【ONE】岡見勇信、自分を追い込み苦しんだ過去 後輩育成で気付いた「試合を楽しむ」の意味

アジア最大の総合格闘技「ONEチャンピオンシップ」は19日、格闘技イベント「ONE 163」(ABEMAでPPV配信、シンガポール・インドアスタジアム)を行う。第8試合のミドル級マッチではアウンラ・ンサン(ミャンマー)と岡見勇信(EXFIGHT)が戦う。現地で岡見に話を聞いた。

フェイスオフでキレキレのボディーを披露した岡見勇信【写真:ENCOUNT編集部】
フェイスオフでキレキレのボディーを披露した岡見勇信【写真:ENCOUNT編集部】

岡見はウェルター級からミドル級に戻す

 アジア最大の総合格闘技「ONEチャンピオンシップ」は19日、格闘技イベント「ONE 163」(ABEMAでPPV配信、シンガポール・インドアスタジアム)を行う。第8試合のミドル級マッチではアウンラ・ンサン(ミャンマー)と岡見勇信(EXFIGHT)が戦う。現地で岡見に話を聞いた。 (取材・文=島田将斗)

 岡見は元UFC世界ミドル級3位という肩書きを持ち、プロMMA戦績は50戦36勝14敗というキャリアの持ち主だ。“ミャンマーの英雄”ンサン戦を前に3年という時間について振り返る。

 前戦は2019年10月のアギラン・ターニ戦。約3年ぶりにONEのサークルに帰ってくる。今回は体重もウェルター級から自身の原点であるミドル級へ。計量前のタイミングでのインタビュー実施となったが体調が良いことが穏やかな表情と仕上がった体から感じ取ることができた。

 現在の心境を「試合勘に関しては、やっぱり戦ってみないと分からないっていうのが正直なところ。この3年の試合してない間もね、仲間の試合であったりとか。自分自身も緊張感を保って、練習をハードに取り組んでいたりとか試行錯誤しながら、自分のなんか、3年という月日というものをブランクというよりは、前に進めていけるように取り組んできましたね」と語る。

 さらに「もちろん緊張もある。ファイターとしてこの3年間、いろいろな取り組みをさせていただいたんですけれど、ファイターとしては時間が止まっていたのでそこをまた動かすことができるという安堵(あんど)感と試合の結果と内容への怖さはある。でも。今回の自分ならまた違う形でいろいろなものを見せれるんじゃないかとか。やっぱりいろんな感情が混ざってはいます」としみじみ。

 ミドル級に戻しての試合、どのように体を作ってきたのか。岡見はミドル級に復帰した意味を「自分の強いところを出す」ことだと明かした。

「(ウェルター級のころは)やっぱり無理な減量をね。やっていた部分がある。そういった意味ではトレーニングを変えたりはしました。ミドル級、ライトヘビー級、ヘビー級の選手とかと練習をしたり。そこで体も大きくなっていきました。無理に体重は増やそうとはしてないんです」

キャリア20年で初めての感情が岡見に生まれる

 カード発表会見では3年の間に考えていたことをあえて明言をしていなかった。試合直前というタイミングで岡見はゆっくりと記憶をたどっていった。

「格闘家というものの本質を考えたんです。どうしても勝たなきゃいけないっていうものはあるんですけれど、だからこそ結果が怖い。そういったことが自分を追いつめていたんです」

 岡見ほどのキャリアを重ねた選手でさえも自分の心と戦っていた。

「練習も常に自分を追い込んで追い込んで、もっとできるんじゃないかと。どんどん苦しい環境に追いやっていく。それを乗り越えた先に勝利という道が見えるんじゃないかと。常にそう思ってこの格闘技に取り組んでいたんです。そういった中で精神的に厳しい部分が出てきました」

 ンサンとの対戦だからこそ再びケージに上がる。岡見はカード決定後に何度も口にしてきた。この試合は自身にとって原点回帰であることも強調した。

「格闘技を純粋に楽しいと思って取り組んでいた頃っていうのを思い出そうっていうのが出発点。今までの自分の取り組みを否定するわけではないんですけれど、やっぱり楽しんでいるファイターというのは強いんですよね。俺は早く戦いたいんだと言うファイターって強いんですよ」

 岡見の表情が柔らかくなった。「3年空いて試合をするなら“楽しい”っていう気持ちを持って挑みたい。こういった気持ちが出てきたのって、キャリアで初めてなんですよ。試合は楽しむものじゃないだろってずっと思っていたのでね。そういった感情が出てきたことに『この気持ちは大事にしたいな』って自分のなかで思ったんですよね」。

 この試合が第二の岡見勇信なのか。そう問うと「ンサン戦しか見えてはいないんですけれど、まあ、20年以上やってきて、またこの3年間でいろいろなものを経験することで、そういった感情が出てきたということですね。そういった意味でも新しいことへのチャレンジではありますね」と白い歯を見せた。

 3年の間にはLDHが格闘家を育成するプロジェクト「格闘DREAMERS」などで後輩育成の役割を担ってきた。それもファイター・岡見の心を動かす経験だった。

「若い選手と触れ合う機会は増えました。一緒になって練習をしたり、指導するなかで彼らの頑張る姿を間近で見させてもらって、本当に恐怖に打ち勝ちにいく姿を見せてくれて、試合の結果関係なく、素晴らしいなとかっこいいなと。逆にそこを教えてもらったし、自分の若いころを思い出したり見つめ直すきっかけになりましたね」

「格闘人生全てかける」と話すこの試合。キャリアの中でどんな意味を持つ戦いになるのか。改めて口にする。

「3年空いた意味とか年齢などいろいろなものを加味しても、今までやってきたことの集大成。この先のことは何も考えてないですし、自分がどうなってるかも分からない。だからこそ20年やってきたものが19日には出ると思います」

 岡見にとっての原点回帰である今回の試合。格闘家人生20年の集大成はどのような結果をもたらすのか。楽しみだ。

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