北村有起哉、16年続けるブログは「息子たちへのラブレター」 私生活をつづる意味

俳優の北村有起哉(48)が2度目の主演映画「終末の探偵」で破天荒な探偵に扮(ふん)している。初めて舞い込んだ探偵のオファー。その時代を映す鏡のような存在を演じるため、台本が決まる前の準備段階からセリフや、役柄、背景などについて、監督、プロデューサー、共演者と入念にミーティングを重ねたと振り返る。プライベートでは2人の男児の父親。愛息が誕生する前から続けているブログは、「息子たちへのラブレター」と教えてくれた。(取材・文=西村綾乃)

最新作で初めての探偵役に挑戦した北村有起哉【写真:山口比佐夫】
最新作で初めての探偵役に挑戦した北村有起哉【写真:山口比佐夫】

北村が思うカッコ良さは「優しさ」

 俳優の北村有起哉(48)が2度目の主演映画「終末の探偵」で破天荒な探偵に扮(ふん)している。初めて舞い込んだ探偵のオファー。その時代を映す鏡のような存在を演じるため、台本が決まる前の準備段階からセリフや、役柄、背景などについて、監督、プロデューサー、共演者と入念にミーティングを重ねたと振り返る。プライベートでは2人の男児の父親。愛息が誕生する前から続けているブログは、「息子たちへのラブレター」と教えてくれた。(取材・文=西村綾乃)

 映画は裏社会を生き抜く型破りな私立探偵・連城新次郎(北村)が、日本のヤクザと中国系マフィアの抗争に巻き込まれながらも、クルド人女性失踪の調査に奮闘するハードボイルド・エンターテインメントだ。

「刑事や被疑者を演じたことはありましたが、探偵は初めて。『傷だらけの天使』の萩原健一さん、『探偵物語』の松田優作さんなど、探偵ものってずっと愛されているので、うれしかったですね。世界に目を向けても印象に残る探偵がたくさんいる。探偵って時代を映す鏡のような存在なんじゃないかなって」

 演じた連城は、借金を抱えている上に、酒やギャンブルの悪癖を持つ。風来坊のように見えるが、困った人を見過ごせない人情味がある人物だ。

「昭和の探偵と同じことをやっても受け入れられないと思ったので、令和の探偵像について入念に打ち合わせをしました。世間とは離れて生きているように見えるけれど、連城は新聞を読んでいたり、社会とつながっている。つながっているからこそ、格差や外国人差別などに敏感で、憂いたりもする。連城が抱えている憂鬱な気持ちは、映画を見ている人ともつながっていると思うんです」

 井川広太郎監督は「カッコいいおじさんの映画を撮りたい」というところから、構想を広げていったという。北村が思うカッコ良さとは。

「僕は優しさだと思います。男気あふれるとか、そういうのは周囲が判断するものだから。連城にはずるくてだらしないところも、正義感あふれる部分も両方あって。男っぽさとか、ハードボイルドな感じと言うのは、撮影をした結果生まれていたら良いなと思います」

 作品の中では、アクションにも挑戦した。

「連城はカウンターパンチでKOではなくて、急所ばかり狙うような、相手が最も嫌がる、泥くさいケンカをするタイプ。強くないけど、諦めないヤツなんです。町中を駆け回る場面で見せている苦しい表情は本心からのものです」

 意識して口にしていた「もう良いよ」というセリフ。社会の中にある分断や、生きづらさへの危惧を込めた。

「世紀末というと大げさだけど、コロナ禍のいまは先が見通せない時代ですよね。『もう良いよ』と言い過ぎるとお客さんがひいちゃうけれど、連城が日常で感じている世の中への危惧をこの言葉に重ねました。共演した(青木)柚くんは、未来に希望を持てない青年。20代の彼らが夢や希望を持ちにくく、ゆがんだ思考になってしまうのって、終戦後、高度成長期を経てバブルがあって、バブルがはじけて、いまを作ってきた僕らにも責任があるよねと思います」

 2006年に始めたブログ。公演情報から、入籍報告など、16年間更新し続けている。

「小さな事務所に所属していたので、マネジャーができることに限界がある。チケットの発売情報など、宣伝活動ぐらい自分でやろうと思ったのが、ブログを始めたきっかけでした。『いいね!』ボタンとかがないから、最初は全く手ごたえがなくて。続けているのは、ツイッターならば、全角140文字という制限の中では伝えきれないことがあるから。もう日記替わりですよね。親父が2007年に亡くなったことを報告したのも、スキャンダルを起こして『すみません』と謝罪したのもブログでした」

 電車を見てはしゃぐ息子たちの様子を投稿するなど、親子の日常も明かしているブログ。10月からはインスタグラムも始めた。

「俳優なので本業以外のことはさらけ出さない方が良いかなと思ってはいます。息子たちとの日暮里の橋から列車を眺めた1枚は、面倒を見ていた証拠写真だぞと言う思いを込めて投稿しました。後は、いつか僕がいなくなったとき、息子たちが読み返してくれる日がくるかもって……。酔っぱらって書いているときもあるけれど、父さんはこんな風に生きていたんだぞっていう、息子たちへのラブレターです」

 ブログには今夏、サイレントギターを購入したという投稿もあった。上達はしたのだろうか。

「ギターを買うときに、妻に言われた通り……。最近少し放置気味です。あいみょんが大好きなので、あいみょんの『裸の心』を演奏できるように、練習を再開したいです」

 映画は12月16日から、東京・シネマート新宿ほかで公開。

□北村有起哉(きたむら・ゆきや)1974年4月29日、東京都生まれ。舞台「春のめざめ」と映画「カンゾー先生」で98年にデビュー。映画「新聞記者」、「すばらしき世界」など多数の作品に出演している。

○ヘアメイク:石邑麻由/スタイリスト:吉田幸弘

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