木村カエラ、子どもとの日々は「毎日が宝探しみたい」 楽曲作りにもたらした好影響
歌手の木村カエラが12月14日に11作目となるオリジナルアルバム「MAGNETIC」をリリースした。2022年は有観客でのライブツアー開催や原点でもある「saku saku」(tvk)の一夜限りでの復活など、さまざまな動きがあった。新型コロナ禍を経て、初心に帰ったという今作。木村の中にどういった心境の変化があったのか――。
初のサブスク意識でアルバム制作
歌手の木村カエラが12月14日に11作目となるオリジナルアルバム「MAGNETIC」をリリースした。2022年は有観客でのライブツアー開催や原点でもある「saku saku」(tvk)の一夜限りでの復活など、さまざまな動きがあった。新型コロナ禍を経て、初心に帰ったという今作。木村の中にどういった心境の変化があったのか――。(取材・文=中村彰洋)
――前作から3年5か月ぶりのアルバムとなりました。この3年での大きな変化はコロナ禍かと思いますが、音楽へ与えた影響はございましたか。
「小さい頃から歌手になることが夢で、私にとって歌は心の叫びみたいなものなんです。歌っていると嫌なことを全部忘れられて、昔から自分にとって精神を安定させるものになっていました。でも、コンスタントに作品を出し続けていたから、私生活の中で自分以外の音楽に触れることが少なくなっていました。とにかく仕事から離れてるときは、自分を休ませる時間でした。映画とかいろんなものを見て、インプットする作業が中心でした。でも、音楽から引き離されて生活する時間を過ごしていたら、とにかく『歌いたい、歌いたい!』って(笑)。それで、鼻歌を歌ってボイスメモに録音して曲にしていったり、『楽器弾きたい!』ってなって、指が痛くなるから嫌いなアコギも練習したり……。音楽が好きな気持ちはずっと変わっていないですが、音楽に引き寄せられていくような感覚がすごい久しぶりでしたね」
――初心に帰った感覚だったと。
「まさに。1stアルバムのときは、言いたいことがありすぎて、小節やリズム、音の当てはめ方とかを気にせず、バーって殴り書きしていたんです。今回はそれに似た感覚でした」
――今作では、家での日常をつづった楽曲もありました。お子さんが与えてくれる影響もあるのでしょうか。
「子どもといるとすごくワクワクするんです。『なんでそんなこと思ったの?』『何その言葉?』みたいな。面白いことばかりで、一緒にゲラゲラ笑ってるだけで、自分が子どもみたいな感覚になれるんです。ワクワクが毎日止まらないし、毎日が宝探しみたいだなって思うんです。子どもってすごい直感を持っていて、大人ははやっているものを探すけど、子どもははやっているものなんて知らなくても、すぐに勘付いて見つけたりできる。そういう姿に刺激をめちゃくちゃ受けます。『MAGNETIC』の曲も、私が鼻歌で歌詞を書いているとき、子どもが近くにいたりするんですけど、すぐに覚えてくれる曲と覚えてくれない曲があったりするんですよ。そういうのも、すっごい勉強になります。小さいお子さんから、私よりも年上の方までみんなに聞いてほしいという思いがあるので、そういった意味でも、子どもがすぐ近くにいてくれることは影響してますね」
――今年は久々の有観客ライブも開催できましたね。
「やっぱり人と直接会って、パワーを交換し合うのって、すごい力なんだなと改めて思いました。Zeppツアーでは、人のパワーにものすごく圧倒された瞬間があって、『今までそのステージに立っていたのは、すごいことだったんだな』って、我に帰った瞬間がありましたね。私はライブハウスが大好きで、それを待ち望んでくれたファンの人たちもいて、そういった思いがダイレクトに飛んできたとき、『あ、すごいことをやってたんだな』って。3年ぐらいブランクがあったので、一瞬『あらららら?』って混乱する瞬間もありました(笑)。でも、『あー、音楽の力ってこれだよね』って改めて再確認しました」
――近年は、シングル曲は配信、アルバムはCDというリリース形態を取られていますね。
「アルバムはコンセプトを持って作っています。CDを買ってくれる人には、伝わっているかなと思っています。でも、サブスクって好きな曲だけ聞いて、次にすぐ移ってしまうイメージがあるんです。なのでコンセプトも伝わりづらいのかなとは思っています。CDを買ってくれる人もいるし、そういうテーマがあった方が作品も作りやすいので、作り方は変わりません。ただ、今回は初めてサブスクを意識してアルバム作りをしました。作り始める前から収録曲数は多くても10曲と決めて、すぐに聞けるアルバムを意識しましたね」
――ヒット曲を作るという意識で楽曲作りをすることはありますか。
「ヒット曲を作ろうと思って作ると大体売れない(笑)。だから何も考えないです。『Butterfly』(09年)もアルバムの中の1曲として配信リリースしただけでしたからね。シングルだったら、すごい売れていたかもしれないですね(笑)。でもそんなもんだと思うんです。狙って運がついてくるものではない。でも、日々の積み重ねだったり一生懸命に向き合うことがつながっていくんだろうなと」
――8月にはテレビ神奈川の開局50周年記念で復活した「saku saku」(木村は03年~06年まで番組MCを務めていた)に出演されました。どのような思いで臨まれましたか。
「16年ぶりだったので、『逆に本当すいません』って感じでした(笑)。デビューのきっかけは『saku saku』でした。tvkの50周年というとても大事なテーマソングを担当させてもらったり、始球式にも呼んでいただけました。これまで、恩返しをできていなかったと思っていたんです。だから、呼ばれて必要とされるのであれば全部やる! という感じでした。私の中で『saku saku』は本当に大事な番組だし、私にとって特別な愛がそこにはあります。当時から私を見てくれていた神奈川の人たちは、今も応援してくれているイメージがあるので、感謝しかありません」
――2年後は20周年です。今後の活動について思い描いていることはございますか。
「そんなに描いてないですね(笑)。今が続いて、その先につながっていく。とにかく今を一生懸命生きていれば、きっといいことがあるだろうみたいな感じです。でも、20周年はたくさんの人の前でお祝いのライブをしたいし、ベストアルバムも出したい。トリビュートみたいなこともしたいし、個展も開きたい……とかって思ったりすると、これからの1年を超頑張んなきゃと思います。どうにかそういう夢がかなえられるように頑張ります。歌以外でも、そのときにやりたいと思ったものをやっちゃうと思いますね。『私は歌手だから』というよりも“木村カエラ”という人間として、やりたいことを全部やっていきます」
□木村カエラ 東京生まれ。2001年から「SEVENTEEN」専属モデルとして活躍。03年にtvk「saku saku」MCに就任すると、04年6月に1stシングル「Level42」で念願のメジャーデビュー。その後もコンスタントにリリースを続け、22年12月14日に3年5か月ぶり11枚目となる「MAGNETIC」をリリース。18年には絵本「ねむとココロ」(KADOKAWA)、20年には初の日記エッセイ「NIKKI」(宝島社)を出版とマルチに活躍を続ける。
ジャケット、スカート/Vivienne Westwood RED LABEL
シューズ/FABIO RUSCONI