【電波生活】「ザ・トラベルナース」と「ドクターX」の違い 両ドラマ手がけた番組EPが明かす舞台裏
人気番組や注目番組の舞台裏や魅力を探る企画。今回は1日に第7話が放送されるテレビ朝日系ドラマ「ザ・トラベルナース」(木曜午後9時)。「ドクターX~外科医・大門未知子~」を手掛けたテレビ朝日のエグゼクティブプロデューサー・内山聖子さんと脚本家・中園ミホさんがタッグを組んだ新たな医療ドラマ。アメリカで医師を補助して一定の医療行為が可能なナース・プラクティショナーとして働いていた那須田歩(岡田将生)と謎多きスーパーナース・九鬼静(中井貴一)が医療現場に旋風を巻き起こす姿を描く。内山さんに看護師が主人公の理由、「ドクターX」とのコラボの可能性、岡田と中井の舞台裏の様子も聞いた。
テレビ朝日のエグゼクティブプロデューサー・内山聖子さんが明かす舞台裏
人気番組や注目番組の舞台裏や魅力を探る企画。今回は1日に第7話が放送されるテレビ朝日系ドラマ「ザ・トラベルナース」(木曜午後9時)。「ドクターX~外科医・大門未知子~」を手掛けたテレビ朝日のエグゼクティブプロデューサー・内山聖子さんと脚本家・中園ミホさんがタッグを組んだ新たな医療ドラマ。アメリカで医師を補助して一定の医療行為が可能なナース・プラクティショナーとして働いていた那須田歩(岡田将生)と謎多きスーパーナース・九鬼静(中井貴一)が医療現場に旋風を巻き起こす姿を描く。内山さんに看護師が主人公の理由、「ドクターX」とのコラボの可能性、岡田と中井の舞台裏の様子も聞いた。(取材・文=中野由喜)
「看護師が主人公の理由は『ドクターX』に由縁があります。『ドクターX』でよくモデルにさせていただいていた臓器移植で有名なアメリカのスーパードクター・加藤友朗氏を取材した際、先生自身が病気になった時に救ってくれたのがナースだったとお聞きし、興味を持ちました。アメリカではスーパードクターは手術の際、自分の右腕として有能なトラベルナースを呼ぶそうです。高いスキルを持ちギャラも高い。そんな話を聞いて新しいスペシャリストの作品を作れたらと思ったのが入り口でした」
中園さんとはどんな物語にしようと話したのか。
「実は加藤先生の話を一緒に聞き、面白いと言っていましたが、『ドクターX』のナース版になってしまうと、ただの派生物のようなドラマになるので、それは避けたいと話しました。患者さんと病院が向き合っていく時の“常識”のようなものが日本にはたくさんあります。医師は患者を選べても患者は医師を選ぶことはできないとか。そういう常識をひっくり返そうと話しました。そのテーマのためにアメリカ帰りの優秀なナース(歩)が、能力があっても日本では医師より前に出ることができないとか、嘘つきのナース(静)が常識をひっくり返していく話ができたら面白いといった雑談もしましたね」
「ドクターX」との違いをどう意識しているのか。
「全く違うものを作っているつもりです。つまりスペシャリストの話というより人間の持っている哲学の話だと思って作っています。今回は風変わりなナースではありますが、私たちの生活に近い感じが出ていると思います」
「ドクターX」ではしっかりした取材でリアリティーを追求した。今回の取材の様子を尋ねると意外な気付きがあったようだ。
「ナイチンゲールは優しい女性と思っている人が多いと思いますが、『ドクターX』の時にお世話になった看護指導の方にナースの本音が書いてある本や、ナイチンゲールの本を頂いて、そういう常識とは全く違う姿をそこで知りました。実は彼女は改革者であって数学者であり、病院改革を行っていた人。リアルなナースの現場も密に取材していますが、この作品で私はナイチンゲールの本を読み、私たちの持っている常識を、ドラマを通して覆していきたいと思っています」
確かにナイチンゲールにはクリミア戦争の負傷者に対し献身的に尽くした天使のような看護師のイメージを持つ人は多いと思う。
「実はすごく怖い面もある女性だったようですが、病院の不衛生な部分やベッド数など、いろんな統計資料を作成しながら病院改革を行った人なんですね。資産家で医師になる金も知識をありながら看護師になり、私たちの既存の常識やルーティンでは考えられないことをした。今回、実際の看護師さんの大変な様子や医師に振り回される現実も取材しましたが、それら取材した全部をひっくるめてもナイチンゲールの話にひかれました」
ドラマでも主軸の歩と静の2人が病院改革につながるような動きをしている。
「人を見て人を治す。中井さんが演じる静が言っているせりふですが、患者の病気だけでなく一緒に働いている同僚や病院の天乃院長(松平健)や看護部長(寺島しのぶ)も治していきます」
岡田と中井の現場の様子は…「付き合っているんじゃないかと思うくらい」
作品の主軸の一人・静はナイチンゲールがモデルということか。静は柔らかい物腰だが、ここぞという場面で痛烈な一言で相手を一刀両断し、視聴者を爽快な気分にしてくれる。
「中井さんが演じる静のモデルはナイチンゲールです。こだわりは、ナースの日常の苦労とか患者とのヒューマンストーリーとは違う視点を入れたかったということ。人間の持つ常識とか当たり前のことがコロナ禍も経て通じなくなっています。そう考えると、そもそも常識を疑ってこなかったというのもあったなと。ナイチンゲールを通して常識を疑っていくというか、自分の頭で考えた常識を作っていくドラマになればと思います」
主人公は静ではなく歩だが、主軸を1人でなく2人にしている理由は何か。
「ナイチンゲール(静)が主役だとちょっと現実離れする気がしました。今を生きる仕事人としての歩がいて、そこにナイチンゲールみたいな人がやってきたというボーイ ミーツ ボーイが今の時代らしいと思いました。女の園のイメージがある白衣の天使の中に男性ナースが2人いるとか、ナイチンゲールなら普通は女性の設定と思われるところを男性にする。かつ、その人が主役ではなく、そういう人がやって来たら面白くなるとか、当たり前の設定にしないことが2人そろえた理由です」
岡田と中井の現場の様子も聞いてみた。
「付き合っているんじゃないかと思うくらい仲がいいです。いつも2人でコソコソしゃべっています。最初は中井さんが岡田さんの面倒を見ているのかと思ったのですが、何か本当に“恋人同士のように”ということでもないですが、2人で内緒話をしたり、はにかんで笑っていたりしています。たまに私も2人の話の中に入りづらい時があります(笑)」
ナレーションを「ドクターX」で医師・海老名敬を演じる遠藤憲一が務めている。医師役で今後登場する可能性があるのか、2作品のコラボについて聞いてみた。
「『ドクターX』の色をどう外すかが今回悩んだポイントでもあったので、『ドクターX』にレギュラー出演してくださっている方のキャスティングは一切やめて、『ドクターX』から離れると決めました。遠藤さんは約20年前、私の中で転機になったドラマのPRでナレーションを務めてくださったことがあり、その時の声がふくよかで素晴らしかったんです。そういった理由で、今回は海老名先生とは全く関係なくお願いしました。なので、ナレーションは海老名先生ではないです(笑)」
最後に、あらためて「ドクターX」の出演者が出演する可能性を確認した。
「いたしません(笑)」