「猪木祭り」と「RIZIN.40」“虚実皮膜”の関係性 見えてきた年末格闘技のテーマとは

YouTubeチャンネル「アントニオ猪木『最後の闘魂』」に「INOKI BOM-BA-YE×巌流島 in 両国(猪木祭り)」(12月28日、両国国技館)に関する動画が2日、公開された。

アントニオ猪木「最後の闘魂」チャンネルに登場し、ダーのポーズをとりながら、自身の“猪木イズム”を口にするRIZIN・榊原CEO
アントニオ猪木「最後の闘魂」チャンネルに登場し、ダーのポーズをとりながら、自身の“猪木イズム”を口にするRIZIN・榊原CEO

「猪木祭り」のスーパーバイザーに就任した榊原CEO

 YouTubeチャンネル「アントニオ猪木『最後の闘魂』」に「INOKI BOM-BA-YE×巌流島 in 両国(猪木祭り)」(12月28日、両国国技館)に関する動画が2日、公開された。

 そこには冒頭に、協力関係にあるはずのRIZIN・榊原信行CEOが、RIZIN色の付いたファイターを出してこないことに触れ、猪木軍の小川直也総監督が谷川貞治プロデューサーを叱咤する「猪木祭り」の会見場面が編集され、それを受けるカタチで榊原CEOが登場する。

「PRIDEやRIZINは猪木イズムで運営している」

 動画では榊原CEOはそう語っているが、「巌流島」のYouTubeチャンネルに登場した榊原CEOは、自身を「猪木イズム最後の継承者です」と語る場面もあり、事実、これまでさまざまな場面で猪木イズムを発揮しながら乗り越えてきたと話す。

「今のポジションになって思うことは、世の中の人たちに元気を発信するためには、猪木さんが言っている、猪木さんの哲学が言い得て妙というか、全て正しいんだよ。誰からも教えてもらっているわけじゃない。それは石井(和義)館長でもなく高田(延彦)さんからも教えてもらってない。誰もまねしてない。ただ、猪木さんのことは、ムッチャまねしてる」(榊原CEO)

 それでも「猪木祭り」が「RIZIN.40」(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)の3日前に開催されるため、「それどころではないのでは?」と問われると、「敵対視してないですよ。次元を超えていると思っているから、『INOKI BOM-BA-YE』は」とコメント。

 よくよく見ると、画面の左上には「RIZIN・榊原CEOが(『猪木祭り』の)スーパーバイザー就任」とある。実際、そのことを振られると、「(榊原CEO自身は)試合はできないですよ、言っときますけど。無理です」と返答する。

 一見しただけだと冗談半分のやりとりにも見えるものの、谷川プロデューサーのこと。榊原CEOに対して、本気でリングに上がってもらえるように、実は交渉していたのではないか。ついそんなことを想像してしまった。

 また、動画では「猪木祭り」のスーパーバイザーに就任した榊原CEOに対し、令和猪木軍の小川直也総監督からのあいさつ映像を見せる。内容は以下の通りだ。

「この度はご協力ありがとうございます。PRIDE、ハッスルの時は大変お世話になりました。またこうやって協力関係にあるということは、何かの縁なのかなーと思っておりますので、ぜひ、ご協力をお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。(少し間を置いて)……こんだけいいあいさつをすりゃあ、大丈夫でしょう!」(小川直也)

 この映像を見終えた榊原CEOは、開口一番「もう終わり? もっと褒めてほしかった」とポツリ。

 続けて「小川さんに、PRIDEのときもハッスルのときも、あれだけ世話したのに、お礼のひとつもお中元もお歳暮も来たことがない。年賀状も。(それなのに)突然、こんな歯が浮くようなことを言われても。なに言っちゃってるのかなーって。でも、変わってないですね。ちょっと丸くなったのかなー?」と明かす。

元K-1・木村“フィリップ”ミノルの相手はRIZINファイター・萩原京平なのか…

 さらに「スーパーバイザーとして、どんなご協力を?」とインタビュアーから問われると、「アドバイスって、プロレスなんで別に」と、2004年に立ち上がったハッスルの立ち上げ会見で、榊原CEOが口を滑らせてしまった“迷言”を再び用いながら、「大して力を使う必要はないでしょう? 全力でRIZINをやりますよ。(『猪木祭り』は)片手間ですよ。オーちゃんが何かやりゃあいいじゃん」と小川総監督への期待を口にする。

 続けて「あとで後悔させてやる、俺をスーパーバイザーにしたことを。全力で潰してやる」と、この辺りからは完全にバラエティー番組的なノリに変わっていくと、「(『猪木祭り』は)谷川さんがやることなので、絶対にポンコツになると思います」と笑いながら、冗談を飛ばす。

「でも『INOKI BOM-BA-YE(猪木祭り)』だから、アントニオ猪木を弔わなくちゃいけない。だったら(猪木さんが残した『馬鹿になれ』の言葉通り)馬鹿になるしかないですよ。きっと小川さんが、むちゃくちゃ馬鹿になってくれると、そう思っています、はい」と話したかと思うと、左腕を上げて、「ダー!」とポーズを取ってみせた。

 ここまでザーッと書き殴ったが、小川・猪木軍総監督と榊原CEOのやりとりは、一見しただけでは漫才のような笑いを含んだようにも見えるものの、先にも書いたように、お互いの大会がニアミスの日程で開催されるとあって、決して笑いでは済まされない興行戦争の側面も見え隠れする。

「猪木祭り」に関しては、K-1を晴れて円満に離れた木村“フィリップ”ミノルが、RIZINファイターとの対戦を熱望し、「萩原京平」の名前を出しているが、これを榊原CEOは調整する気があるのか否か。

 そして、この動画を見終えて、年末の格闘技戦争のテーマがようやく見えてきた気もした。

 それは「誰が“猪木イズム”を一番受け継いでいるのか」。それを証明するための闘いが「猪木祭り」と「RIZIN.40」の間で行われる。そう考えると、両者の間にある、どこからどこまでが本音で、どこからどこまでがうそか分からない“虚実皮膜”の関係に合点がいく。“虚実皮膜”こそアントニオ猪木そのものといっていいからだ。

 ちなみに、動画の最後には「何かがあれば交渉に行きますから」という小川総監督の意味深な言葉で締められており、次なる展開があることも匂わせる。

 ともあれ、前回の「猪木祭り」が2015年大みそかに両国国技館で開催されてから7年ぶりに開催されることを考えると、その間の年末格闘技は「RIZIN」の独壇場だったが、再び双方の大会が激しく火花を散らす様相になった。いや、今回の場合は内に秘めた火花か。

 いずれにせよ関係者からすれば別のプレッシャーがかかるだろうが、いつの世も競争原理が働くことこそ、これ以上ない活性化につながっていくもの。そう考えると、小川総監督と榊原CEOの接点から何が生まれるのか。動向を見守りたい。

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