「これ僕の家です」虚偽のネット広告なぜ掲載? 専門家は「全ての関係者に責任」と指摘

個人の自宅の写真がネット広告に勝手に使用されていた問題で、広告を発注したタウンライフ株式会社が謝罪した。同社は、虚偽広告を行ったのは広告代理店から再委託された広告運用会社と断定。広告代理店に対して、「厳正指導を行うとともに、弊社内においても広告内容のチェック体制をより一層厳格化していく方針」と再発防止策を掲げた。いったい、なぜこのようなことが起きたのか。ネット広告の専門家に問題点と背景を聞いた。

関係者相関図(タウンライフ社が公式サイトで発表したものを参考に作成)【写真:ENCOUNT編集部】
関係者相関図(タウンライフ社が公式サイトで発表したものを参考に作成)【写真:ENCOUNT編集部】

依頼主から代理店に委託→広告運用会社に再委託 委託構造に問題

 個人の自宅の写真がネット広告に勝手に使用されていた問題で、広告を発注したタウンライフ株式会社が謝罪した。同社は、虚偽広告を行ったのは広告代理店から再委託された広告運用会社と断定。広告代理店に対して、「厳正指導を行うとともに、弊社内においても広告内容のチェック体制をより一層厳格化していく方針」と再発防止策を掲げた。いったい、なぜこのようなことが起きたのか。ネット広告の専門家に問題点と背景を聞いた。

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「これ僕の家です」「勝手に広告にされては困ります」。SNS上に困惑の声が上がったのは、10月11日だった。

 ガレージ付きの戸建て住宅の写真に「庭付き4LDK建てちゃった」「このクオリティで月5万円台は最高」のキャッチコピーが踊るネット広告は、建物の持ち主の許諾なしに写真が写真販売サイト「スナップマート」に出品されていた。それだけでなく、スナップマートから写真を購入した広告運用会社が、虚偽の広告を作成していたものだった。

 自宅の所有者は取材に「人の家をあたかも自分が建てたかのような口ぶりで広告とし、記載内容も全くのでたらめ。怒りを覚えました」と話し、身に覚えのない広告利用に怒りをあらわにした。自宅という最もプライベートな情報が勝手に売買されていることは、大きな衝撃を与えた。ガレージの車のナンバーも見える状態だった。

 スナップマート社は写真の出品者、購入者双方に規約違反があったとし、謝罪した。また、タウンライフ社は「本件広告は、当社から委託を受けた広告代理店が、さらに広告運用会社に再委託し、作成したものでした。弊社は本件広告の内容(写真及び文言含む)について具体的な指示をしておらず、本件広告の内容は広告運用会社の判断で作成されたものでした」と説明。「また、誤解を招きかねない表現がありましたことも深くお詫び申し上げます」とコメントした。

 ネット広告に詳しい株式会社Skyfallの池田貴郎さんは、「広告主(タウンライフ社)と代理店の連携ができていなかったことがうかがえる。また、フリー素材を使用しながら、広告にはサンプル・イメージ等の注釈が明記されていなかったことも問題点」と指摘する。

 広告主は、自社の広告が掲載される前に最終確認をするべきであり、最終確認していない状態で公開されていること自体がおかしいというわけだ。

 さらに、フリー素材を使用していた状態でも最終確認をしていれば、広告が自社のイメージ写真とは思えない内容であることにも気づくはずで、池田さんは「今回のケースは、広告に携わった全ての関係者に責任がある」と続けた。

 タウンライフ社は今回の広告内容について「具体的な指示をしていない」と主張。SNS展開も含めて、広告代理店以下に任せていたことを示唆している。広告主が広告を配信する本来の目的を見失い、広告代理店や広告運用会社の判断のみで広告が配信されているのであれば、大きな問題と池田さんは言う。

「広告主がKPI(サイトの訪問数/問い合わせ数/成約数等)を適切な数値で設定し、代理店に依頼できていないと、代理店がKPIを達成するためにクリック数を誘発する誇大広告を作る状況を生み出してしまう。広告主も代理店も、広告を配信する本来の目的を見失うことがなければ、虚偽広告や誇大広告が生まれる可能性は低くなる。依頼をする側もされる側も、マーケターとしての知見が重要になってくることがよく分かる事例」と結んだ。

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