秋元皓貴「ONEは世界の強者が来る場所」 日本の団体との差を告白「全てのレベルが違う」

アジア最大の総合格闘技「ONEチャンピオンシップ」は19日、格闘技イベント「ONE 163」(ABEMAでPPV配信、シンガポール・インドアスタジアム)を行う。メインカードではバンタム級キックボクシング世界王者の秋元皓貴(Evolve MMA)が挑戦者のペッタノン・ペットファーガス(タイ)を迎えての初防衛戦を行う。試合直前の秋元に現在の心境と日本と世界の違いについて、盛り上がりを見せる現地で話を聞いた。

シンガポールで取材に応じた秋元皓貴【写真:ENCOUNT編集部】
シンガポールで取材に応じた秋元皓貴【写真:ENCOUNT編集部】

19日、初の防衛戦へ

 アジア最大の総合格闘技「ONEチャンピオンシップ」は19日、格闘技イベント「ONE 163」(ABEMAでPPV配信、シンガポール・インドアスタジアム)を行う。メインカードではバンタム級キックボクシング世界王者の秋元皓貴(Evolve MMA)が挑戦者のペッタノン・ペットファーガス(タイ)を迎えての初防衛戦を行う。試合直前の秋元に現在の心境と日本と世界の違いについて、盛り上がりを見せる現地で話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 3月に行われた【ONE・X】で日本人初となるONEの世界王座獲得。練習環境を日本からシンガポールに移して約4年がたつなか、初の防衛戦を迎える。

 これまで“天才”と呼ばれてきた。自分では「特別だとは思っていない。落ちこぼれだった」と話す秋元が一流の考え方を明かしてくれた。

 タイトルマッチと防衛戦での心境の違いは「特にはない」という秋元だが、王者になったことで心境の変化は大いにあったようだ。

「意識が高まったというか、今までもトレーニングは真剣に取り組んではいたんですけれど、それ以上に真摯(しんし)に向き合うようになったというか、さらに自分に厳しくなった部分はあるかなとはい思います。自己管理の部分や1回のトレーニングをいかに効率よくやるかとか、集中してやるかっていうところが今まで以上に意識しますね」

 ONE参戦後5勝しているが、全て判定決着だ。この防衛戦を機に「プロ」として見せる部分についても心境を明かした。

「見せる部分で言うと、僕はそんなに長けていないとは思う。ONEに来てからはKO勝ちもないですし、SNSを頑張る気はこれからもないんですけれど、これからはKOでも見せていければと思います」

 ONEを元々知らなかったという秋元。2019年の参戦から試合を経験していくにつれて、世界レベルであることを感じていったという。

「自分が今対戦してる相手もそうですし、これから対戦していくであろう相手っていうのは、どこかしらの世界チャンピオンになってONEに来るとか、たくさんの世界タイトルを取った選手が来る。ここはそういう場所。僕みたいなONEで初のキックボクシング世界王者になったという人はなかなかいないんじゃないかな」

 日本を飛び出して拠点の変更、環境の変化は秋元を大きく変えた。

「日本でトレーニングしていたときは練習のパートナーがいなかったりとか結構1人でトレーニングしてる時期も多かった。こっちに来てムエタイのチャンピオンだったり、MMA王者もいてそういった選手から刺激を受ける。お互いに高め合ったりとか、情報を交換したりというのは、かなり変わったと思います」

フェイスオフに登場した秋元皓貴(左)【写真:ENCOUNT編集部】
フェイスオフに登場した秋元皓貴(左)【写真:ENCOUNT編集部】

天心―武尊は「純粋な格闘技として成立しているのか?」

 現在の日本の格闘技界では“世界”を口にするファイターが増加。海外武者修行をする選手もいるほどだ。この流れを「すごく良いこと」とうなずく。

「日本で世界王者って名乗っても本当の意味での世界王者ではないですし。でもみんなが目指すところは本当の世界王者になりたいっていうところだと思うので、日本で王者になって世界を目指すのはいいことだと思いますね」

 それでも同団体のチャトリ・シットヨートンCEOに言わせれば「ONE」レベルに適応できるファイターは99%日本の団体にはいないという。これについては秋元も同意見だった。

「いないと思います。実際、僕の場合だとキックとムエタイの話になるんですけれど、ストライキングだけを見ていてONEでできる選手っていないんじゃないかなと思いますね。技術的な部分も全然違いますし、フィジカルもメンタルも全てのレベルが違うと思います」

 何が差を生んでいるのか。秋元が分析する。

「日本にいると、どうしてもその日本の練習スタイルみたいなものになる。特に今で言うと、タイの流れを持ってきている人が多いと思うんですねタイ人トレーナーを呼ぶという。もちろんそれも良いんです。でも10代後半、20代から始めた選手がタイ人トレーナーが幼少期からやっていたことを今から始めて勝てるのかって話なんですよね」

 さらに「もちろんそのスタイルを日本人も小さいころからやればそれなりには強くなると思うんですけれど、その先の壁を超えるにはどうすればいいのかというとさらに何かを変えなきゃいけないんですよね」と熱くなった。

 2021年から22年、日本のキックは大きな盛り上がりを見せた。世界で戦っている秋元からはどう見えていたのだろうか。「エンターテインメントとしてはすごく良い」と話す意味を明かした。

「『THE MATCH 2022』とかやっていましたけれど、那須川天心選手と武尊選手が2人でやりあって。元々2人の体重差って5キロくらいあるのに、僕からしたらなんかよく分からないなって。格闘技って僕からしたらルール、階級があってやるものだと思うので、純粋な格闘技として成立しているのかどうかはよく分からないなと」

 今回の試合のテーマは完封。「相手に何もさせずに勝つこと」。秋元の頭の中には常にただのKOでは強さの指標にならないという掟ともいえる考えがあった。

「どうしてもKOというのが、格闘技の醍醐(だいご)味になってくる。盛り上がるとは思うんですけれど“逆転KO”とかは自分は求めていないです。自分の方が弱くても、1発だけ当てれば勝てるとかいう部分がKOにはある。自分は技術、スピード、タイミング全てで相手を上回って、そのうえでKOしたいなと思いますね」

 まさに本流の思考だ。どの発言にも自信がみなぎっていた。初防衛戦、ベルトを守るだけでなく、文字通りの完封をできるのか、期待が高まる。

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