「気持ちは常に青コーナーから」いかつい出で立ちとは対照的 アレクサンダー大塚の素顔
「リアル1・2の三四郎」ことアレクサンダー大塚。藤原組でデビュー後、バトラーツに所属し、プロレスと並行してPRIDE・4で“路上王”マルコ・ファスにTKO勝ちするなど、総合格闘技でも活躍した。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.123】
「リアル1・2の三四郎」ことアレクサンダー大塚。藤原組でデビュー後、バトラーツに所属し、プロレスと並行してPRIDE・4で“路上王”マルコ・ファスにTKO勝ちするなど、総合格闘技でも活躍した。
現在も「藤波辰爾 50周年ファイナル」(12・1東京・代々木)大会など、さまざまな大会に参戦しているが、その存在感は抜群。本人は謙遜して照れるだろうが、今やレジェンドの一員といっていい。
坊主頭にぶ厚い胸板……いかつさ全開のボディを誇るが、実は繊細で礼儀を重んじる男。先日も静岡・浜松のイベントに飛び入り参加。急なリクエストにも絆を大切にして登場してくれた。
東京・南千住の“神様”カール・ゴッチさんのお墓にも「自分は直接の面識はないですが、藤原喜明さんに師事していたので、ゴッチさんの孫弟子に当たります。プロレスの神様にごあいさつを」と、お線香を持参して訪れている。
食事会ではサンマの丸焼きを骨だけをきれいに残して、上手に平らげたのには感心どころか、びっくりさせられた。大きな体を小さくしながら、テーブルをサッときれいに片づける姿も、リング上のファイトからは想像もつかない。
ディズニーファンとしても知られており、オフにはディズニーリゾート通い。2週間、毎日通ったこともあるというから筋金入りだ。キャラクターのコスプレ姿も目撃されており、顔見知りのキャストもたくさんいるようだ。
お嬢さんはサンリオも好き。サンリオ展示会に来場し親子で楽しんでいたが、その後の食事会ではお嬢さんが、自分の分だけでなくアレクの好きな飲み物も持って来てそっと置き、またその逆もあり。黙っていても以心伝心の様子から、本当に仲の良い父娘だということが伝わってきた。
アレクの入場曲は「青コーナーから」が有名。「聴くと元気になる」「落ち込んでいたけど、頑張らなければと思った」など、ファンを奮い立たせる名曲だ。コロナ禍以前に、赤コーナーから姿を現すと「何だ! 赤じゃないか!」というヤジが飛んでいたが「そうなんですよ。自分も『え、赤コーナーからかぁ…』と思ったんですよね」と、ちょっと照れたように穏やかに笑っていた。
最近では、気にしない団体や選手も多くなったが本来、赤コーナーはチャンピオン、または先輩や格上の選手。青コーナーは挑戦者、あるいは後輩やキャリアの浅い選手、というのが通例だった。
アレクは「キャリアを積んでも、青コーナーから。例え赤コーナーからの入場でも、気持ちは常にチャレンジャー。青コーナーからです」と言い切る。胸に秘めた熱い想いが伝わって来る。
そして「もちろん試合でもそうですけど、人間としてもいくつになっても勉強です。世の中には知らないことがたくさんあります。だから学びが必要。それは学校の勉強という意味ばかりではなくて。自分自身まだまだ勉強中なので、こちらも青コーナーです」とニッコリ。
最近は歴史に興味を持ち、いろいろと調べたり、その地を訪れたりと悠久のロマンを感じているようだ。
今では坊主頭のレスラーも多いが「最初にツルツルにしたのは自分だと思うんですけどねぇ。専売特許だったのに、今じゃ多いですもんね」と苦笑い。
こうなったら、坊主頭軍団を結成し「ノーフィアー!」ならぬ「ノーヘアー!」とやってほしい気もする。
とにかく温和で優しく、細やかな気配りもできるアレク。レスラー仲間からも「本当に強い人は優しい」と評されている。
年齢を重ねても、ゴツイ体をキープし、コンディションも上々。力強く豪快なジャイアントスイングも健在だ。
みなさんの人生は赤コーナー? それとも青コーナーだろうか?
ベテランの域に達しても、決して驕る事のない謙虚な姿勢を貫き「僕の中では死ぬまでチャレンジャー(AOcorner魂)でいたいと常に思っている」とキッパリ。アレクの生き方。見習いたい。