清塚のユニークな素顔に迫ってみた。
清塚信也の今を音楽にしたアルバム「Transcription」
「関ジャム 完全燃SHOW」(テレビ朝日系)や「ワイドナショー」(フジテレビ系)のコメンテーター、そして「クラシックTV」(NHK Eテレ)ではMCとしても活躍する人気ピアニスト・清塚信也がニューアルバム「Transcription」をリリースした。羽生結弦さんのショートプログラムとして知られる壮大な楽曲「ロンド・カプリチオーソ」やスリリングなバンドサウンドが心地良い「Night out」など、色彩豊かなピアノサウンドを軸に清塚が今届けたい音楽世界が広がっている。今回はテレビだけでは伝わらない清塚のユニークな素顔に迫ってみた。(取材・文=福嶋剛)
取材の前の写真撮影。スポーツも担当するカメラマンとの談笑からインタビューは始まった。
――清塚さんは大の西武ライオンズファンとお聞きしました。
「かなりのファンです。私は子どもの頃、所沢に住んでいて野球少年だったんです」
――ポジションは。
「ピッチャーです。結構肩が強かったんですよ」
――指を大切にするピアノなのに野球は大丈夫でしたか。
「大丈夫でした。本当は今でも草野球がやりたいんですけどね」
――ライオンズの好きな選手は。
「全員に決まっているじゃないですか! 黄金世代だと辻発彦さんやデストラーデさん、でも一番は松井稼頭央さんです。来年は松井監督に期待していますから! このまま野球の話をしましょうよ。野球だったら何時間でも話せますよ(笑)」
――ありがとうございます(笑)。そんな野球少年だった清塚さんは現在、音楽活動に止まらず、俳優やミュージカルの音楽制作、バラエティー番組への出演など、常にいくつもの活動を同時にされているという印象です。
「そうですね、1つのことに絞ってそれだけを続けていくのは性に合わないんです。私は何かにハマって没頭する周期みたいなのがあって、その瞬間に面白いと感じたものを選択して徹底的に自分の思う通りの形にしていく。そんな楽しみ方をいつもしています」
――今回のアルバム「Transcription」は、清塚さんが楽しいと思えるこの瞬間を形(=楽曲)にした“今の集大成”といった位置付けでしょうか。
「まさにその通りです。今回、私がアルバムで伝えたかったことはそこなんです」
――アルバムには清塚さんの真骨頂でもあるオーケストラとの壮大なクラシカルナンバーから、ジャズやボサノヴァといったバンドサウンドまでバラエティーに富んだ楽曲が収録されていて、まさに“清塚ワールド”を旅しているかのような作品になっています。
「そうなんです。今回は音楽ジャンルを横断しながら表現の面白さを感じてもらえるアルバムを作りたくて、事前にコンセプトを決めたりせずに自然にあふれ出てきたアイデアを元にアレンジを加えた作品なので、今の清塚信也を感じてもらえると思っています」
――やはり清塚さんの表現の中心に音楽があるわけですね。
「これまでの人生で大きな時間と労力をかけてきたのが音楽なので表現する手段として音楽を多用していますが手段は何でもいいんです。私の原点には表現やパフォーマンスを通して人とつながったり、誰かに影響を与えられるような人間でいたいというのがあって、自分がやりたい表現ができるのであればピアノじゃなくても道具は何でもいいんです」
――つまり音楽にフィードバックするためのほかの活動ではないと。
「本当にその通り。音楽にフィードバックするためというのは個人的におこがましいと思っていて。芝居だってバラエティーだってみなさんそれぞれの道を極めようと思ってやってらっしゃいますから。私もそれぐらい真剣にやらないと芸事に対して失礼ですし、うまくいかないですよね」
――役者としては映画「さよならドビュッシー」(2013年)でデビューされて、それからテレビドラマにもたびたび出演されています。
「芝居はもともと興味があって、若い頃からワークショップに参加しながら稽古をしてきて、いつかやりたいとずっと思っていたんです」
――タレントさん顔負けのトークについてはいかがですか。
「あれはピアニストがトークしているという振りがあるから成立しているだけです(笑)」
――ほかにもYouTubeを定期的に更新されていて、清塚さんはいつ寝ているんですか。
「寝てますよ(笑)。でも基本的に暇が嫌いなんです。大抵リラックスしているときに良いアイデアが浮かんでくるので旅行なんかに行ったら次々にメロディーが浮かんじゃって早く帰りたいって思っちゃうんです。曲作り、練習、ネタ作りとか常に頭の中で同時進行してしまうので落ち着きませんね」
いかにその状況を克服するプレーをするかが面白い
――大好きな野球の試合はいかがですか。試合時間は短くてもだいたい2時間はあります。
「試合は大好きだからちゃんと見ます。生で観戦するとテレビからは伝わらない臨場感とか緊張感があるじゃないですか? 大勢のお客さんが見ている前で一発勝負の良いパフォーマンスをしなきゃいけない場面は私たちと一緒ですし、たとえ一流選手でも流れに飲まれることってありますよね。フォアボールを出したりエラーしたり三振したり。そんな精神状態になったときにどうやって選手は克服するのか。私たちに置き換えるとコンサートでも同じことが言えるんです。私はコンサートではいつも会場に置いてあるピアノを演奏しているんですよ」
――ご自身のピアノを持って行かないんですか。
「わがままを言わないタイプなんで(笑)。今まで調律師さんにもほとんど注文を付けたことがないです」
――会場によってはピアノのコンディションも違いますよね。
「もちろん。私は配られたカードで勝負をするのが好きなんです。勝負に勝つ人って配られたカードでなんとかしようと考えてそれを楽しめる人だと思うんです。それこそ野球と同じでいかにその状況を克服するようなプレーをするかなんでね。たとえばものすごく古いピアノに当たったとするじゃないですか? そしたらMCで『きれいなホール、すてきなお客様、そして古いピアノ』ってピアノをイジるとみなさん必ず笑ってくださるんです。そしたら『なんで笑ったの? 今は声を出しちゃいけないんだよ』って(笑)」
――なるほど。会場を温めながらわざとイジったピアノの演奏に集中してもらおうという。
「『笑ってはいけない』の心理ですよね。だから世の中がどんなにピンチだって言われても与えられたカードの使いようでどうにでも克服できると私は信じています」
□清塚信也(きよづか・しんや)5歳よりクラシックピアノの英才教育を受ける。中村紘子、加藤伸佳、セルゲイ・ドレンスキーに師事。桐朋女子高等学校音楽科を首席で卒業後、モスクワ音楽院に留学。1996年「第50回全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部」第1位。2000年「第1回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」第1位、04年「第1回イタリアピアノコンコルソ」金賞。05年「日本ショパン協会主催ショパンピアノコンクール」第1位など国内外のコンクールで数々の賞を受賞。人気ドラマ「のだめカンタービレ」にて玉木宏演じる「千秋真一」、映画「神童」では松山ケンイチ演じる「菊名和音(ワオ)」の吹き替え演奏を担当し脚光を浴びる。13年映画「さよならドビュッシー」俳優デビュー。18年舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」では劇中音楽を担当するなど作曲家としても活動の幅を広げ、「Fantasy on Ice2018」では世界的フィギュアスケーターステファン・ランビエル、ジョニー・ウィア、羽生結弦選手などと共演。19年「第70回NHK紅白歌合戦」に初出演。22年11月ニューアルバム「Transcription」をリリースし、全国ツアー「清塚信也 47都道府県ツアー 2022~2023」開催中。
清塚信也公式HP:https://tristone.co.jp/kiyozuka/
公式YouTube「きよりんチャンネル[決]」
http://www.youtube.com/@kiyozuka
「ロンド・カプリチオーソ」(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=ES-Rz8nip80
「Night out」(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=b2dtzbnkrVA
清塚信也 ニュー・アルバム『Transcription』
2022年11月30日リリース
限定盤:CD+DVD UCCY-9040 ¥4,400 (税込)
通常盤:CD UCCY-1117 ¥3,300 (税込)
https://kiyozuka.lnk.to/TranscriptionSR
収録曲
01.「Chopin Fantasy」(ショパン / 清塚信也)
02.「ロンド・カプリチオーソ」(サン=サーンス / 清塚信也)
03.「私は見る」(清塚信也) *ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』より
04.「螺旋階段でタンゴ」(清塚信也) *ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』より
05.「アスタマニャーナ」(清塚信也) *ミュージカル『ゴヤ -GOYA-』より
06.「Baby, God Bless You – transcription ver.」(清塚信也)
07.「ひまわり 愛のテーマ」(マンシーニ)
08.「亡き王女のためのChill」(ラヴェル / 清塚信也)
09.「恋と、終わりと、kiss」(清塚信也)
10.「Night out」(清塚信也)
11.「Drawing – transcription ver.」(清塚信也)
12.「This Midnight」(ベートーヴェン / 清塚信也)
13.「See U Soon – transcription ver.」(清塚信也)
【DVD】※限定盤のみ収録
2021年11月2日にサントリーホールにて行われた清塚信也コンサートツアー2021「Beautiful Time」スペシャル公演の映像を収録。
スタイリスト:Hisato Nakanishi(JOE TOKYO)
ヘアメイク:Atsushi Sasaki (GLUECHU)
ジャケット\79,200(FORSOMEONE/EDSTROM OFFICE)、
その他スタイリスト私物
問合せ先:「EDSTROM OFFICE」 TEL03-6427-6550