【鎌倉殿の13人】山本耕史、シリアスな場面で思わず抱いた疑問「これ、僕脱ぐ必要あります?」

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜、午後8時)が、12月18日に最終回(第48回)を迎える。同作は三谷幸喜氏が脚本を手がけ、平安末期から鎌倉前期を舞台に、鎌倉幕府が誕生する過程で繰り広げられた権力の座をめぐる駆け引きを、北条義時(小栗旬)を主人公として描く。放送は1月9日からスタートし、撮影は1年半にわたって行われた。

「鎌倉殿の13人」で三浦義村役を演じた山本耕史【写真:(C)NHK】
「鎌倉殿の13人」で三浦義村役を演じた山本耕史【写真:(C)NHK】

三谷幸喜作品の魅力は斬新さ「視聴者の期待を裏切っていく」

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜、午後8時)が、12月18日に最終回(第48回)を迎える。同作は三谷幸喜氏が脚本を手がけ、平安末期から鎌倉前期を舞台に、鎌倉幕府が誕生する過程で繰り広げられた権力の座をめぐる駆け引きを、北条義時(小栗旬)を主人公として描く。放送は1月9日からスタートし、撮影は1年半にわたって行われた。

 最終回を前に、三浦義村を演じた俳優・山本耕史の取材会が行われた。山本は三谷氏が手がけた大河ドラマ「新選組!」(2004年)、「真田丸」(2016年)にも出演。「新選組!」では局長の近藤勇(香取慎吾)を支える副長・土方歳三役、「真田丸」では豊臣家家臣の石田三成を演じた。今回の「鎌倉殿の13人」で“三谷大河”3作目となる。

――義村役を全うしての気持ちと、土方歳三・石田三成役との比較。

「3作品の中で、最初から最後まで出ているのが『新選組!』と今回の『鎌倉殿の13人』になります。ポジション的にも、(土方と義村は)“主役の相棒”というか、“一番近くにいるような存在”というところで共通している。土方さんの場合は、近藤をのし上げるために自分が二番手にまわり、彼のために人生を捧げます。でも今回の義村に限っては、立ち位置は近いんですけど、全く忠義というものが違う場所にある。主役の義時の盟友ではあるんですが、どの瞬間も『三浦の存続』を考えている。土方さんとは立ち位置が似ているけど、真逆のことを描いている。『真田丸』に関しては、すごく武骨で忠義の人間である石田三成公を演じて、気持ちよく人生を全うした役でした」

――ドラマの中で人生が終わっていない義村。

「『新選組!』の土方もそうなんですけど、鎌倉殿の義村は大河中に人生を終えてないんですよ。唯一、『真田丸』の石田三成だけは(劇中で)人生を全うしましたが。大河ドラマって、いろんな人が参加していろんな人が去っていく。1シーズンで花を咲かせてパッと散っていくのが大河の気持ちよさでもあって、今回はそれがなかった。土方さんもなかったですが、幸せなことにあのときは続編があったので、人生を全うして自分の中でその役を終えられました。義村はまだ生きているので、(最終回を迎えても)“終わった感”が実はないんですよね。この先も義村は生きてますから、僕の中ではまだ生き続けている役です」

――3作通して感じる“三谷大河”の魅力。

「『新選組!』が三谷さんの初大河作品。スピード感や飛ばす部分の切れ味など、大河という世界の中で、確実にどんどん腕に磨きがかかっていると思います。例えば『真田丸』で『関ヶ原の戦い』を描かないとか(笑)。普通、表舞台を全面に描くところをそうしないのが、三谷さんらしいところ。『そのとき、彼らは何をやってたんだろう』という部分を非常におもしろく描く。そこが三谷さんらしさ。視聴者の期待を良くも悪くも裏切っていく斬新さは、三谷さんしか見たことがないかな」

「真田丸」での「関ヶ原の戦い」は、真田家に仕える忍びの佐助による報告のみで描かれており、当時SNS上で「超高速関ヶ原」「大河史に残るぶった斬り」と話題になった。

「今回の鎌倉殿も、(源義経と武蔵坊弁慶の最期を描いた第20回で)、普通だったら武蔵坊(佳久創)が(体中に矢が刺さって)立ったまま死ぬところ(弁慶の立ち往生)を見たいでしょ。当たり前にあるシーンだと思ってたから、ああいうところを描かないとか」

 20回では義経(菅田将暉)が館の隙間から弁慶の活躍を見守り、弁慶の声だけが聞こえるという演出で最期の様子が描かれた。弁慶の立ち往生や義経の自害シーンが映ることはなく、義経の首が入った桶を前に兄・頼朝(大泉洋)が涙する場面に移っている。

「『新選組!』の時は基本的に全部描いていて、青春群像の感じがしました。『真田丸』も堺雅人さん(主人公の真田幸村)が出世していく物語。今回の鎌倉殿は、出世は出世なんだけど、時代に呑み込まれながら、自分の信念を捻じ曲げながらも、義時が北条のために命をかけて生き抜く話。今回の鎌倉殿は、そこを内側から見せたような、より斬新さに磨きがかかっていたんじゃないかな。『なぜあの出来事が起きたのか』を、内側からひも解いていく。そこに、三谷さんらしいおとぼけやコメディー部分を織り交ぜていて、素晴らしかったと思います」

――シリアスな中にもコメディーを入れたシーン。

「21回で義時の妻・八重(新垣結衣)さんが川に流されて亡くなった時に、僕は上半身裸になっていますが、『これ、僕脱ぐ必要あります?』って聞いたんです。川に入るんだから、袴を脱ぐか、袴をまくりあげるかですよね。上を脱いでも僕は濡れないから(笑)。でも、『見ている人の視線を1回ごまかしたいんだ。重たくなりすぎるシーンなので、ちょっと義村の裸体で気をそらしたい』って言われて。すごいな、そこまで計算できてるんだって。おそらく三谷さんにとっては、ああいうシーンこそ、もってこいな瞬間なんだと思います。普通だったらシリアスからシリアスに持っていくけど、そこを三谷さんは1回外す。ずっと緊張させない」

――最終回について。

「義村は自分が思っていたことを吐露する唯一のシーンがあって、そこも三谷さんらしいテイストで。あんまりしっとりさせて本気の感じだと三谷さんのテイストは出ないし、コメディーに寄せ過ぎるともったいない。『その2つが両立するにはどのくらいの調子がいいのか』というのを、あのシーンだけは考えたかな。普段はあんまりやらないんだけど、自分で自分をどんどん演出していったというか。いろんな振り幅ができたんじゃないかと思ってます」

 源実朝が亡くなり勢いを増す義時。舞台はついに朝廷との戦い「承久の乱」に突入する。最終回は12月18日放送に放送される。

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