KAIRIに最大の試練、2日連続で王座挑戦 新設IWGP王座に抱く思い「猪木さんのイメージが…」
元WWEスーパースターのKAIRIが日本復帰以来最大の試練に挑む。古巣スターダムにスポット参戦しているKAIRIは、11・19大阪エディオンアリーナ第1競技場で上谷沙弥のワンダー・オブ・スターダム王座(白いベルト)に挑戦。翌日の新日本プロレスとスターダム合同興行11・20有明アリーナでは、新設されたIWGP女子王座決定トーナメント決勝で、スターダムの岩谷麻優と初代王座を争うことになっている。いまから3年前、WWEのビッグイベント「TLC」でアスカとのカブキウォリアーズで堂々メインを張ったKAIRIだが、今回はアメリカでも体験しなかったタイトルマッチ2連戦。大阪と東京をまたにかける大勝負を前に、KAIRIはこの試練をどう考えているのだろうか。
2日連続のビッグマッチ「決まったときはさすがにえっ!?と」
元WWEスーパースターのKAIRIが日本復帰以来最大の試練に挑む。古巣スターダムにスポット参戦しているKAIRIは、11・19大阪エディオンアリーナ第1競技場で上谷沙弥のワンダー・オブ・スターダム王座(白いベルト)に挑戦。翌日の新日本プロレスとスターダム合同興行11・20有明アリーナでは、新設されたIWGP女子王座決定トーナメント決勝で、スターダムの岩谷麻優と初代王座を争うことになっている。いまから3年前、WWEのビッグイベント「TLC」でアスカとのカブキウォリアーズで堂々メインを張ったKAIRIだが、今回はアメリカでも体験しなかったタイトルマッチ2連戦。大阪と東京をまたにかける大勝負を前に、KAIRIはこの試練をどう考えているのだろうか。
「ビッグなタイトル戦を2日連続でやったことはないので、決まったときはさすがにえっ!?となりましたけど、これって逆にチャンスなんじゃないかなと切り替えてます。これくらい過酷な方が、まわりの人に納得してもらえるんじゃないかなって」
KAIRIはもともと、8・21名古屋で白いベルトに挑戦するはずだった。が、直前で新型コロナウイルス感染が発覚し無念の欠場。
「調子いい矢先にそうなってしまったので、悔しさと無念で正直メチャクチャ落ち込みました……」
回復後、すぐに名乗りを挙げることもできただろう。しかし、KAIRIはそうはしなかった。元王者だけに、やすやすと挑めるタイトルではないことは百も承知。白いベルトがほしいとチャンスを狙っている選手も多い。病み上がりで割り込むのは「筋が違う」と考えたのだ。
とはいえ、王者・上谷にもモヤモヤは残ったままだ。11・3広島で白川未奈に10度目の防衛を果たすと、相手がケガをしてしまったショックのなか、次期挑戦者にKAIRIを指名した。これにより、タイトルマッチが11・19大阪に決定。IWGP女子王座戦を含め、KAIRIの過酷な2連戦が決まったのである。
11月8日の会見で、KAIRIは「沙弥君、飛べるの?」と挑発した。白川戦でのフィニッシュを意味しているのは明らかだった。勝負を決めたフェニックススプラッシュは目測を誤り、白川の顔面へ。試合には勝った。が、それだけ挑戦者からの足攻めが王者にダメージを与えていたなによりの証拠でもあり、この勝ち方は決して王者の本意ではない。上谷もまた、精神的にかなり落ち込んだ。
それでも闘い続けなければならないのがプロレス。KAIRIもまた、試合中に顔面を大きく腫らしたことがある。それでも彼女は持ち前の突貫ファイトを変えることはなかった。KAIRIがWWEにインセインエルボーとして持ち込んだダイビングエルボードロップは、オーソドックスでありながらもほかとは異なるフォームで「世界一」の評価を得た。こちらも上谷のフェニックスやファイヤーバードスプラッシュと同タイプな技だけに、リスクの高さは理解している。しかも、白いベルトは宝城カイリ時代に8度防衛したこだわりのタイトル。初代王者・愛川ゆず季を引き継ぎ、赤いベルトとは異なる価値観を決定的にもたらしたのが、彼女なのだ。
だからこそ、今度の上谷戦は非常に重要な意味を持つ。当初、KAIRIは上谷に対し「ベルトが泣いてるよ」と言い放った。が、このコメントに違和感、活躍の場や時代との距離感を抱いたのも事実だ。上谷は昨年末、白いベルトに手が届いて以来、「全力のベルト」と称して必死に守り抜いている。だからこそ、KAIRIは上谷の活躍を見ていないのではとも感じたのだ。が、真相は、こちらも「飛べるの?」同様、KAIRIなりの挑発だった。「もっと反発してほしかった」のだが、王者が予想外に受け取ったため、挑戦者も内心困惑。そして今回あらためて挑発すると、上谷は反発した。よって試合は上谷のフェニックススプラッシュ、KAIRIのインセインエルボーの攻防が焦点になるだろう。“見せ場”を提示したのは元WWEスーパースターの面目躍如だ。
岩谷麻優との決戦に抱く思い
そして翌日には、新日本プロレス、IWGP実行委員会が認定するIWGP女子王座決定戦。トーナメントを勝ち上がったのは、KAIRIと岩谷麻優だった。岩谷は旗揚げメンバーの一期生で、「スターダムのアイコン」と呼ばれる団体を象徴するレスラーだ。KAIRIは三期生で岩谷の後輩にあたる。が、岩谷は宝城との初シングルで敗れたり、シングルリーグ戦へのエントリーも数年間見送られるほど、出遅れた存在だった。KAIRIもまた、当時の自身を「落ちこぼれ」と振り返る。が、ともに時間をかけて成長し、それぞれの場所で輝きを放っている。KAIRIはアメリカに闘いの場を求め、岩谷は日本でスターダムを守り抜いてきた。今回のトーナメントでは、ともに若手時代に歯が立たなかったアルファ・フィーメルから勝利しての決勝進出。KAIRIが旅立ってからの空白の5年半を確かめ合う闘いであると同時に、これはまた、IWGP女子という新たなる歴史のスタートでもある。
「IWGPといえば新日本さんの最高峰、アントニオ猪木さんのイメージがありますよね。そのイメージがあまりにも大きすぎて、女子のIWGPってどうなんだろうって不安はありますよね」
とはいえ、これもまた時代の流れなのだろう。新日本とスターダムの合同興行が実現し、IWGPを冠したタイトルが新設される。実際、女子プロレスの地位が向上していく流れをいち早くWWEで体感してきたのがKAIRIでもある。
WWEでは2016年の「レッスルマニア32」でディーバ王座を封印、新たにWWE女子王座が誕生した。この日から、ディーバという呼称は廃止され、女子選手も「スーパースター」で統一された。17年にWWE入りしたKAIRIはこの流れに乗ったのだ。18年10月には女子のみによるビッグイベント「WWEレボリューション」を開催。男子の添え物のように1試合か2試合しか組まれることのなかった女子の試合がメインを張ることも当たり前になり、その象徴がカブキウォリアーズの「TLC」メイン登場にあると言っていいだろう。
KAIRIは20年7月を最後にWWEを離れ日本に帰国すると、ブランクを経て今年3・26両国で古巣にカムバック。ここまでスターダムで6戦を消化した。特別参戦的な意味合いから、次の2試合はタイトル戦線への参入となる。アメリカでは女子選手のステータスアップを目の当たりにし、一端を担う当事者にもなった。そして現在、日本も同じような流れになっている。スターダムがブシロード傘下になってから女子の試合がドーム興行で披露されることはあった。そして今回、男女合同興行が開催されるばかりか、IWGP女子王座決定戦がメインとなる。そこに登場するのがKAIRIとは、まるで彼女が時代を引っ張ってきているようではないか。
「不思議ですよね、自分ではまったく意識してるわけではないんですけど」と苦笑し謙遜するKAIRI。「WWEにいくこと、麻優さんとIWGPの名のもとに闘うこと。将来こうなるよと昔の自分に言えたとしても、どちらもウソだあって言って信じないでしょうね(笑)」
白いベルトと初代IWGP女子王座の行方。ふたつのカギを握るのはKAIRIである。この2試合の結果が今後の女子プロレス、男子との関係性に影響を与えるのは間違いなさそうだ。