【週末は女子プロレス♯75】「最初はお断りした」 ダンス→演劇→女子プロレス、川畑梨瑚が異色経歴を歩んだ理由

プロレスを描く舞台に出演し、アクトレスガールズでプロレスデビューを飾った川畑梨瑚。現在はフリーレスラーとして堀田祐美子のT-HEARTSに所属。11月18日には、新宿FACEにてT-HEARTS主催興行「川畑梨瑚デビュー4周年記念大会」が開催される。キレッキレのダンスで入場からファンを魅了する川畑。この記念大会を機に、さらなる飛躍に期待したいレスラーだ。

異色の経歴を歩む川畑梨瑚【写真:新井宏】
異色の経歴を歩む川畑梨瑚【写真:新井宏】

デビュー4周年記念大会から飛躍の年へ

 プロレスを描く舞台に出演し、アクトレスガールズでプロレスデビューを飾った川畑梨瑚。現在はフリーレスラーとして堀田祐美子のT-HEARTSに所属。11月18日には、新宿FACEにてT-HEARTS主催興行「川畑梨瑚デビュー4周年記念大会」が開催される。キレッキレのダンスで入場からファンを魅了する川畑。この記念大会を機に、さらなる飛躍に期待したいレスラーだ。

 パンキング、ワックという腕をムチのようにしならせる独特のダンステクニック。トレードマークでもあるダンスは幼少時から始め、高校でもダンス部に所属した。卒業後の進路を考えなければならなかった頃、ダンスの先輩から誘われ舞台に出演。これをきっかけに演劇の世界に入っていくこととなる。

 数本の舞台を経験したのち、「カウント2.9!」という作品にアイドル役での出演が決定した。ここで出会った林亜佑美を通じ、プロレスと女優の二足のわらじで活動するアクトレスガールズを知った。すると、そもそもプロレス自体ほとんど知らなかったにもかかわらず、アクトレスガールズから「プロレスもやってみないか」と声をかけられる。しなやかな身体の動きからセンスあり、と思われたのだろう。ところが……。

「最初はお断りしたんですよ。正直、プロレスって見たことなくて、レスラーでもテレビ(のバラエティー番組)に出ているような方くらいしか知らなかったですから。ただ、体験だけでもいいから一度来てみなよという話になったんですね。まあ、それくらいならいいかなと思って行ってみたんです。そうしたら練習が楽しくて、これもなにかのご縁かなと思い、挑戦してみることにしました」

 もともと身体を動かすことは大好きだった。そのため、最初のトレーニングには容易に入っていけたようだ。とはいえ、そこはプロの世界。しだいに練習は厳しさを増し、過酷な世界と痛感する。しかし、一度決めたら引き下がらない性格も幸いした。「この技をモノにする」というモチベーションも彼女のやる気を増進させた。

「デビュー戦でムーンサルトプレスを出す」

 これが川畑にとっての具体的な目標だった。ムーンサルトとは、見た目も美しく威力も大のフィニッシュ技だ。とはいえ、本人はまったくのビギナー。コーナーの上からバック宙で舞うこの技を見て、当然不安に駆られることになる。それでも、持ち前のチャレンジ精神でトライしようと決意。デビューに向けての体力づくりやグラウンドのレスリングに加え、“必殺技”の習得も練習メニューに加わった。

「お客さんがなにを、どんな試合を求めているのか」を考えながらリングに上がっているという川畑梨瑚(右)【写真:SEAdLINNNG提供】
「お客さんがなにを、どんな試合を求めているのか」を考えながらリングに上がっているという川畑梨瑚(右)【写真:SEAdLINNNG提供】

「生きるプロレスの教科書」堀田と行動を共にすることを決意

 そして迎えた2018年11・15後楽園でのデビュー戦。青野未来を相手に敗れたものの、ムーンサルトプレスは決めてみせた。デビュー戦の課題、目標のひとつは達成されたのだ。

「緊張で自分がコーナーに立つまで時間がかかってしまい、スリーカウントは取れませんでした」

 しかし、返されてしまったことがかえってムーンサルトへのこだわりを生んだと言えるだろう。初勝利は3戦目(松井珠紗&川畑組vs未依&谷もも組)で、ムーンサルトで決勝フォールを奪ってみせた。シングル初勝利もムーンサルト。19年9・23PURE-J名古屋で、AKARIから白星をゲットしたのだ。

 しかしながら、タッグでの初勝利から考えれば、シングル初勝利までにかなりの時間を要している。というのは、デビューから1か月で足を骨折。ケガが多く、なかなか軌道に乗れない日々が続いたのだ。たとえば、AWGシングル王座挑戦権をかけたトーナメントを制しながら、結局タイトルマッチは実現しなかった。ケガからカムバックも、20年3・22名古屋での復帰戦(関口翔&青野組vs林&川畑組)が期せずしてアクトレスガールズでのラストマッチになってしまった。

「退団も自分のケガがきっかけでした。自分のプロレスをもう一度見つめ直してみたい。そう思って退団することにしたんです」

 川畑は環境を変えるにあたり、アクトレスガールズでプレイングマネジャーを務めていた堀田に相談した。

「アクトレスを退団させていただこうと思っていますとお話をさせていただいたときに、堀田さんの方からT-HEARTSという会社を作ってやっていこうと思ってるから、もしもこの先が決まっていないのなら面倒を見るよと声をかけていただきました」

 これにより、川畑は堀田と行動を共にすることになる。クラッシュ・ギャルズや対抗戦時代の大ブームから冬の時代に至るまで、すべてを体感してきた堀田は女子プロ界のビッグレジェンド。彼女にとっては「生きるプロレスの教科書」だ。

「一度も引退されずに現役を続けられている。とても熱い方で、いまではないようなプロレスにとって大事なところを教えてくださります。まったくゼロからのスタートだったので、学ぶことが本当にたくさんありますね。教科書的な存在です」

 堀田の姿を通じ、堀田が体験してきた女子プロの歴史を学ぶ。そして、現在のプロレスに活かしていく。最近の川畑はSEAdLINNNG(シードリング)、Marvelous(マーベラス)、waveなどが主戦場だ。

「団体によってお客さんの色も違いますし、自分がレスラーとして求められるものも違うので、その団体のいいところを意識しながら、学ばせていただいています。会場の雰囲気によって足を運んでいただいたお客さんがなにを、どんな試合を求めているのか。そういうところを意識してリングに上がるよう心がけていますね」

「川畑梨瑚デビュー4周年記念大会」のポスター
「川畑梨瑚デビュー4周年記念大会」のポスター

12月29日にはDDTのビッグマッチに約1年ぶりの参戦

 そんな彼女が「デビュー4周年記念大会」(11・18新宿)を開催する。この大会は、師匠・堀田の提案によるものだ。本来ならば区切りのいい5周年の方がいいのかもしれない。が、師匠の親心ということか、周年記念を早い段階で経験させてあげたかったのだろう。また、前倒しは全日本女子プロレス出身者らしい考え方でもある。川畑にとって記念試合は始めてのことで、しかも2試合(第1試合&メインイベント)が組まれている。大会の主役だけに、どちらとも大きな意味合いを持つマッチメークだ。

「第1試合(川畑&Maria組vs梅咲遥&海樹リコ組)は私がマッチメークしました。女子プロを引き継ぎ、今後の女子プロを引っ張っていくのは自分たちの世代だと思っています。若手のタッグで、女子プロの未来を見せたい。梅咲がベルトを巻いたり、海樹もタイトルに挑戦したりしていますよね。自分も実力では変わらないと思うので、意地を見せたいです。メイン(松本浩代&川畑組vs橋本千紘&朱崇花組)は堀田さん(プロデュース)です。いまのトップレスラーと交わることで学んでほしい、自分もその位置に立つんだと感じてほしいと言われました」

 川畑にとって一大会2試合も初めての経験。しかもまったく異なるカラーで、両方とも主役にならなければ意味はないある意味、デビュー以来最大の試練でもある。また、ここを乗り越えてこそ、大会を企画しメインをマッチメークした堀田の期待に応えられるというものだ。

「どこまで自分がやれるかわからない。楽しみ半分、怖さ半分。両方の気持ちがありますね。この大会では、これまでの4年間(の集大成)を見せたいというのもあるんですけど、それ以上にこれからの姿を見てほしいと思っています。これから自分がどうしていきたいか、どういうプロレスラーになっていきたいか、試合を通じて見せられたらいいなと思います」

 大事なのは過去よりも今後。それを象徴するかのように、記念大会後も重要な闘いが彼女を待っている。マーベラスでは彩羽匠が返上したAAAWシングル王座をめぐるワンデートーナメントが12・4後楽園ホールで開催、川畑は第1試合で長与千種&川畑組vs堀田&Maria組という師弟対決が組まれており、シングルのベルトも狙っていくつもりだという。本来ならば、彩羽は11・18新宿で川畑とタッグを組む予定だった。が、負傷により欠場しベルトも空位に。それだけに、川畑が獲ればそれはそれでドラマチックではないか。

「ベルトがほしいです。まだ獲ったことがないですし、シードリングでのトーナメントでも獲れなかったので。また、マーベラスで組んでるMariaとのチームでもタッグのベルトを狙っていきたいと考えています」

 さらに、12月29日にはDDTのビッグマッチに約1年ぶりの参戦。川畑に用意されたのは、安納サオリと組んで“令和のAA砲”赤井沙希&荒井優希組と対戦するビッグカードだ。前回敗れた赤井へのリベンジマッチでもあり、“SKE48”との初対戦は、荒井への注目を自身に向ける絶好の機会にもなる。

 一度見たら忘れられないパンキングをトレードマークに5年目を迎える川畑梨瑚。ここまでが助走ならば、来年はステップの年になるだろう。今後の活躍に、期待大だ!

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