国際男性デーに合わせ“男性専用車両”が実現 「男性への性被害考えるきっかけに」
国際男性デーの19日、男性差別撤廃を目指すNPO法人「日本弱者男性センター」が、東京さくらトラム(都電荒川線)を貸し切って“男性専用車両”イベントを行った。
東京さくらトラムを貸し切って男性の乗客やスタッフら13人が乗車
国際男性デーの19日、男性差別撤廃を目指すNPO法人「日本弱者男性センター」が、東京さくらトラム(都電荒川線)を貸し切って“男性専用車両”イベントを行った。(取材・文=佐藤佑輔)
イベントを主催した日本弱者男性センターは、女性差別やマイノリティーへの差別が大きな注目を浴びるなか、話題にすら上がることのない男性への見えない差別をなくそうと今年7月に認定を受けたNPO法人。「弱者男性」とは、独身、貧困、障がいなど、社会的弱者となる要素を備えた男性を指すネットスラングのことで、近年ではSNSでも度々トレンド入りするなど一般的な単語となっている。
車両乗車の条件は一般的な女性専用車両と同様で、女性でも障がい者やその介助者、小学生以下の子どもなどは乗車可能。午後1時、三ノ輪橋駅に貸し切り車両が到着すると、イベントの趣旨に共感した男性を中心にスタッフを含め13人が乗車し、早稲田駅までの約50分間、束の間の男性専用車両を楽しんだ。
出発前、たまたま三ノ輪橋駅に立ち寄ったという80代の女性は「男性専用車両という試みは初めて知った。空いてる時間ですし、都電だったらいいんじゃないですか。確かに女性専用車両があって男性専用がないのは不思議。面白い試みだと思う」と話した。この日実際に乗車した20代男性は「素晴らしい活動。朝の満員電車ではどうしても人と体が密着して、意図せず痴漢扱いされてしまうリスクがあり、男性としては安心して乗れない。女性専用車両と同じように広まっていけばお互いにとっていいと思う」と語った。中には考えに賛同し、乗車できないことを承知でイベントに訪れた女性の姿もあった。
開催までには困難もあった。11月上旬に男性専用車両の試みがネットニュースになると、東京さくらトラムを運営する東京都交通局にはさまざまな意見が寄せられた。一時は企画が白紙となったが、主催者側が粘り強く交渉を続け、途中停車をしない貸し切り運送であること、車外に見える形でのラッピングをしないことを条件に実現にこぎ着けた。
イベントを主催した日本弱者男性センター代表の平田智剛さんは「女性専用車両は男性の性犯罪対策として設けられていますが、男性に対する女性の性犯罪もないわけではない。私自身、満員電車の中で女性に触られて怖い思いをした経験がありますが、周囲に助けを求めても信じてもらえない、むしろ自分が加害者にされかねないという冤罪(えんざい)の恐怖から声をあげられなかった過去がある。統計ではそういった声を上げられない男性の被害は見えてこない。今回、こういった場が実現したことで、男性への性被害を考えるきっかけとなれば。女性専用車両が必要なのと同じように、男性専用車両も必要なものではないでしょうか」と企画の意義を語った。
今回のイベント開催に向けて立ち上げたクラウドファンディングでは、目標金額の200%を超える10万円以上が集まった。日本弱者男性センターでは、今後も年2回、国際男性デーと6月第3日曜日の父の日に合わせて同様の取り組みを続けていく予定だという。