現役慶大生女子レスラー“無村架純”とは? 大学は飛び級で卒業、夢は弁護士の秀才

慶大のプロレス研究会に女性レスラーがいる――。そんなうわさを聞きつけ、三田祭で行われた“三田祭プロレス”に潜入。人気レスラーの無村架純(なしむら・かすみ)の素顔に迫った。

スターダムとしてのイベント後、インタビューに応じた無村架純【写真:ENCOUNT編集部】
スターダムとしてのイベント後、インタビューに応じた無村架純【写真:ENCOUNT編集部】

プロレスとの出会いは「ほんの軽い気持ち」

 慶大のプロレス研究会に女性レスラーがいる――。そんなうわさを聞きつけ、三田祭で行われた“三田祭プロレス”に潜入。人気レスラーの無村架純(なしむら・かすみ)の素顔に迫った。(取材・文=島田将斗)

 秋を感じさせるような肌寒い天気。黄色く色づいた銀杏の木の下に設置された特設野外リングのマットの上にうわさのレスラーはいた。人気アメコミキャラクターのハーレイ・クインのようなコスチュームに身を包み、マットの上で体を動かし、体格の良い男性レスラー相手に技をかけていた。

 同研究会発行の選手名鑑に目を通すと「彼氏が逮捕」の強烈な5文字。本人に尋ねると「人が経験しないような経験をたくさん積んできたので、ちょっと人生何周目って感じなんです」と照れくさそうに笑った。

 現在は大学3年生。来春には大学を飛び級で卒業し、ロースクールに進学する秀才だ。

「入学したときは、もう勉強は全くせず、遊び回っていまして……(笑)。そのときに知り合った人が犯罪者で、その中でいろいろと巻き込まれました。その際に警察の人とか、弁護士さんとお話をする機会があって、今は弁護士を目指すようになりました」

 プロレスとの出会いは、ほんの気持ち。「サークルを探していたときに私もいろいろ趣味があって、アイドルとかプロレスを探していました。結局そこで残ったのがプロレスサークル。周りのみんながすでにやっていたので、なんとなく自分もやろうかなと1年生の冬にデビューしました」と経緯を説明する。

 フワフワとした雰囲気で入った学生プロレスの道。しかし、今や同団体の王者であり、老舗雑誌にも取り上げられるなど異例とも言える知名度を誇る。無村は現在の心境を明かす。

「学生プロレスって業界があること、ファンの方がいることを知らずに始めてしまったので、なんでこんなになっちゃってるんだろうって、すごい不思議。でもそれならそれで応えていかないとっていう気持ちです」

 人気レスラーでありながら、大学は飛び級で卒業。文武両道を体現しながら自身は「優秀でもない」と謙遜した。

「うちのサークルは他の学生プロレス団体に比べて体育会みたいな色が薄い団体。それこそ練習に毎回行かなきゃいけないわけでもないし、参加しなくてもいいという結構ゆるいサークルです。そういう空気のおかげで、勉強は両立できましたね」

スターダムとのコラボイベントを体を張って盛り上げた無村架純(左端)【写真:ENCOUNT編集部】
スターダムとのコラボイベントを体を張って盛り上げた無村架純(左端)【写真:ENCOUNT編集部】

「必ず4年間で卒業する」ことが学生プロレスの魅力

 女子プロレスを「ヒーローショー、“プリキュア”みたいな存在」と表現する無村。圧倒的に男性が多い学生プロレスの世界で存在感を発揮している。無村は体格差も分かった上で自分の見せ方を考えていた。

「どうしても力の差、体格差はあります。そのため投げ技とかはできないので打撃、絞め技などを覚えていくようにしています。先輩とかOBの方に1つ1つ教えてもらったりしています。私は“にわか”なので分からないことが多くて、その中で教えてもらうことが多いですね」

 仲間に対する信頼も厚い。「私は紅一点として取り上げられます。そのなかで恋愛はどうだとか茶々を入れられることは多いんですけれど、一応命を預け合っています。男女関係なくやっていける絆がある存在だと思っています」とうなずいた。

 学生プロレスに文字通り身を捧げている。当事者だからこそ感じる魅力はどんな部分にあるのか。リングの上で一身に注目を浴びている人気レスラーは「無常さ」だと口にする。

「甲子園と同じで必ず4年間で卒業するという文化です。そこにはかなさを感じますね。先輩とかの卒業を見てもどうしても心に来るものがあります。1年生の頃は全然ダメだった人がどんどんうまくなっていって、見せられるようになっていって、それでもこれ(学生プロレス)の将来はなく、4年間で必ず散っていくというのが感動的だと思います」

 勝った負けただけではない。因縁、抗争、和解などのストーリー全てを含めてプロレスだ。学生プロレスは4年間に全てが凝縮されるということになる。

「同じ学部とか高校が一緒とか。他の団体とは違って全員が慶應生なのでそういう部分で因縁ができたりとかします。でも、みんな結局プロレスという共通点を持ってやれていくっていうのがおもしろい」

 特に思い出に残っているストーリーがあるという。「OBに広瀬くずっていう先輩がいまして、留学をしていて1年遅れで引退したんですけれど、本当の同期だった人が引退試合にきて、技をかけたっていうのが伏線回収というかすごく見ていて感動しました」と熱い。

 学生プロレスでは留学、留年、休学が海外武者修行のような役割を果たしているようだ。「私も卒業自体はずれるので、そういうところで伏線ができるっていうのはおもしろいですね」と白い歯を見せた。

 元々“変わり者”だったという無村だがプロレスから学んだことは大きかった。

「学生プロレスって、はたから見ると、結構下ネタありきでネタばっかりで蔑(さげす)まれがち。でも、そういうことを自信持ってできるとか、私は見た目も派手なので、そういうところを容赦なくできるようになったっていうのはあります。他人は他人。私は自分のやりたいことをやるということです」

 引退後の将来の夢とは何なのか。

「弁護士という職業に就きたい。その中でもやっぱりプロレスもそうですけれど、サブカルチャーとエンターテインメントが、自分の人生の主軸だと思っています。もし、弁護士になった際には、それこそプロレス団体とかの顧問、弁護士とか、基盤として支えられるような存在になりたいです」

「ちょっとおもしろく、楽しく散りたい」と自身の引退を想像する。21歳という若さで、すでに多くを経験した無村らしい。ほんの一瞬の学生生活。月下美人のようなレスラー人生は多くの人の目に焼き付いている。

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