政府の税制調査会が将来的に、自動車の走行距離に応じた「走行距離税」を検討していることが波紋を広げている。電気自動車（EV）の普及で今後、大幅な減少が予想されるガソリン税の補填（ほてん）として考えているようだ。走れば走るほど税金が課されるシステムが導入されれば、日本の自動車関連税では初めてのこととなる。ネット上では不満の声が相次いでいるが、旧車オーナーはどう思っているのか。カーイベントで生の声を聞いた。（取材・文＝水沼一夫）

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴（JAF Mate Onlineへ）

「将来的に…」と条件がつくとはいえ、走行距離税の検討にネット上の反応は素早かった。自民党の三原じゅん子参議院議員が3日、「これは国民の理解を得られないだろう、、、！」とツイートすると、7万以上のいいねが集まるなど、自動車保有者からすさまじい反発が起こっている。

　政府の狙いは、EV時代の到来を見据え、ガソリン税に代わる課税先を見つけることだ。日本は国際社会の動きに合わせて、2035年には国内販売の新車をすべてEVにする方針だ。とはいえ、電源インフラの整備や電力不足など、課題が山積しており、EVの数をさらに増やしていかなければならない状況での「走行距離税」検討には、普及に冷や水を浴びせているとの指摘もある。

　旧車イベントでも走行距離税の話題でもちきりだった。税に敏感なのは、旧車オーナーも同じ。ほとんどのオーナーは長年、愛車を大切にしながら、自動車税と自動車重量税の重課にも耐えている。逆にEVは購入や維持の点で、数々の優遇措置があり、対照的だ。

　このタイミングでの「走行距離税」検討を、どう捉えているのか。

　70代の旧車オーナーは、「財政を考えると必要なんでしょうね。EVはガソリンを使わない。仕方ないんじゃないか。昔、民主党が高速道路はただになりますと言っていたじゃない。ありえないと思っていた。結局、実現しないじゃない。その代わりにどこかから税収持ってくるというなら分かるけど、それと同じだよね」と理解を示した。

　道路の維持や補修にばく大な経費がかかる。そのための安定した財源を持つ必要性を訴えた。

「地方の人は大変。でも、やっぱりどこかから徴収しなくちゃいけない。あとは高速料金を上げるとかしかない」と話した。

　一方、スカイラインGT-Rを保有する別の70代オーナーは「あれは気分悪いね。誰が持ち出したんだろう。なんでも車から取ろう、取ろうということが見え見えであまりにもひどすぎる。古い車だって13年以上は値上げ。おかしいよ」と怒りをにじませた。

　ターゲットはEVだけと思われるが、人ごととは捉えていない。

「納得できない。車から取りましょうという態度が気に入らない。そうじゃなくても、みんな自動車税、重量税…いっぱい払っているじゃない。ガソリン税はないからそれは確かにEVのメリットだったかもしれないけど、汚いね。そういうやり方はないでしょ。距離を走る人はかわいそうだよね。そういう税金の取り方はおかしい」

　現行の自動車税の使い道にも疑問を呈する。

「車って、税金の使い方がおかしいんだよね。自動車税がなぜ一般財源に入っている？　それだって疑問がありながらもとに戻せないでしょ。お金が別のほうにいっちゃっている。ずっと車だけがいじめられているよね」と、道路のためだけに使われない現状に異論を唱えた。

　また、40代の旧車オーナーは「せっかく安くするためにEVを買って、それで税金が別に取られようとしているなら、EVに乗っている人は普通に怒るでしょうね」と反応。ガソリン代が高騰する中、節約や将来を見据えてEVを購入したドライバーの胸中を察した。

　そして、走行距離税に代わる税収案については、思案の末、「結局、所有している人が多くないと税金として意味がない。となると、コンパクトカーと軽自動車からうまく取るしかない。いろいろ優遇されているから…」と語った。