テレ東官邸キャップ・篠原裕明氏の意外な経歴 入社当初はバラエティー番組で前説経験

テレビ東京の報道局に所属し、官邸キャップとして活躍する篠原裕明氏。さまざまな報道番組に解説者として出演するが、最近はニュース配信サービス「テレ東BIZ」YouTubeチャンネルの「テレ東 官邸キャップ篠原裕明の政治解説」の政治解説が分かりやすいと好評だ。10月19日からは「60秒で学べるNews」(毎週水曜、午後9時)でレギュラー解説者を務めている。テレビ東京の報道の顔の一人だが、入社当初は「ゴッドタン」などバラエティー番組の制作に携わるなど意外な経歴を持つ。篠原氏の素顔と報道に取り組む姿勢、こだわりを聞いた。

「60秒で学べるNews」の解説者・篠原裕明氏【写真:(C)テレビ東京】
「60秒で学べるNews」の解説者・篠原裕明氏【写真:(C)テレビ東京】

「ゴッドタン」の制作も経験、今は「60秒で学べるNews」の解説者

 テレビ東京の報道局に所属し、官邸キャップとして活躍する篠原裕明氏。さまざまな報道番組に解説者として出演するが、最近はニュース配信サービス「テレ東BIZ」YouTubeチャンネルの「テレ東 官邸キャップ篠原裕明の政治解説」の政治解説が分かりやすいと好評だ。10月19日からは「60秒で学べるNews」(毎週水曜、午後9時)でレギュラー解説者を務めている。テレビ東京の報道の顔の一人だが、入社当初は「ゴッドタン」などバラエティー番組の制作に携わるなど意外な経歴を持つ。篠原氏の素顔と報道に取り組む姿勢、こだわりを聞いた。(取材・文=中野由喜)

「政治記者になりたいと思い2004年にテレビ東京に入社しましたが、当時の会社は制作局を強化するため人員を増やそうとしていました。新入社員に報道志望が3人いましたが報道に配属されたのは1人だけ。私は希望とは別の制作局に配属となりました」

 大学は政治学科、学生時代は議員秘書のインターンも経験していた。

「最初はショックでした。頭をかち割られるような思いでした」

 まさかの配属先だったが制作の先輩に言われた一言が今も胸に刻まれている。

「『使える人間はどこに行っても使える。もし君が報道に行って使える人間なら制作でも使える人間ということ』。そう言われて気持ちを切り替えました。じゃあ、ここで使える人間だと評価されるようになろうと」

 意外にもバラエティー番組で今の報道に生かせる学びがあった。

「平日夕方のバラエティー『シブスタ』や歌番組も担当し、観覧者を前に番組の前説もやっていたんです。2000人くらい入るホールもありました。結構うけたんですよ。そこで目の前の人を笑わせ、喜ばせながら話すコツを感覚的につかむことができたと思います。今、報道番組で話すときも一方的に話すのではなく、受け手がここでつまずくんじゃないか、分かりにくいかも、ということを事前に考えて話しています。政治解説にバラエティーの前説の経験が生きています。政治記者でバラエティー番組の前説の経験がある人はいないと思います(笑)」

 篠原氏の解説がなぜ分かりやすいか合点がいった。

「こちらの意図をちゃんと伝え、お客さまが飽きないようにところどころ笑いを入れる。つまり話を聞いてくれる人を置いてきぼりにしない。いいトレーニングだったと思います」

 06年7月に報道局に異動になった。どんな思いだったのか。

「当時の制作局の幹部からは君は制作に向いているから、もう少しいないか、と言われました。僕としては同期の記者が最前線で頑張っていたこともあり、1日も早く記者にと思っていたので異動はとってもうれしかったです」

 バラエティー番組が嫌なわけではない。小3のときには「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」に、高校時代は「NHKのど自慢」にも出演した。知らない人から声をかけられるようになりテレビの力を知った。

「バラエティーは自分の原点だろうなと思っていたので、やっている時は楽しかったです」

「60秒で学べるNews」のロゴマーク【写真:(C)テレビ東京】
「60秒で学べるNews」のロゴマーク【写真:(C)テレビ東京】

目標とするジャーナリストは「池上彰さん」

 子どもの頃からテロップなどテレビの裏側に興味を抱くほどテレビ好きだった。今は念願かなって情熱を注いでいる報道の仕事。こだわり、大事にしていることを聞いてみた。

「上から目線にならないよう、同じ目線で伝えられるようにと思っています。皆さんも分かりにくいでしょ、僕も分かりにくいです、と共感しながらやれたらと思っています。たとえば総理に質問して分かりにくい回答のとき、文字に起こして、ここは曖昧ですよね、など、同じ目線で解説することを心掛けています。僕は鋭いとか、賢いとか、政治に詳しいと思ってもらわなくてもいいと思っています。大事にしているのは『私たちと同じ感覚をもって取材している』と思って共感してもらうこと」

 数年前、驚くことがあったという。

「ネットに『記者なのに私たちと同じ感覚で質問をしてくれている』という書き込みがあったんです。記者は国民の感覚を代弁するものと僕は思っています。今、多くの国民の皆さんが、記者は特別な存在で自分たちのことは分かっていないという感覚で見られていたことに驚きました。記者は普段ニュースを見てくれる方と同じ一国民として生活しています。そういう気持ちでニュースを伝えるのは大事」

 10月19日開始の「60秒で学べるNews」には、毎回ではないがレギュラー解説者として出演している。篠原氏には初のレギュラー番組。

「ウエンツ瑛士さんという好感度の高い方が番組の中心にいることで普段、報道番組は硬くてという人にもニュースを伝えられる貴重な番組になると思います。自分が取材してきたことを『テレ東BIZ』以上に分かりやすく伝えたいと思います」

 番組はニュースが60秒で分かるというコンセプト。

「昔、田原総一朗さんが話していたことですが、物事を一言で伝えられないときは、それは
自分自身が理解できていないということだと。自分が理解できていれば難しいことも一言で言えると。僕もその通りだと思い、一言で言えばどういうことかと、いつも自問自答しています。60秒にプレッシャーはありません」

 目標とするジャーナリストを聞いてみた。

「池上彰さんです。ニュースは20年くらい前までは難しく伝えることも一つのステータスだったと思いますが子どもでも分かるように伝えるのは当時、革命的だったと思います。その先駆けの池上さんが目標。実は子どもの頃、『週刊こどもニュース』の出演の話もきたのですが塾と両立できず断ったんです(笑)」

 将来、報道番組のメインキャスターへの意欲はどうだろう。

「まだまだ現場で取材していたいという気持ちが強いです。ただ、将来、物事を分かりやすく伝えるなら篠原だと、思っていただけるときがきたら、与えられた機会を全うしたいと思います」

 素顔も気になる。好きな神田伯山のラジオを聴き、講談だけでなく近年、落語も好きで寄席にも行くという。

「楽しいだけでなく、プロの上手な話し方を聞いていると、自分が話すときの参考になります。たまに僕のニュース解説を聞いた人から『篠原さんが落語好きというのが分かる。寄席に行っているような気持ちになる』と言われます。趣味が実益になっています。寄席だけでなくコンサートなど生のエンターテインメントを見ることで自分も表現者として刺激を受けますし癒やされます」

 最後にジャーナリストとしての目標を聞いてみた。

「複雑で分からないことが多い社会。何かあったらテレ東に聞いてみたい、篠原に聞いてみたいと思われる存在になりたいです。僕の意見はこうだ、ではなく、何か分からないときは篠原に聞けば納得いく説明をしてくれるんじゃないかと思われるジャーナリストです」

□篠原裕明(しのはら・ひろあき)1981年8月4日、東京生まれ。早大卒業後、2004年4月にテレビ東京入社。制作局に配属されバラエティー番組などエンターテインメント系の番組を担当。佐久間宣行氏が企画した深夜番組「ゴッドタン」の立ち上げにも参加しチーフアシスタントディレクターを務めた。その後、06年7月に報道局に異動し、社会部を経て、総理番、野党キャップ、民主党政権で与党キャップを担当。18年7月から官邸キャップに。19年、ニュース配信サービス「テレ東BIZ」が開設され、政治解説が分かりやすいと好評。好きな音楽は中島みゆき、松任谷由実。講談や落語も好む。

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