尚玄が明かす「義足のボクサー」舞台裏…過酷な10キロ減量、壮絶なボクシングシーン

撮影を振り返る尚玄【写真:山口比佐夫】
撮影を振り返る尚玄【写真:山口比佐夫】

カンヌ監督賞の巨匠とタッグ「監督は一切、台本を見せない」

――メンドーサ監督はリアリズムに定評がある作家。警察学校の生徒が恋人や乳児のために犯罪に手を染めてしまう「キナタイ マニラ・アンダーグラウンド」では第62回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞しています。舞台がフィリピンということもあり、ピッタリな監督ですね。脚本はどんな感じで進みましたか?

「監督自身と長年、一緒にやっている脚本家が手掛けました。僕も、舞台になるミンダナオ島や沖縄でのシナリオハンティングにも同行させてもらいました。沖縄に住んでいる土山くんにも一緒に会いに行きましたし、僕個人で彼の出身地の長崎のお母様にも話を聴きに行って物語に組み込んでいきました。基本的には彼の実話を元にしていますが、脚色している部分もあります。事実とフィクションは半分半分といった感じでしょうか」

――土山さんの出身は長崎ですが、劇中の主人公は尚玄さんの出身地、沖縄になっています。

「監督は、まず僕の今までの人生について訊ねてきました。『監督と俳優はお互いを信頼し合わないとうまくいかない。お互いに心を開こう』と言ってくれ、クランクインの半年前ぐらいからフィリピンの監督の家に泊めてもらって、一緒にご飯を食べたり、時間を共有してお互いを知る作業をしました。それが今回の映画ですごく重要だったと思いますし、僕が演じた“津山直生”というキャラクターに、僕自身のいろんな生い立ちやトラウマも織り込まれています」

――尚玄さんはいつもトレーニングされていますが、肉体改造もしたのでしょうか。

「僕はアクションの経験はあったんですけど、ボクシングは初めてだったので、1年ぐらい前から基礎練習を始めて、半年前から集中してボクサーのような生活をしてきましたね。2、3か月前は週に5、6回ペースでジムに行っていました。当然ですけど、酒はやめて、食事は炭水化物を抜いて高タンパクなものを取って、日々ボクシングの映像を見て研究しました」

――撮影は今年1月末から3月初旬までフィリピン、沖縄、福岡で行ったようですが、監督の演出はいかがでしたか?

「監督は一切、台本を俳優に見せないんです。何が起こるか、直前までわからないんです。だから、とにかく自分自身のキャラクターを掘り下げていく作業を徹底しました。義足も重要な要素なので、土山くんと同じ右膝下から義足の女性に会いに行って、話を聞かせてもらいました。例えば、普段どのタイミングで義足を外すのかとか、どういう時に痛みがあるとか、そういう部分は人によって個人差がありますし、いろんな引き出しを持っておいた方が監督の急な要求に応えられるかなって思って、リサーチはかなりしました」

□尚玄(しょうげん)1978年6月20日生まれ、沖縄出身。大学卒業後、バックパックで世界中を旅しながらヨーロッパでモデルとして活動。2004年に帰国、俳優としての活動を始める。05年、映画「ハブと拳骨」でデビュー。08年にNYで芝居を学ぶため渡米。「Street Fighter 暗殺拳」、TV版「デスノート」など、現在は日本と海外を行き来しながら邦画だけではなく、海外の作品にも多数出演している。映画「ココロ、オドル」「ファンシー」が現在公開中。

ヘアメイク:立野正、衣装協力:BACKLASH

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