【鎌倉殿の13人】山本耕史“裏切り者”三浦義村役に罪悪感は「全然なかった」 台本に「わくわく」
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜、午後8時)が、12月18日に最終回(第48回)を迎える。平安末期から鎌倉前期を舞台に、鎌倉幕府が誕生する過程で繰り広げられた権力の座をめぐる駆け引きを、北条義時(小栗旬)を主人公として描く同作。放送は1月9日からスタートし、撮影は1年半にわたって行われた。
演者も「義時と義村、ほんとひどいよね」と裏切りに驚き
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜、午後8時)が、12月18日に最終回(第48回)を迎える。平安末期から鎌倉前期を舞台に、鎌倉幕府が誕生する過程で繰り広げられた権力の座をめぐる駆け引きを、北条義時(小栗旬)を主人公として描く同作。放送は1月9日からスタートし、撮影は1年半にわたって行われた。
最終回を前に、三浦義村を演じた俳優・山本耕史の取材会が行われた。義村は義時のいとこで友人でもあるが、御家人たちに手のひらを返しながら巧みに生き残っていく。「古参の御家人の中で最も長く生きる御家人」を演じた山本が、三浦義村という人物について語った。
――裏切りながら生き残っていく「三浦義村」について。
「台本を読み進めていくにつれて、僕ら(演者)も『義時と義村、ほんとひどいよね』ってなったんですよ。でもよくよく考えると、義村って最初から言っていることは変わらない。第1回から48回まで、一貫していることに気づきました。相手が誰であろうと『出る杭を打つ』だけで、全く変わらない男じゃん! と」
――義村の生き方について。
「彼の生き方っていうのは、本当にのらりくらりと、いろんなところにちょいちょい行くんですけど、実はその生き方自体に迷いがないというか。まっすぐ目的に向かうというか。北条からも和田家からも比企家からも頼られ、すごい人物だから頼られるわけですよね。『三浦が味方につく方が残っていく』のは史実上でもわかる通りで。大河ドラマの中では『まっすぐ生き抜いたな』というのが率直な感想です」
――純粋な青年からダークヒーローとなった義時と変わらない義村。対比を引き立たせた役作り。
「義時は後半に向けて“闇堕ち”します。彼が変わっていったからこそ、“義村はそのまんま”っていうのが際立ったと思う。義時や和田義盛(横田栄司)、畠山重忠(中川大志)も、どんどんひげを蓄えて(容姿も)変わっていく中で、『義村は一貫して何も変えないでいこう』と思って。義村はメークも変えてないです。大河ドラマでは普通は“老けメーク”といって、白髪を出したりしわっぽくしたり、どんどん老けさせるんですけど、僕は一切(変えずに)『おんなじようにしていこう』と。実は僕が提案してそのままでいたんですよね。彼の考え、思惑、思想、容姿。全部第1回から統一している。衣装は1回変わりましたけど、(義時との)対比が、お互い引き立つようにしました」
――仲間を翻弄する義村を演じて「罪悪感」は?
「全然なかったですね(笑)。むしろ『どっちにつくんだろう』って、わくわくしましたよね。台本のページをめくって、『なるほど、こっちにつくんだ!』と思って次のページをめくったら、『あいつ、話にのってきた』と。どっちにつこうとしてるんだ?と、自分でもよく分からないときがありましたよ。無二の友であろうが、義村にとって『出る杭は打つ』。梶原景時(中村獅童)が力になりそうな時は景時を必要としただろうし、でも出てきた杭は、義時であろうと打つ。そこに迷いがないからむしろ気持ちいい。『こっちに傾いて落ちるか、こっちに重心を置いて保つか。どこまでこの橋を渡り切るか』という、絶妙ギリギリのバランス。義村の勘と判断力のすごさは、台本を見ていて爽快でした」
――心苦しかったシーンは?
「強いて言えば、45回の公暁暗殺かな」
公暁(寛一郎)の乳母夫(めのと)である義村は、公暁の父・源頼家(金子大地)の死の真相を公暁に暴露。「義時と源実朝(柿澤勇人)を許してはならない」とたきつけ、公暁は叔父の実朝を暗殺した。しかし義時から疑われた義村は、助けを求める公暁を殺害し、その首を義時に差し出した。
「自分が公暁をたきつけておいて、失敗に終わったから『手を打っておかないと三浦が危うい』と。あの場面は、寛一郎君がきれいなまなざしできれいな未来を演じていて、彼の憂い、悲しみが役にまとっていました。そこに真顔ですっと小刀を仕込む。ある意味、義村っぽいんだけど、『うわ、かわいそう……』と思ったかな。公暁から『これからもよろしくな』と言われて、『もちろんでございます』って答えて、『それにしても、どんなときでも腹は減るもんだなぁ』なんて言ってる後ろからサクっといくんですから。すごいですよね」
同作では、劇中の義村の「癖」がSNS上でも話題になっている。44回で義時の息子・泰時(坂口健太郎)は、公暁が実朝の暗殺を企てていることに気づく。義時と泰時は育ての親である義村のもとを訪れ公暁の計画を探るが、義村は「若君が?冗談じゃない」「鎌倉殿に取って代わろうなどというお気持ちはない」と言いながら襟を直していた。義時は、「あいつは言葉と思いが逆のときに、必ずこうする」と襟を直す仕草をし、義村のうそを見抜く。取材会で山本は、この「癖」についても語った。
「ここは台本を作るときに二転三転したんですけど、実は僕、1回から見てみるとこの癖を結構やってるんです。(脚本の)三谷幸喜さんは当初、僕がやったことがないシチュエーションを書かれていましたが、『どうせなら見慣れた仕草でやれないか』と。その中で『義村さんって、襟を触るのが印象的ですよね』という話になりました。僕、もちろん自分で襟を触っている自覚はあるんですけど、『果たしてどんなシーンでやっていたのか』って考えると、見事に“そういうとき(言葉と思いが逆のとき)”に触ってるんですよ」
――本当の「癖」がいかされた場面について。
山本「31回で義時が比企能員(佐藤二朗)を問い詰めると、比企が『こっちには三浦がついている』と話すシーン。ふすまをバーンって開けると義村が立っていて、『北条とは二代にわたって刎頸(ふんけい)の交わりよ』と言いながら襟を触る。つまり、“言っていることと思いが違っているところ”で触ってる。そういうシーンが何回かあるので、過去の放送を見返す人もいるんじゃないかな」
義村は21回で義時の妻・八重が川に流された時や、45回で義時から「本当は、私に死んでほしいと思ったのではないか」と問われ否定した際にも襟を直している。
――最終回について。
「非常におもしろい幕の閉じ方をしていまして、義時と義村のラストの会話シーンは見応えがあります。『義村っぽくないな』って思った瞬間に義村っぽいところがあり、また手のひらが返っていく感じがすごく爽快でした」
実朝と公暁が亡くなり、勢いを増す義時。舞台はついに朝廷との戦い「承久の乱」に突入する。最終回は12月18日に放送される。