30歳・西脇彩華の新たな挑戦 紆余曲折の芸能生活20年、両親が教えてくれた“普通の感覚”

マルチに活躍の場を広げる“ちゃあぽん”こと西脇彩華が、9月30日に30歳の誕生日を迎えた。7月21日からは約20年間所属していた所属事務所を離れ、生島企画室へ移籍。新たな道を歩き始めている。30歳にして芸能生活は約20年、紆余曲折の末にたどり着いた現在地だった。

生島企画室所属の西脇彩華【写真:舛元清香】
生島企画室所属の西脇彩華【写真:舛元清香】

逆境を乗り越え続けられたワケとは…

 マルチに活躍の場を広げる“ちゃあぽん”こと西脇彩華が、9月30日に30歳の誕生日を迎えた。7月21日からは約20年間所属していた所属事務所を離れ、生島企画室へ移籍。新たな道を歩き始めている。30歳にして芸能生活は約20年、紆余曲折の末にたどり着いた現在地だった。(取材・文=中村彰洋)

 始まりは8歳から通い始めた地元の芸能養成学校「アクターズスクール広島」。「先にお姉ちゃん(あ~ちゃん/Perfume)が通っていて、毎日歌の練習をしたりすることで家の中に音楽が流れるようになりました。それに合わせて歌ったり踊ったりすることがすごい好きでした。アイドルや歌手になりたいというより、とにかく歌うことが好きで、お姉ちゃんと同じところに行ったら、いろんな歌を歌えるのかなと思ったのがきっかけでした」。

 とにかく歌って踊りたいというシンプルな思いで通い始めたスクールだったが、レッスンを重ねるうちに気持ちが変化していった。「周りで本気で頑張っている子たちを目の当たりにして、始めて芸能界を意識するようになりました」。

 それからは歌手という夢をかなえるため、ひたすらに進み続ける日々だった。デビューの糸口をつかむために雑誌モデルなども経験。努力が実り、約20年間所属することとなる「レヴィプロダクションズ(現レプロエンタテインメント)」と出会った。しかし、当時はアーティスト部門がなく、自ら道を切り拓いていく必要があった。

「当時は俳優部門やバラエティー部門などに力を入れ始めていたので『もしかしたら歌部門も作ってくれるかも?』と思っていました。オーディションも演技のお仕事や雑誌の特集ページなどがほとんど。でも、毎日広島から『歌手になりたいんですけど、歌のお仕事ないですか?』ってマネジャーさんに連絡し続けていましたね」

 努力が実り、ある日ライブイベントに出演する機会をもらえた。「これがきっかけで歌手活動をやらせてもらえるかもしれない」。そんな思いで全力でパフォーマンスする姿に心打たれたスタッフが、事務所内音楽イベントを企画してくれることとなった。「『所属者の中からグループ組んでやってみましょう』みたいなところから始まって、最終的には『グループを作ってみましょう』という感じで始まったんですよね」。西脇が人生の半分以上を捧げたガールズグループ「9nine」の結成だった。

 その後、事務所内ではアーティスト部門が誕生したが、すべての始まりは西脇の熱意がきっかけだった。

 9nineの結成で「歌手になる」という夢をかなえた西脇だったが、それはまだスタートラインに立っただけだったと知ることとなる。

「デビューできた喜びの一方で、『センターで歌いたい』『ソロパートが欲しい』という思いがありました。私きっかけでグループが誕生したと言ってはいただけたものの、いざ活動を始めると、センターでもなく、歌もダンスも初めてといった子がセンターを務めていました。これが最初の衝撃でしたね。東京に出てきてからが、始まりだったんだなって今になって思います」

 歌って踊る。その経験は広島でもたくさん積んできたが、東京に出てきてからは、さまざまな現実を思い知らされる日々だった。

「心が成長しましたね。グループ活動する中で、自分が前に出られたらいいということだけではないこともデビューしてから肌感で学んでいきました。『歌とダンスが全てではない』。そういう厳しさに直面して、グループ内でのバランス感覚だったりは活動休止するまでずーっと自分の中での課題でした」

9nineへの思いを語った西脇彩華【写真:舛元清香】
9nineへの思いを語った西脇彩華【写真:舛元清香】

9nineではたくさんの苦楽を経験、活動の中で感じた「続けていくことの難しさ」

 小6から9nineの活動はスタートした。当時は夜行バスで広島から東京に通い、1か月間ウィークリーマンションを借りて1人きりで生活するというスケジュールをこなしていた。そして、本格的なデビューが見えてきた中2の終わりに上京を決意。「まだ未成年で多感な時期。絶対に側で支えてくれる人がいたほうがいい」という両親の支えもあり、家族そろって東京へ引っ越した。

 結成当初のオリジナルメンバーとして14年間、9nineのためを1番に思って活動を続けた。数え切れない苦楽を経験してきたが、中でも衝撃だったのは2010年の合宿審査だった。その内容は9人から5人へとグループを再編成するというもの。「『メンバー選考するよ』と合宿に参加させられたときは、『いやいや! もうメンバーだよ?』ってなりました(笑)。『ゼロからやります』と言われたときは『えぇ……』ってかなり衝撃的でした」。今でこそ笑い話にしているが、当時の西脇にとっては過酷な現実だった。

 しかし、そんな逆境すらもチャンスに変えた。「小さいときから続けていたことで、精神がめちゃくちゃ鍛えられていたんです。『やってやんよ!』という気持ちでしたね」。

 もちろん、活動中には辞めたいと思うこともあった。「当時はアイドル戦国時代だったこともあって“アイドル”と呼ばれていました。でも、私の中ではアイドルとして活動していたつもりはありませんでした。自分たちから“アイドル”と明言はしていなかったですし、アイドルに向いていると思ったことは1度もないんです。アイドルとしての自分にはずっと自信がなかったんです。歌手になりたくてずっと活動してきた中で、気づいたらアイドルと呼ばれる環境に身を置いていて、『アイドルの自分はどう見えているのかな?』と壁に当たることが多かったです」。

 そんな人生の半分近くを捧げてきた9nineも19年に活動休止。「2年ぐらいかけて、ゆっくり話した結果」だった。「自分の中でいろんな感情が渦巻いていたので、納得とまではいかなかったです」。しかし、そんなモヤモヤも西脇らしい考え方で乗り越えていった。

「“これからどうやって楽しむか”を考えるようにしました。起こってしまったことに対して、ポジティブに前向きに変えていこうというのは9nineとして活動する中で学んだことだったので、『何かの試練を与えられている』と考えるようにしました。自分個人に焦点が当たるいい機会だな、と。それに、また最強になって9nineとして戻ってくるでもいい。『9nineのメンバーって1人になってからも輝いているよね』と言われるのも正解。こうなってしまったからには、9nineにいたときにはできなかったことを全部やってやろうって気持ちに変わったんです」

 現在は事務所を生島企画室へと移し、レポーターなどを中心にタレント活動を続けている。今後について「自分が楽しいと思えることをなるべく長く続けられるような、長く使ってもらえるようなタレントになるのが目標です」と力を込めた。

「活動の中で1番強く感じたことが“続けていくことの難しさ”です。やりたいと思っても求めてくれる人がいなかったらできない、そんな特殊で不安定な世界だと思っています。でも、自分で進んだ道なので全うしたいです。ありがたいことに環境が変わってもずっと応援してくださるファンの方やスタッフさんがいてくださるので、『ちゃあぽんが今も頑張っていてうれしい。応援してきてよかった』と思ってもらえるような人でいたいです」

 今後は「レポーターをもっとやりたい」と目標を口にした。「テレビでもYouTubeでもなんでもいいんです。自分が体験することで人に楽しさを伝えられたり、『見てみたい』『行ってみたい』と思ってもらえる、そういうことにすごくやりがいを感じています。ワクワクを言葉にしたいと思うようになりました」。

今後はレポートに挑戦したいと明かした西脇彩華【写真:舛元清香】
今後はレポートに挑戦したいと明かした西脇彩華【写真:舛元清香】

プライベートでは「全然しゃべらない」と意外な一面も明かす

 現在は新たな挑戦として競馬関連の仕事やラジオ生放送などさまざまなジャンルを経験中。中でも旅番組に触れたことで、「自分ってこういうのが好きなんだな」と気づいたという。一方で、新しい世界に触れることに怖さも感じている。

「まだSuicaすら持っていないアナログ人間なんです。切符勢です(笑)。新しいことに挑戦するのが苦手なタイプなんです。だけど、知っていることは何百回、何千回でも続けられるんです。一歩踏み出すのに勇気がいるだけで、実際に行動に移したら楽しめる性格ということは分かっているんですけどね(笑)」

 プライベートはとにかく慎重だが、「仕事だと割り切って挑戦できる」。その結果、私生活にも好影響を与えることが多々あるという。「勝手に向いてない、苦手だと思っていたことが、いざやってみたら『めちゃめちゃ楽しいじゃん!』ということがたくさんありました」。

 何事にも前向きに挑む姿勢は「家族の影響」と明かす。「両親が与えてくれた影響がとても大きいかもしれないです。両親は芸能界とはかけ離れた仕事をしていて、“普通の感覚”を教えてくれます。芸能界って普通じゃないことが普通だったりする特殊な業界だと思うんです。でも、“普通の感覚”を忘れずに人と接することはすごい大事なことだと思っています。『自分は特別でもなんでもない』という気持ちが自分を謙虚にさせてくれて、いつもどんなときでも前向きにさせてくれるんです。ポジティブな言葉を掛けられて育ったというわけではなく、そういった“普通の感覚”が自分の土台を作ってくれているんだなと大人になってから気付けました」。

 また、明るく元気でおしゃべりなイメージだが、プライベートでは「全然しゃべらないんです」と意外な一面。仕事では「スイッチが入る」が、普段は聞き役になることが多いという。「友達とご飯に行ってもほとんどしゃべらないです」とギャップを見せた。

 歌いたいという思いで飛び込んだ芸能界。「だいぶ形を変えましたね」と今をかみ締めながらも、「歌もダンスも大好きなので、自分の武器の1つとして残しておきたいです。実は今でもボイトレやダンスレッスンに行ったりもしています」といつでも準備は万端だ。

 ジグザグでもデコボコでも道は続いている。その先に見つけた新たなスタートライン。「今は楽しいと思える方向に自分の力で向かっていけるような環境になってきていると思っています」。つねに「謙虚な気持ち」を胸に、応援してくれる人たちへ恩返しするためにもさらなる飛躍を誓う。

□西脇彩華(にしわき・さやか)愛称は「ちゃあぽん」。1992年9月30日、広島県出身。8歳から広島アクターズスクールの通い始め、2005年にガールズユニット「9nine」の結成メンバーとして加入。19年にグループが活動休止。その後はソロで活動を続ける。22年7月21日に生島企画室に移籍。現在は、TCK公式YouTubeライブ番組「ウマきゅん」、JFN系列23局ネットで放送中「あ~ちゃん ちゃあぽんの!”West Side Story”」などにレギュラー出演中。3人きょうだいの末っ子で「褒められたら伸びるタイプ」。愛犬を溺愛し、ディズニーが大好き。YouTube「ちゃあぽんのちゃぽチャン!」(https://www.youtube.com/@user-tu7qm5of1w)も更新を続けている。

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