SUGIZO「53年間生きてきた中でいまが一番忙しい」 音楽以外の活動にも尽力するワケ

LUNA SEA、X JAPANのギタリスト、バイオリニストなどとして活躍するSUGIZOがソロ活動25周年を記念した3枚組のベスト盤「THE COMPLETE SINGLE COLLECTION」を11月23日にリリースした。30曲のシングルを収録した作品について。音楽制作と並行し力を注ぐ、環境や難民問題などへの取り組み。さらに11月にYOSHIKI、HYDE、MIYAVIらと結成したばかりの新バンド、THE LAST ROCKSTARSについてSUGIZOに聞いた。

ソロデビュー25周年を迎えたSUGIZO【写真:ENCOUNT編集部】
ソロデビュー25周年を迎えたSUGIZO【写真:ENCOUNT編集部】

娘が生まれ変化した音楽制作 自身のブランドを立ち上げ、難民支援にも尽力

 LUNA SEA、X JAPANのギタリスト、バイオリニストなどとして活躍するSUGIZOがソロ活動25周年を記念した3枚組のベスト盤「THE COMPLETE SINGLE COLLECTION」を11月23日にリリースした。30曲のシングルを収録した作品について。音楽制作と並行し力を注ぐ、環境や難民問題などへの取り組み。さらに11月にYOSHIKI、HYDE、MIYAVIらと結成したばかりの新バンド、THE LAST ROCKSTARSについてSUGIZOに聞いた。(取材・文:西村綾乃)

 1992年にLUNA SEAとしてデビュー。ソロの活動は、バンドが期間限定で活動を休止した97年にスタートした。

「ソロでの活動を決めたとき、バンドメンバーとの関係はあまり良くありませんでした。活動が大きくなる中で、バンドを取り巻く環境などについても不信感が募っていて精神状態も最悪で。でもクリエイティブに没頭していると、現実から逃避できた。音楽だけが当時感じていたあらゆるネガティブなことを吐き出す場所になっていました」

 愛を得ることができない悲しみを込めた「LUCIFER」、命や魂を歌う「Dear LIFE」。生まれた音楽からは、SUGIZOが感じた心の傷を感じることができる。

「ソロ活動初期のインタビューでは、『生み出したものは汚物』と自分でも話しています。でもその後、1996年に娘が生まれた娘への想いにより、音楽に対しての向き合い方が変化していきました」

 祈りを込めた楽曲の一方で、「NO MORE MACHINE GUNS PLAY THE GUITAR」などうっ憤が爆発している曲もある。

「この曲は、2003年に起きたイラク戦争をきっかけに生まれました。国の愚行によって民間の人々が苦しめられる。その激しい憤りは1998年のコソボ紛争で娘(当時2歳)と同じころの子どもが命を落とす様子を見たときから顕著になっていきました」

 子どもたちが安心して生きることができる未来を渡したいと、環境保護や、脱原発、被災地でのボランティア、難民支援など社会問題にも目を向けるようになった。

「2016年3月にはヨルダンにある2つのシリア難民キャンプを訪問し、初めて演奏しました。LUNA SEAとして続けて来た水素燃料電池を活用したライブも、11月29日に行った25周年記念ソロライブ『SUGIZO 四半世紀祭 25th ANNIVERSARY GIG』でも取り入れるなど、採用の場を広げています」

 3枚組のアルバム。ディスク3に収録した楽曲は、大好きだと公言しているアニメ「機動戦士ガンダム」が40周年を迎えた節目に音楽監修を務めた作品が並ぶ。

「ダンスミュージックや、サイケデリックなもの。エレクトロニックにアニメーションとのタイアップまで……。こうやって並べてみると音楽性としてあまり節操がない。でも芯は全くブレていない。そのときの自分の状況、社会情勢などからの影響で、やるべき表現を本気で向き合ってきた結果だと感じます」

「全力で走ることができるのは、『休み』を決めているから」

 2022年はLUNA SEAとしての活動と並行し、モジュラーシンセサイザー奏者のHATAKENとコラボレーションしたアルバム「The Voyage to The Higher Self」を発表。今夏はベーシストのKenKenらとのサイケデリック・ジャムバンド「SHAG」として初のアルバム「THE PROTEST JAM」もリリースした。多忙を極めているが、11月に新バンド、THE LAST ROCKSTARSとしても動き出すことを明かした。

「ジェジュンとのコラボ、キングギドラとのコラボも含めて、すべてだいぶ前から決まっていたことですが、たまたまリリースが11月に重なってしまい、53年間生きてきた中でいまが一番忙しいです。12月17・18日に“LUNACY”としてさいたまスーパーアリーナに立つ黒服限定GIGも2日間も非常に特別な公演になりますし。THE LAST ROCKSTARSとして新曲をリリースした後には、日本とアメリカでライブも行います」

 八面六臂(ろっぴ)の活躍を支えているものがある。

「全力で走ることができるのは、『休み』を決めているから。『あと3日でリゾートだ!』と思えば頑張れますよね。僕がアスリートだったら、全盛期というものがあるかもしれない。でも幸い僕はミュージシャン。ミュージシャンは歳をとってもスキルを上げることができますから」

 3枚組のアルバム制作を通して感じたことは。

「ベスト盤に収録した曲を改めて聴いて、過去の自分が素晴らしい音楽のアイデアを持っていたと再確認しました。でも当時はそれを体現する表現力が不足していて、そのままではいま世の中に出せないと思ったので、7曲分はリミックスを加えました。経験を重ねて来たいまの僕はこれから更に良い作品を作って行くことができると自負しています」

 2022年2月に立ち上げたアパレル・ブランド「THE ONENESS」を通じ、ウクライナの難民支援も行っている。

「ウクライナとロシア、両国のどちらか一方を非難したいという思いはありません。ただロシアが武力行使を先に仕掛けてしまったことは容認してはいけない。そしてその被害が罪のない一般の市民に及んでいることを目にして、国を追われたウクライナの方々をサポートしたいと思いました。名声や大金を得たいという欲はあまりありませんが、挙げた声に耳を傾けてもらえるよう影響力がある人間でいたいとは思います」

■SUGIZO(スギゾー) 1969年7月8日、神奈川県生まれ。LUNA SEAのコンポーザー、ギタリスト、バイオリニストとして92年5月にメジャーデビュー。97年からはソロアーティストとしての活動を開始し、独自のエレクトロニックミュージックを追求、更に映画・舞台のサウンドトラックを数多く手がける。2009年にサポートを続けていたX JAPANに正式加入。2020年、サイケデリック・ジャムバンド SHAGを12年振りに再始動。2022年、環境への配慮、カーボン・ニュートラルへの揺るぎなき行動と同時に、高い美意識とを両立させた、ロックなエシカル・ファッションを提唱する自身のアパレル・ブランド「THE ONENESS」を始動。同年11月には、YOSHIKI、HYDE、MIYAVIと新たなバンド、THE LAST ROCKSTARSを結成したことを公表。来年1月に日米で公演を予定している。

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