檀れい「私は崖にしがみついている子猫」 高い試練だった「武士の一分」でのヒロイン
「30th Anniversary Special Live 2022 Ray 光 / 虹」(11月23日、12月7日、東京・ 丸の内のコットンクラブ)と題する30周年記念ライブを開催する女優・檀れい。ライブでは「楊貴妃の再来」とも言われた中国公演でも大好評だった中国の歌「永遠」も披露する。思い出の中国公演、息抜きの時間の過ごし方も明かした。
多忙な日々の息抜きは保護猫とのおうち時間
「30th Anniversary Special Live 2022 Ray 光 / 虹」(11月23日、12月7日、東京・ 丸の内のコットンクラブ)と題する30周年記念ライブを開催する女優・檀れい。ライブでは「楊貴妃の再来」とも言われた中国公演でも大好評だった中国の歌「永遠」も披露する。思い出の中国公演、息抜きの時間の過ごし方も明かした。(取材・文=平辻哲也)
2001年、月組トップの真琴つばさの退団に伴い、専科に異動し、外部出演をこなしていたが、03年には星組・湖月わたるの相手役として2度目の娘役トップに就任。2回のトップを務めるのは異例だった。
「2度目があるとは思っていませんでした。1回目は真琴さんに必死についていくだけでしたが、2度目のときはただただ日々を過ごすのではなく、期限を切ろうと思っていました。大劇場公演を4本と決めて。どこまで走れるのか、どこまで成長できるのか、1回1回の公演が真剣勝負でした」
在団中思い出深いのは、月組時代の1999年と専科時代の2003年に2度参加した中国公演だった。1回目の公演時には「楊貴妃の再来」という最大級の賛辞も贈られた。
「1回目の公演はトップ1年目のことだったので、『楊貴妃の再来』と言われても、やめてくださいよ、という感じでしたね。2度目の訪中のときには、向こうの方とちゃんと話したいと思って、中国人の先生を見つけて、中国語を勉強したんです。そのうちに、中国語の歌『永遠』を歌うことになったんです。客席の後ろから歌いながら客席を回る演出で、たった1人でその場を持たせなきゃいけない。本当に細かく発音を徹底的に体にしみ込ませて、頭の後ろの筋肉が凝るくらい練習して臨みました」
中国名「タン・リー」の熱唱はワンフレーズを歌うごとに拍手と歓声の嵐だった。
「形ではない、本物の拍手をこんなにもいただけたんだ、と思いました。あまりにうれしくて、その夜は母に国際電話をかけました」。この中国公演がきっかけになり、「花舞う長安」では楊貴妃を演じ、それが当たり役になった。
退団後の06年には山田洋次監督の「武士の一分」で木村拓哉の相手役としてスクリーンデビューを果たし、映像の世界に挑戦した。
「退団公演中に劇団に直接オファーをいただいたんです。まだ事務所も決まっていなくて、右も左も分からない映像の世界に1人で飛び込みました。すごい方たちに囲まれて、注目度も高い作品。これでダメだったら、私はダメなんだろうなと思って。崖にしがみついている子猫のようでしたね(笑)。いつも自分の手が届かないような、ちょっと高い山の試練がやってくるんですよね。今までそれをよじ登ってやってきた。その繰り返しだったので、これらは自分が成長するための神様からのプレゼントなんだと思っています」
今も映画、ドラマ、ライブのリハーサルと多忙な日々を送っている。その息抜きは、猫との時間だという。
「おうちには、13歳の猫と来たばかりの5か月の子猫がいるんですが、どちらも保護猫。人間が無責任なことをするから、増えてしまうんですね。全部は無理ですけども、ご縁があったら迎え入れたいと思っています。いつも動物に癒やされ、動物に元気をもらっています。この子たちのためにお仕事を頑張っているのかも」と笑う。
死ぬまで女優を続けていく覚悟だ。
「やめたいと思ったこともありましたが、私は本当にこのエンターテインメントの世界が好きなんです。家にいると、ぼんやりしちゃってダメみたいですね。母からは、『本当にあの舞台に立っている、あの人?』と言われたこともあります。劣等生から始まったので、誰よりも一生懸命やって、やっとみんなに追い付く。そういう感覚でいましたね。幕が下りたら、倒れてもいいという思いでやっていました」。30周年ライブでは万感の思いを込めて、臨む。
□檀れい(だん・れい)8月4日生まれ。1992年、宝塚歌劇団に入団。99年より月組トップ娘役を、2003年からは星組トップ娘役をそれぞれ務める。05年に退団。06年、山田洋次監督作品「武士の一分」のヒロイン三村加世役で鮮烈なスクリーンデビューを果たし、第30回日本アカデミー賞優秀主演女優賞及び新人俳優賞・第44回ゴールデンアロー賞ほか、数々の賞を受賞。