是枝裕和監督、日本映画界の労働環境改善に着手「変えていかないと世界的に取り残される」
映画監督の是枝裕和が10日、都内で行われたSmartHR主催「WORK DESIGN AWARD 2022」パーソン部門賞を受賞した。是枝監督は「日本版CNC設立を求める会」の設立を始めとした日本映画界の労働環境改善を求める活動が評価された。
「WORK DESIGN AWARD 2022」パーソン部門賞
映画監督の是枝裕和が10日、都内で行われたSmartHR主催「WORK DESIGN AWARD 2022」パーソン部門賞を受賞した。是枝監督は「日本版CNC設立を求める会」の設立を始めとした日本映画界の労働環境改善を求める活動が評価された。
CNCは「国立映画映像センター」の略称で、フランスの映画業界を幅広く、手厚く支援する組織。日本でも同様の支援組織を作ろうと是枝監督が「日本版CNC設立を求める会」を立ち上げた。日本版CNCでは、教育支援、労働環境保全、製作支援、流通支援の4つの柱の実現を目標にするという。
受賞した是枝監督は「今回評価していただいた取り組みはスタート時点に立ったばかりで、何も実績がありません。発信し続けてはいるんですけれど、具体的に変革につながった実績があるわけではありません。(受賞を)励みにして活動を続けていければと思っています」と喜びの声を上げた。
ハラスメント対策の支援やジェンダー不平等改善の取り組みについて是枝監督は「なかなか問題があるのは、みな理解しているものの、変えられずにここまで来てしまったという反省もありました。若い世代の監督や役者さんが少しでも良い環境で働けるようにそういう改革を少しずつでも変えていかないと世界的にも取り残されてしまう。もちろんハラスメントの現場の告発、被害者を救済していき、そういうものをどういう風に排除していくのかということを考える一方で、声を上げてくれている仲間が増えてきています。連帯していって内部から声を大きくしていく。情報を共有して先に進んでいこうと思っています」と意気込みを語っていた。
MCから「どのような経験がきっかけとなり、今回の取り組みをスタートしたのでしょうか」という質問が上がると「僕が現場に入った当初は、ハラスメントなんて言葉もなく、どなられたり蹴られたりするのは日常的にありました。でも違和感は相当持っていました。自分が上の立場になってそういうことのない現場を作っていこうは思っていました。いいものを作ろうとすると粘る。粘ることがよしとされていましたが、それがスタッフに負荷をかける。監督が役者の次に守られていますが、スタッフは片付けや翌日の準備をしなくてはならない。これを変えていかないと若いスタッフがこの仕事に就かなくなっている。人材が不足しているという声もここ数年増えてしまっている。そうすると、いろんな形で技術が途絶えてしまう。その危機感がきっかけの一つです」と答えていた。
今年で2回目開催となる「WORK DESIGN AWARD」は、日本の“働きやすさ”を前に進めることを目的に、働き方をアップデートした取り組みに焦点を当てている。グランプリには新渡戸文化学園が受賞した。