コロナ禍はギター修理販売にも不安じわり…楽器演奏の再発見への期待も「自粛が長引けば、収入減は怖い」
新型コロナウイルスの感染拡大と自粛生活は、多くの産業に大きな影響を及ぼしている。楽器の修理・販売の事業者も例外ではない。緊急事態宣言の対象エリアである東京と千葉で、親族で楽器修理と販売の店を営む30代の男性役員は「音楽や楽器のよさに改めて気付くきっかけになってほしいとも考えているが、長期化となれば経済面で怖い思いもある」と複雑な思いを抱えている。
緊急事態宣言下の東京・千葉で営む弦楽器の修理・販売店の経営者が抱える苦悩
新型コロナウイルスの感染拡大と自粛生活は、多くの産業に大きな影響を及ぼしている。楽器の修理・販売の事業者も例外ではない。緊急事態宣言の対象エリアである東京と千葉で、親族で楽器修理と販売の店を営む30代の男性役員は「音楽や楽器のよさに改めて気付くきっかけになってほしいとも考えているが、長期化となれば経済面で怖い思いもある」と複雑な思いを抱えている。
男性役員は親族と一緒に、千葉県内でギター・弦楽器の修理工房を営み、自身は都内のギター販売店で店長を務めている。コロナ禍が拡大していく中で、そこまで売り上げに影響はなかったが、7日の緊急事態宣言の発令を受けて、営業時間を短縮している。じわじわと影響も。修理した楽器の街中にある楽器屋への納品だ。50代の配達担当のスタッフの感染リスクを考慮したこともあり、月8回の納品回数は2回に減少。「楽器屋さんからは『とても助かる』と言われるが、感染リスクを考えると難しいところ」と明かす。
営業を続ける都内のギター販売店では、マスクを着用し、接客時に2メートルの距離を保ち、換気を行って予防対策を実施。しかし、ギターは乾燥に弱いため、重要な湿度管理にも頭を抱えている。都内の店でも修理を受け付けているが、配達業者が予約制を導入し始めているといい、配送の手配が難しくなっている側面もあるという。
活気を取り戻したい楽器業界にとって、コロナ禍は影を落としかねない。自粛生活の中で、ミュージシャンによる音楽コンテンツの配信が増え、個人の楽器演奏の時間が確保できることも確かだ。ただ、男性役員は「最近来たお客さんには、『休みだから(楽器を)手に取る』とか『いい機会だから直したい』、『家にいる時間が長くてネットで見ているうちに欲しくなった』という人もいる。これを機に、楽器への興味が増すようになってほしいけど、買ってくれるかは別問題。それに、あくまで娯楽品なので、家計の収入が減れば、優先度は低くなる」と複雑な表情だ。
ギターの修理には時間がかかるため、現在は向こう3か月ぐらいの仕事のストックはあるというが、「終息の見通しがわからないので、このまま自粛生活が長引けば、収入減は怖いところ」と不安の思いを口にした。今後はYouTubeを活用して、例えば火事で燃えてしまったギターの修理をわかりやすく解説するような動画を配信し、楽器修理のPRを検討しているという。悩ましい状況が続くが、しっかりと前を向いている。